【2017年展望】後世に残る転換点…知能化と電動化の潮流が加速

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米大統領選に勝利したトランプ氏はTPP離脱を表明。 (c) Getty Images
米大統領選に勝利したトランプ氏はTPP離脱を表明。 (c) Getty Images 全 5 枚 拡大写真

世界の自動車産業の2017年は、後世に大きな転換点だったと振り返られることになろう。テクノロジーでは、自動運転やコネクテッドといった「知能化」、そして環境規制の強化もにらんだ「電動化」という大きな流れが加速する。日本では三菱自動車工業の日産自動車への傘下入り、業務提携の検討を進めるトヨタ自動車とスズキといった新たな「括り」での協業・協調も動き出す。

グローバル市場は16年に続いて順風に

まず、グローバルな新車需要---。これは17年も順風が期待できる。最大市場の中国の16年は、前年を12%程度上回る2700万台半ばとなった模様だ。15年10月に導入した排気量1.6リットル以下の小型車に対する取得税減税が需要喚起につながった。この減税は16年末で終了予定だったが、減税幅を小さくして17年も継続されることが年末に決まり、懸念された最大市場の急ブレーキは回避できる見通しになった。

米国の16年は過去最高だった15年の1747万台に数万台及ばなかった模様。それでも2番目の規模であり、17年も1700万台以上の水準が続くと見込まれている。トランプ大統領による新政権の経済対策も新車需要への波及材料と期待されている。一方、国別では3番目のマーケットである日本の16年は、前年から1%程度少ない490万台後半と、5年ぶりに500万台の大台を割り込んだ模様。

ただ、16年度で終了予定だったエコカー減税が、対象を絞りながらも17年度から2年間の延長が決まった。14年4月の消費税引き上げ後に沈み続けた市場は16年末あたりから底打ちの兆しも出ており、「魅力的な商品や新技術に、お客様が反応してくれる状況になっている」(西川廣人日本自動車工業会会長)と、ようやく手応えが戻ってきた。また、欧州(主要18か国)は16年に6%程度の成長を確保しており、回復傾向を強めている。
グーグルが自社開発した自動運転車のプロトタイプ
◆自動運転では「レベル3」技術が初登場へ

テクノロジーでは、日産の「プロパイロット」などによって16年に注目度が一気に高まった自動運転が、引き続き異業種間の提携拡大などにより、熱を帯びていく。現状の実用化(市販車搭載)では、アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作を同時に複数行う「レベル2」が、内外のメーカーを問わず最も進んだ技術となっている。

17年は、基本的に車両側の責任で操作を行い、システムの要請に応じてドライバーが操作するという「レベル3」のクルマが初めて登場する。独アウディが表明しているもので、作動範囲は高速道路で60km/h以下という条件付きだが、今のところレベル3では先行する見込みだ。日本メーカーでは17年に、富士重工業やホンダが、それぞれの「レベル2」の安全運転支援システムに、渋滞時にも車線を維持しながら前の車を追従するアダプティブ・クルーズコントロールの機能を追加する計画だ。両社のシステムにはすでに、一定速度以上で車線維持と前車を追従走行する機能はあるが、停止状態(0km/h)から作動するようにする。

ホンダが16年末に、完全自動運転の共同研究で基本合意した米ウェイモ(同年12月にグーグルから分離独立)の動向も世界の自動車業界が注視する。かねて17年には「レベル4」の完全自動運転車を実用化すると宣言してきたからだ。限定したエリア内での移動サービスなど、ハードルを下げた状態での完全自動運転車であれば、走り始めるのは可能だろう。
日産がアフターセールス事業の新戦略を発表 《出典 日産自動車》
◆トヨタと日産が「つながるクルマ」を本格展開

知能化ではコネクテッドカー(つながるクルマ)の展開も始まる。トヨタはこれまでレクサス車などに搭載してきた独自の車載通信機「DCM(データ・コミュニケーション・モジュール)」の標準搭載をテコに、17年からコネクテッドサービスを本格展開する。事故時の通報などに加え、車両整備の推奨告知、さらにライドシェアやカーシェア事業者向けの金融・決済など新たなサービスを順次、創出していく。

トヨタは20年までに日米で販売するほぼすべての乗用車にDCMを標準搭載する方針で、つながるクルマを一気に増やしていく構えだ。日産も17年に独自の車載通信機を導入し、コネクテッドサービスを本格化させる。まず、日本とインドで新車のオプションサービスとして導入し、将来は既販の日産車もサービスの対象としていく方針だ。日本では17年が「コネクテッド元年」という状況になる。

電動化を後押しする米国の燃費基準と「ZEV」規制の強化

パワーソースの「電動化」も加速していく。米国ではメーカーごとの燃費基準である「CAFE(企業平均燃費)」が17年から25年にかけて段階的に強化されていく。またカリフォルニア州などで実施されている「ZEV(ゼロエミッション車)」規制も18年モデルからハードルが上がる。これまでZEVにカウントされていたハイブリッド車(HV)が除外されるので、自ずと電気自動車(EV)やプラグインHV(PHV)さらに燃料電池車(FCV)のウェートが高まっていく。その点でも17年はターニングポイントなのだ。

日本メーカーの相関関係も、三菱自が日産傘下で再建を目指すなど大きく変わる。トヨタの周囲には、富士重工業(スバル)、マツダに加え、軽自動車事業での最大のライバルであるスズキも提携を探るため集まった。豊田章男社長が進めたい「同じ志の仲間づくり」がどう進むか注目される。また、富士重工業は前身の中島飛行機(当初は飛行機研究所)が設立されて100周年の節目に当たる17年の4月に、社名を「株式会社SUBARU」に変更する。これで日本の乗用車メーカー全社のブランド名と社名が一致する。
三菱自動車の益子修会長兼社長(右)と日産自動車のカルロス・ゴーン社長

《池原照雄》

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