全国初、交通系ICカード対応駅が廃止に…3月4日JR北海道ダイヤ改正

鉄道 企業動向
三角屋根が印象的な美々駅舎は二代目にあたり、手荷物扱いが廃止された頃に改築されたようだ。
三角屋根が印象的な美々駅舎は二代目にあたり、手荷物扱いが廃止された頃に改築されたようだ。 全 1 枚 拡大写真

3月4日のJR北海道ダイヤ改正では、極端に利用が少ない駅の廃止がさらに進められた。

今回、廃止された駅は、千歳線の美々(千歳市)、根室本線の島ノ下(富良野市)・稲士別(幕別町)・上厚内(浦幌町)、釧網本線の五十石(標茶町)、函館本線の東山・姫川・桂川(以上、森町)、北豊津・蕨岱(以上、長万部町)の10駅。いずれも1日あたりの乗降客数が1人いるかいないかの駅で、JR北海道では「ご利用実態がほとんどない駅」「駅周辺に生活上必要としている民家がない駅」としていた。

このうち特筆されるのが千歳線の美々駅だ。JR北海道の発表によると、千歳線は2015年度の輸送密度が4万4812人で、営業係数は105とわずかに赤字ながら、同社屈指のドル箱路線だ。美々駅がある南千歳~沼ノ端間は、特急『スーパー北斗』『北斗』が疾駆し、その合間を縫って貨物列車も頻繁に通過する。また、千歳線と室蘭本線苫小牧~沼ノ端間はJR北海道の交通系ICカード「Kitaca」のエリアに入っているため、簡易型IC乗車券改札機が設置されている。こうした幹線の環境にありながらも廃止される駅は非常に稀で、交通系ICカードの全国相互利用対応駅が廃止される初のケースともなった。

美々駅は、千歳線が私鉄の北海道鉄道札幌線として開業した1926年8月に誕生した。駅名の由来は、当時、この付近に小川が多く集まっていたことから、アイヌ語の「川・川」を意味する「ベッ・ペッ」が充てられ、それがなまったものだという。1980年5月までは手荷物も扱っていたが、1984年3月には無人駅化。「Kitaca」が登場した2008年10月には交通系ICカード全国相互利用の対応駅となった。駅前の道を500mほど行くと国道36号線に突き当たるが、周囲はコンクリート工場があるだけの原野で、民家らしきものはほとんど見かけられない。そのため1日当たりの乗降客数は1人以下に分類され、JR北海道は2016年に駅が所在する千歳市に対して廃止の意向を伝えていた。

幹線上にありながらも極端に過疎な駅であったため、最近ではユニークな秘境駅として知名度が上がっていた。また、地理的に新千歳空港のお膝元とあって、発着する航空機を頻繁に見ることができ、航空マニアにも知られた駅であったようだ。

美々駅の営業最終日となった3月3日夜に同駅を訪ねてみたが、すでに廃駅へ向けて社員が続々と集結しており、そのなかに混じってマニアら廃止を惜しむ人々が、時折通過する特急や貨物列車に手を振っていた。上り(苫小牧方面)最終の1本前となる札幌発の2838Mが到着すると、さらに別れを惜しむマニアたちが降り立ち、秘境駅であるのが嘘のような賑わいを見せていた。筆者はその1本前の上り列車で美々駅に着いたが、到着前の車内放送では、駅の3月3日限りでの廃止と、交通系ICカード全国相互利用対応駅では初の廃止駅になることを伝えていた。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. 「ホンモノのGT」が日常を小冒険に変える…マセラティの新型『グラントゥーリズモ』が誘う世界とはPR
  2. 『N-BOXカスタム』用パーツが一挙発売、ブリッツからエアクリーナーシリーズ4種類・5製品が発売
  3. 【トヨタ GRカローラ 新型試乗】「GRヤリス」とはスタンスが明確に違う理由…河村康彦
  4. ランボルギーニ、新型車を間もなく発表へ…電動『ウルス』の可能性も
  5. SHOEIが新型フルフェイスヘルメット『GT-エアーIII』にグラフィックモデル「DISCIPLINE」を設定
  6. アルピナ『B3』が2度目のフェイスリフトへ! リムジン&ツーリングをWスクープ
  7. [音響機材・チョイスの勘どころ]サブウーファー「小型・薄型モデル」の選択のキモは、“サイズ”と“音”と“価格”!
  8. ホンダの新型SUV『WR-V』、発売1か月で1万3000台を受注…月販計画の4倍超
  9. テスラ モデル 3、新グレード「パフォーマンス」を追加…最高速度262km/h
  10. レンジローバー最初のEV、プロトタイプの写真を公開
ランキングをもっと見る