【BMW R nine T スクランブラー 試乗】そのスタイル以上に惹かれる、空冷ボクサーツインの奥深さ…青木タカオ

モーターサイクル 新型車
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BMW R nine T スクランブラー
BMW R nine T スクランブラー 全 30 枚 拡大写真

長い歴史のなかで育まれ、綿々と受け継がれてきた技術が持つ魅力は、ともすれば最新鋭のそれに勝る輝きを放つのかもしれない。エンジニアたちが時間と手間をかけ蓄積されてきた技術はユーザーにとって優しく、飽きのこない、上質でしっかりとした機能を持っている。

『R nine Tスクランブラー』に乗っていると、そんなふうに思う。オーセンティックなスタイルで、味わい深いエンジン。きっと、永くつきあえる。

ベースモデルは2013年秋に発表された『R nine T』。搭載されるエンジンは1169ccの排気量を持つ空油冷フラットツインで、大きなピストンとフライホイールが回っているゆったりとしたフィーリングと、アクセルを大きく開けたときの元気溌剌さが気持ちいい。伝統的な水平対向ツインならではの穏やかさやテイスティなものを持ちながら、スロットルレスポンスは充分に鋭く、パワーも申し分ない。

アクラポヴィッチ製の2本出しアップマフラーが奏でる乾いた排気音は低回転域ではジェントルだが、引っ張り上げると低音の効いた迫力あるものへと変わっていく。ボリュームも大きく、このマフラーが新車から装着されているのは嬉しいかぎりだ。

足まわりは前後17インチのR nine Tに対し、スクランブラーはフロントを19インチ化。リアは17インチながらリム幅がスリムで、したがってタイヤも1サイズ細い。

フロントフォークはテレスコピック式で、倒立式46mmフォークのR nine Tに対して、スクランブラーは正立式43mm。街乗りやツーリングスピードでノンビリ走ってもしなやかに動き、乗り心地がいい。それでいて負荷をかけたときは奥でしっかり踏ん張る、バランスのとれた前後サスペンションだ。

キャスター角がスクランブラーでは寝かされ(R nine T 64.5度に対し61.5度)、ホイールベースやトレール量もそれに伴い増えている。しっとりとした安定志向のハンドリングで、狙ったラインを外さない。接地感もしっかりあってトラクション性が良く、どこからでもアクセルを開けていける扱いやすさも備わっている。

試しにクラッチを切ってスロットルを煽ってやると、車体を右側に傾ける挙動がハッキリと出て、これもまた楽しい。クランク軸が回転する反力によって生じるトルクリアクションは、縦置きクランクならではのもの。性能を追いかけるあまり味気ないものとなりがちな現代のモーターサイクルの中で、この強烈なクセはなんと愛しいものか。

ノンビリ流しても、かっ飛ばしても、どんなペースで走っても楽しい。アップタイプマフラーなどスクランブラー仕立ての装備やスタイルももちろん魅力だが、このボクサーツインの心臓部こそ最大の魅力だと、時間をかけて乗り込むほどに気付かされた。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のバイクカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説。現在、多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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