三菱が目指す世界をデザインで表現した…デザイン本部長が語る「エクリプス クロス」

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三菱自動車デザイン本部長の國本恒博氏と三菱 エクリプス クロス
三菱自動車デザイン本部長の國本恒博氏と三菱 エクリプス クロス 全 24 枚 拡大写真

三菱自動車はジュネーブモーターショーで『エクリプス クロス』をワールドプレミアした。これは久々に登場した新型車ということだけでなく、同社の新世代デザインを纏う商品の第一弾となる。モーターショーを目前に控えた2月下旬には、同社デザイン本部長の國本恒博氏がみずからこの新型車のデザイン、そしてその背景にある三菱自動車のデザイン戦略について紹介した。

エクリプス クロスは、國本氏がデザイン本部長に就任して以来はじめての新型車となる。そしてそれだけでなく、『アウトランダー』のフェイスリフトではじめて採用された「ダイナミックシールド」をはじめとした、新しいデザイン言語を当初から織り込んでデザインされた、最初のモデルでもある。それでは新世代三菱デザインの背景にある思想はどんなものなのだろうか。

三菱の歴史と、挑戦・進化のかけ算

國本氏は2014年にデザイン本部長に就任すると、まず考えたのは「三菱のデザイン・アイデンティティを構築しなければいけない」ということだったという。そして「オリジナリティのある”三菱らしさ”を作り出す」、「一貫性をどうするか」というふたつのデーマを柱にしてデザイン戦略を進めていると語る。

ブランドのアイデンティティを構築するには、ただ単に商品に共通する形を決めればいいというものではない。企業やブランドの思想や文化を体現し、顧客にメッセージとして発信できるものでなくてはならない。そこで就任後は三菱自動車、そしてその母体である三菱重工のヘリテージを再確認するために、自動車のみならず船舶や航空機に携わるエンジニアの話を聞いて回った。

そして導き出されたのは「根底にあるのは三菱の歴史と、挑戦・進化のかけ算」というもの。また三菱自動車の従業員は「愛社精神が強く、自分たちは新しい価値を創造してきたという自負や誇りを持っている」という確信を得た。たしかにEVやPHEV、4WDの制御技術などで、新しい価値を生み出していると國本氏。こうして三菱デザインの基本的な考え方として、歴史と進化を備え持つ「Heritage×Evolution」というキーワードをデザイン戦略に据えることにしたという。

同時に、市場や顧客が三菱自動車に抱いているイメージや期待していることなどを知るため、世界各地でインタビューを実施。国や地域を問わずに共通するキーワードとして「オネスト(まじめ)、ロバスト(たくましい)、ディペンダブル(信頼感がある)、ファンクショナル(機能的)、そしてジャパニーズ・プロダクト(日本らしい作り)」というものが浮かび上がった。

三菱デザインを創出する4つの価値

こうしたインプットを経て、三菱らしいデザインを創出するための4つの価値「Four Design Creative Value」を策定。これはデザイナーたちに「三菱はこういうプロダクトを作っていくんだ、こういうアイデンティティなんだということを教え、共感してゆくことを目的としたもの」だという。具体的には「Augmented Possibilities(可能性を拡張する)、Functional Beauty(機能に基づく美しさ)、Sculptured Dynamism(ダイナミズムを刻む)、Japanese Craftmanship(日本の匠による美しさ)」という4項目だ。

キーワードだけではやや抽象的。國本氏の捕捉説明を聞いてみよう。「可能性の拡張とは、イノベーティブということ。機能美とともに、これまでもこだわってきた部分です」とのことで、今後もこれらを強く打ち出していこうということだとか。また 「ダイナミズムを刻む」とは「塊から削り出したような彫刻的造形」そして「アスリートの筋肉質な身体」というふたつの要素。静的・無機的な彫刻と、有機的で躍動感のある筋肉の表現では矛盾しているようにも思えるが、これを日本の匠によって昇華させ、美しさに繋げることで個性になるというわけだ。

