【ボルボ V40 D4 R-デザイン 試乗】ライバル不在のチューンド・ディーゼルスポーツ…井元康一郎

試乗記 輸入車
ボルボ V40 D4 R-DESIGN ポールスターエディション
ボルボ V40 D4 R-DESIGN ポールスターエディション 全 30 枚 拡大写真

スウェーデンの自動車メーカー、ボルボカーズのプレミアムCセグメントコンパクト『V40』のスポーツバージョン「R-DESIGN」(R-デザイン)にターボディーゼル版が登場した。常時販売モデルではなく、150台限定であるという。その「V40 D4 R-DESIGN ポールスターエディション」で東京・芝公園と茨城の筑波山の間をショートドライブしてみる機会があったのでリポートする。

◆「ポールスターエディション」であるということ

R-DESIGNはボルボのラインナップの中で、高性能モデル作りを手がけるファクトリー「ポールスター(北極星の意)」の手になるウルトラハイパフォーマンスのポールスターに次ぐスポーツラインだ。が、V40 D4 R-DESIGN ポールスターエディションには他のR-DESIGNと異なる特徴がある。それは、ポールスターのパーツが装着されていること。

メニューはエンジンおよび変速機を制御するECU、低抵抗型のマフラー&吸気フィルター、ダウンフォース重視型のリアディフューザー。ポールスターはシャシー部品や空力部品など幅広くリリースし、また2リットルガソリンターボで367psを発生させるコンプリートエンジンなども製作している。V40 D4 R-DESIGN ポールスターエディションはその一部を“味見”できる仕様なのだ。

筆者はたまたま年末年始に、同じ2リットルターボディーゼル+8速ATの『V40 D4 クロスカントリー』で東京~鹿児島間を3600kmあまりツーリングしており、パワートレインについてはノーマルと対比して体感することができた。

◆スポーティフィール抜群のパワートレーン

走り始めてまず感じたのは「クルマの転がりが軽い!!」ということだった。スロットルをちょい踏みするだけで、クルマが0km/hから何のもたつきもなく発進し、スーッと直線的に気持ちよく加速した。高速道路やワインディングロードでのスロットルレスポンスやコントロール性も抜群に良く、2リットル級ディーゼルのリファレンスモデルといえるBMW『320d M Sport』と比べてもそん色ないという印象であった。

これはオプション追加が可能なポールスターECUへのアップデートによって、エンジンパフォーマンスがノーマルの190ps/400Nm(40.8kgm)から200ps/440Nm(44.9kgm)に引き上げられたことと、8速ATの制御が変更されていることによるものであろう。エンジンについては数値面の違いがそれほど大きくないため、実際に乗ってもそれほど顕著に体感できないのではないかと思ったが、実際に乗ってみるとスロットルを踏み込んだときのターボ過給のかかりがノーマルに対して相当に素早い印象で、終始気持ちの良い加速感を味わうことができた。

エンジンパフォーマンスの向上以上に恩恵が大きく感じられたのは8速ATの制御変更だった。冬季に路面が完全凍結するスカンジナビア生まれということもあってか、ノーマルではとくに1~3速についてはATのロックアップが機敏でなく、スロットルを踏み込んでもトルクコンバーターのすべりでトルク変動を吸収するような味付けがなされていた。それに対して今回のモデルは素早くトルコンを直結状態に持っていく制御となっていて、変速フィールは機械式のDCT(デュアルクラッチ自動変速機)のように節度を感じさせるものだった。また、4速以降の変速のタイムラグもノーマルより小さく、スポーティフィールは抜群であった。

◆ハイライトはハンドリング

ハンドリングはきわめて良く、このモデルのハイライトと言っていい部分であった。今回は250km程度のショートドライブで、パフォーマンスの見極めは限定的であったが、筑波山界隈を走ったときの印象ではエクセレントと呼べる水準にあった。操縦性は2015年夏に3500kmほどツーリングしてみた兄貴分の『V60 D4 R-DESIGN』とほぼ同じ性格で、コーナリングでフロントを素直に沈み込ませ、かつクルマがどのくらいロールしているかということを体にピタリと伝えてきた。

このシャシーセッティングとミシュランのツーリングタイヤ「パイロットスポーツ3」の合わせ技によって、速く走っても遅く走ってもスキーでゲレンデを自在に滑走するような爽快感があった。また、ワインディングロードで運転を同行者にチェンジして助手席に座ってみたが、助手席でもクルマが能力のどのくらいを使って走っているかが運転席と同じようにわかるため、緊張感はゼロ同然であった。

高速道路クルーズは、ハードサスペンションであるにも関わらず快適。路面の荒れやうねり、道路のジョイント部の通過などの衝撃・振動吸収は、前述の上位モデルV60のR-DESIGNが若干固かったのに比べてむしろ優れているくらいで、固いが上質という見本のような味付けであった。

◆ケチのつけようがないプレミアムディーゼルスポーツ

250km程度の試乗ではわからないこともあるであろうし、何をもって良いクルマとするかという価値観も人それぞれだが、個人的にはV40 D4 R-DESIGN ポールスターエディションはケチをつけたくなるようなところが見当たらない、ちょっとびっくりするような出来という印象であった。ネガティブ要素を挙げるとすれば、広いクルマが欲しければ上位クラスを買えというプレミアムセグメントの常として、室内や荷室がノンプレミアムに比べると狭いことと、サスペンションの当たりの柔らかさでコンフォート系のクルマに劣ることくらいか。

プレミアムCセグメントのディーゼルスポーツという性格を考えると日本市場でのライバルはきわめて少なく、BMWのCセグメント『118d M Sport』くらいしかない。こちらはエンジン出力が150psと低い一方、Cセグメントとしては珍しく後輪駆動であるという独自性を持ち、価格も安いといったアドバンテージがある。国産勢ではディーゼルではないが、トヨタ自動車がリリースしているハイブリッドカーのプレミアムCセグメントレクサス『CT200h F SPORT』がモデルの性格づけ、価格の両面でぶつかるだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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