【東京オートサロン2017】総括…多様化の進んだ価値観を反映したイベント

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東京オートサロン2017
東京オートサロン2017 全 7 枚 拡大写真

1月13~15日に開催された東京オートサロン2017。会期中の入場者数は32万4400人にのぼり、過去最高を記録した前回をわずかに0.4%だけ下回る結果となった。しかし13、14日の入場者数は前回を上回るペースで推移していたことから、15日も全国的な荒天さえなければ、過去最高数を更新していたのではないかと思われる。

会期中、会場となった幕張メッセは大賑わいを見せ、とくにプレスデーを兼ねる初日の人出は、たしかに例年以上と思わせるに充分なものだった。会場を見渡せばカップルや家族連れも多く、また比較的高い年齢層の来場者もけして少なくない頻度で見かけるなど、幅広い層が楽しめるイベントとして定着していることを実感させた。

出展車両のバラエティは豊富で、もはやあらゆるカテゴリーを網羅しているという印象。ベース車両に特有のトレンドを探すことは難しい。かつてはトヨタ『プリウス』をはじめとする「エコカー」をカスタマイズのベースに選ぶというのは珍しかった。しかし近年はハイブリッド車のラインナップも充実して市場に受け入れられているおかげか、プリウスもあたりまえのように出展されている。

前年に発売された注目車種をこぞってカスタマイズして並べるというのが、以前のオートサロンの風景だった。またスーパーGTが盛り上がればGTウイングを装着し、ドリフト競技に注目が集まるようになるとドリフト用エアロを思わせるパーツを纏うといったように、カスタマイズの方向性にある程度の流行を感じることができたものだ。

しかし近年はショップやブランドのイメージ、それにビジネス形態に合わせた車種選択をするようになり、それがベース車両のバラエティ増加を後押ししている。近年盛り上がっているように感じるのは、ミニバンやトヨタ『ハイエース』をはじめとした商用モデルをベースに、なにかを「運ぶ」ための機能性を付加する提案だ。

通常の乗用車ではローダウンではなく、しかし旧来のオフロード車のリフトアップカスタムとも異なった提案が増えている。これは世界的なSUVブームを背景に、見た目に「かっこいい」と感じる基準が多様化し、昔ながらの「より低く、長く」という方向だけではなくなっている、ということを理解させるものだ。


また、女性の視点や感覚でドレスアップを考えた提案も見かけるようになってきた。デザイン業界では従来からそうした試みは続けられてきているが、オートサロンを披露の場に選ぶというのはやはり、来場者の価値観が多様化してきたことを反映しているといえそうだ。旧車をレストアすると同時にドレスアップを施した車両も見かけるようになっているが、これも同様に価値観の多様化を感じさせる。販売店がカスタムショップやデザイナーと手を組み、中古車の内外装を仕立て直してコンプリートカーとして売る例が見られるようになってきていることにも注目したい。

オートサロンに出展される車両は「合法であることがあたりまえ」となって久しい。かつては「違法改造車のイベント」と呼ばれ、実際にそうした車両も多かったものだが、カスタマイズの健全化と普及を目指す主催者の努力は確実に実を結んでいる。それを示しているのが、自動車メーカーが大きなブースを展開するようになったことだ。

ただし自動車メーカーの精力的な出展は、「アフターマーケットのイベント」という主旨に水を差すことにもなりかねない。自動車メーカー関係者からも「小規模出展者による車両だけの展示が年々減ってきて、なんだか寂しくなってきているように感じる」ということを頻繁に耳にする。実際に、今回の出展者数は前回比で102.5パーセント(458社)と微増していながら、出展車両数は逆に96.6パーセント(850台)と微減。ブースを設ける出展者が増えた結果、そこまでの力を持たない小規模の出展者が押し出されてしまった格好だ。


もちろん各社とも、アフターマーケットを盛り上げる出展内容にするべく努めていることは理解できる。だから今後は自然と、本来の主役であるショップやパーツメーカー、それに個人の出展車両にも焦点が当たるように是正されてゆくことだろう。

全体的には健全化が進み、誰もが楽しめるイベントとなった。しかしその一方で情熱と思いつき、そして勢いだけで突っ走ってしまったような、荒々しくもユニークな昔ながらのカスタマイズも散見できるのがオートサロンのいいところだ。

改造の結果として公道走行が不可能になってしまったとしても、出展者がそれを明示し、来場者もそれを理解していればいい。そうした自由な雰囲気が残されている限り、オートサロンが廃れるということはないはずだ。数ある自動車文化のひとつとして、カスタマイズやドレスアップはすっかり定着しているのだから。

《古庄 速人》

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