国内にもいくつも存在する自動車博物館。貴重なクラシックカーもそういう場所では見学することは可能だ。しかし、当然そういうクルマは販売はしない。この「ノスタルジック2デイズ」の会場に持ち込まれたクルマの多くは実際に購入することも可能だ。
日本の自動車産業も、本格的な量産を介してからそろそろ半世紀を超えようとしている。近年では海外のオークションで非常に高価格で取引される日本車も珍しくなくなってきた。価値を世界が認め、コレクターの注目される存在になりつつある結果だといえるだろう。
このイベントの特徴でもある「実際に購入できる」ことは、ただ展示されるだけでなく、走行シーンのあるイベントが音、におい、走り姿を拝むことができることによってリアリティを帯びるように、完全に自分のこととは隔絶した問題ではなく、ことと次第によってはすべての人にオーナーになる可能性がある。これがある種のシズル感をもたらしているようだ。
会場にいた来場者の一人はこう話していた。「もともとはパーツ交換会として始まったというフランスのレトロモビル、あれに近いイベントなのかもしれませんね」。
「最近ではレトロモビルも、かつてのような蚤の市的な性質より、付加価値の高いものを売る場になっているようですが。高い技術と、こだわりできれいに仕上げられている名車を見るとオーナに名乗り出たくなる。この感覚はほかのイベントではなかなか感じないことかもしれません」
「また、旧車のパーツに関しては、純粋な販売というより、今は使わないので、使う人がいればどうぞ、という融通の精神が前面に出ているのではないでしょうか。ついメーターパーツを購入してしまいました。私の場合は、取り付ける車を所有していませんが、書斎のオブジェにしようと思います」
このイベントを運営する芸文社、旧車の専門誌を手掛けるだけあって、特別展示車両も貴重なクルマが目白押し。それらを見学するだけでも価値がある。1964年の第2回日本グランプリでの勝利を期して作られたプリンス『スカイラインGT』(S54A-1)、1974年にモデルチェンジした4代目スカイライン(通称ケンメリ)の、東京モーターショーに展示された「スカイライン2000GT-Rレーシングコンセプト」、トヨタ『2000GT』のオープンモデル「ボンドカー」もトヨタ博物館から出展されるなど、貴重で誰もが憧れるスペシャルな一台が一堂に集まった。
そのほかにも、会場で新規オーナーを募り、販売されていた車両からも目が離せない。午後になるとたくさんのクルマの窓には「売約済」の札が掲げられた。「昔からの憧れでした、というお客様が多いですね。そういう方に喜んでいただける姿を見るのはそれ自体うれしいものですね」と出展ブースのスタッフは話していた。
ミニカーなどを扱うショップも目白押しだ。絶版のミニカーなど、座り込んで入念にお気に入りの一台を探す人の姿が多数見られた。また、往年の名車やそのメカニズムを模し、デザインしたアパレル商品や、小物類も充実。クルマに乗っていないときにも愛車と、憧れのあのクルマとともに。いつの時代も変わらないようである。
航空宇宙、さらにレーシングカーのパーツにも使われる「A2017」と呼ばれるジュラルミン無垢を用いて作られたiPhoneがあった。「付属品も含めて日本製で仕上げました。GT-Rと言えばテールレンズですよね。これをそれぞれのモデルごとにデザインしました」。見た目デザインだけではなく、スマートフォンを守るという本来の役割も追及されている逸品だ。
また小出茂鐘さんのブースもつい足を止めていた人が多かった。みんなが知っている名車をモチーフに、心温まる日常のワンシーンを切り取ったようなイラストの数々。そしてクルマが季節の輝きとともに輝いている。「クルマを見てこんな絵にしようかと思うこともありますし、この風景にこんなクルマを入れたら面白いかも、と思うこともあるのですが人物は入れるようにしています」と小出さんは話してくださった。