アスリートとは「十種競技選手の筋肉質なイメージ。スリーク(なめらかでスマート)な美しさとは若干異なったテイスト」だという。そして彫刻的とは「ソリッドでロバスト、少々重量感を覚えるものでもいい」と國本氏。なるほど、特定の種目のために研ぎ澄ました筋肉とは異なり、全体的なバランスの取れた力強さを備えている、と解釈すればいいのだろう。「これをジャパニーズ・モダンの流儀で、タイトで引き締まった印象にすることで、バランスを取りたいと考えている」。

現在の三菱では「Heritage × Evolution」のキーワードの下で、こうしたことを長期的ビジョンを持って進め、デザインを作り出しているというわけだ。すべての車種でこうした意識を共有することで、アイデンティティを作り出そうとしている。もちろんこれから先ずっと、同じことを続けるわけではないという。「いろいろな意見を取り入れながらも、軸がぶれることなく改善してゆくことができると考えています」と國本氏は力強く語る。

スタイリッシュさと快適なパッケージングを両立する

さてそれでは、エクリプス クロスのデザインについて聞いてゆくことにしよう。市販車としては進化したダイナミックシールド、國本氏の言葉によれば「アドバンスド・ダイナミックシールド」を持つ最初のモデルだが、その要素は『eXコンセプト』、『XMコンセプト』そして『GT-PHEVコンセプト』という3種のコンセプトカーで、すでに予告されていたもの。

エクリプス クロスのデザインコンセプトは「VIBRANT & DEFIANT」。日本語にすると「きらめきのある&挑戦的」ということになる。正統派SUVに近いシルエットながら、シャープな造形やグラフィックがもたらす軽快感がうまくバランスしている。「ホイールアーチまわりは、スタート直前の陸上選手のような筋肉の盛り上がりと踏ん張り感。上半身は勢いや軽快感。このコントラストによって、新しいスポーティさやスタイリッシュさを狙っています」という。

彫りが深く鋭いキャラクターラインは強いウェッジで高い位置のリアランプに到達し、その上のガラスは大きく傾斜することでクーペのようなイメージを作り出している。しかしクーペ風でありながら、後席や荷室の空間はしっかり確保できているというのが魅力だ。スペシャリティSUVとして割り切ることなく、スタイリッシュさと実用性を高いバランスで両立させたといえる。

國本氏は「三菱の開発者はヒップポイントの高さや視界など、パッケージレイアウトにこだわるんです。だからエクリプス クロスも車高は高い。ただ、これはポジティブな要素なんです。ウェッジシェイプにしても頭上空間が犠牲にならない。見た目はスポーティながら快適なパッケージングが作れるんです」と説明する。なるほど、この愚直な姿勢を保ちながらスタイリッシュさを追求するというのが、過去からSUVに強みを持つ三菱の個性ということなのだろう。

三菱が目指す世界をデザインで表現した

それではインテリアはどうだろうか。まず目に入るのは、左右にワイドに広がるインパネ造形だ。「水平基調のインパネは、車両の姿勢がすぐに把握できる。これはSUVとして大切な要素」と國本氏。同時にすっきりした印象やルーミーな感覚を出せるのもSUVとしてメリットだということで、採用した造形だという。

助手席前方を上下に分けて間にシルバーのモールを通したのは、大きな塊を分割することでボリューム感を減らし、軽快感やスポーティさを加えるため。ただしセンタークラスター部を少し突き出し「囲まれ感」も演出している。これは運転席にコックピット感覚をもたらすため。ここでもエクステリアと同様に、二つの要素を融合させることで個性を生み出すデザインとなっている。

ほかにもシフトグリップやドアグリップなどは塊感のあるしっかりした造形ながら、精緻さを感じる造形を採用。SUVとしての力強さを備えつつ「力の及ぶ限り、細部までクオリティを高めることでジャパニーズクラフトマンシップを表現していく」という意気込みのあらわれだ。

「三菱では現在、全社的にリ・ブランディング(ブランド再構築)に取り組んでいます。そしてデザインも、ブランド価値向上を目指して戦略的に動いています。そしてエクリプス クロスは、これからリリースされる新世代クロスオーバーSUVの第一弾になります」と国本氏。つまりエクリプス クロスのデザインには、三菱自動車がこれから目指す世界が表現されているのだ。

《古庄 速人》

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