【オートモーティブワールド2017】自動運転、モラルがどこまで介在するかバックキャスティング

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ホンダの自動運転コンセプトNeuV
ホンダの自動運転コンセプトNeuV 全 3 枚 拡大写真

知能化技術を研究・開発する新拠点「HondaイノベーションラボTokyo」を東京・赤坂に開設するホンダ。その本田技術研究所の脇谷勉上席研究員が、V2Xから自動運転、その先のリスクやモラルについて、「オートモーティブワールド2017」特別講演の中で語った。

脇谷研究員は冒頭、「クルマにカメラが載ることであらゆるところにセンシングマシンとして活かされる」というテーマについて、家電のセンシング化を例にあげて伝えた。

「家電にもいろいろなセンサーやカメラといった、その状態をセンシングするデバイスが付帯してきた。こうした製品をWi-Fiなどでつないでデータを蓄積していくという時代になった。クルマにも同じ流れがきている」

センシングの“深度”もすすむ。交差点でカメラがとらえる映像の分析精度も上がっていると脇谷研究員は続けた。

「たとえば交差点の例。AIとIoTが組むことで、蓄積データから通行人のトラッキンデータを抽出できるようになった。最近では、たとえば「外国籍」「女性」といったソートをかけて抽出できる。このように、特定のターゲットだけを追いかけることができる時代にきている」

こうしたハードウェア、ソフトウェアが刻々と進化するなかで、「人の価値観」も変わってきた。「価値観そのものが変わってきている。暮らしのなかの価値も変わってきている」と同氏。この変化にも注目すべきと伝えていた。

「たとえばマイカーで通勤し、会社で仕事中は、マイカーがタクシーやウーバーなど副業する。そしてマイカーで仕事場から帰るときには、朝止めたパーキングに止まっている。そんなシーンが近くまできている」

「愛車を共同所有する時代もくる。愛着のあるクルマをシェアリングするという価値観の変革もある。ジェネレーションX(米国1960~1970年代生まれ)やY(同1980~1990年代生まれ)などはクルマに愛着はあるけど、共同所有することで愛を深めるという動きもある。こうした変化を深く追求して価値を見出していくのがポイント」

◆バイクとあやわ衝突…クルマがブレーキ

また、脇谷研究員は、ホンダの自動運転に向けた取り組みを、90年代からさかのぼって伝え、知能化の手前、認知・判断の例をあげた。

「1991年、複雑な状況を判断し、クルマの車線変更などを自分で変更できるようにし、追従走行も可能にした。2000年には、実験用ヘリコプターで、教科学習、自立飛行といったラーニングを重ねてきた」

「こうした取り組みからV2X(車車間・路車間通信)へとつながっていく。相互のコネクティングでクルマと人、クルマとバイクといったシーンで衝突しない仕組みができあがっていく。ぶつからない、だけじゃない。たとえば、バイクとクルマが出会い頭に衝突するようなシーンでは、バイクにブレーキをかけないというところがポイント。急ブレーキでも耐えられるクルマ側にブレーキをかけるようにするといった動きもつくっている」

◆リスクやモラル、バックキャストを仕込みながら

そして自動運転実現へ向け、直面する課題やビジョンについて、脇谷研究員はこう伝え、カンファレンスをクローズした。

「レベル4を超えた自動運転が実現すると、クルマのサイズも変わってくる。まったく運転しないということになれば、ハンドルやインパネなどもいらない。エンジン回転数などの表示もなくなる」

「たとえば、自動運転で走っていると、外部からのハッキングによって、セーフティ以外の新たなリスクも生まれてくる。ハッキングによって予期せぬ動きを起こす怖さがある。自動運転がハッキングされたとき、どちらへ進むか、自転車に衝突するか、人をはねてしまうか、こうした判断にまでいたると、クルマがモラルにまで介在する自動運転になるけど、それも怖い」

「自動運転の時代は、セーフティや外観はもちろん、リスクのヘッジや、モラルの考え方も求められる。こうした新たな要求について、しっかりと対応していくことが大きなポイントとなるだろう。われわれは、技術のバックキャストを仕込みながら、これから何ができるかを考えていく」

《レスポンス編集部》

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