【トヨタ プリウスPHV 試乗】ユーザーが求めているのは「プリウス」ではない…岩貞るみこ

試乗記 国産車
トヨタ プリウスPHV 新型
トヨタ プリウスPHV 新型 全 16 枚 拡大写真

『プリウス』との差別化をはかるべく、いくつかの要素が取り入れられたPHVである。まずデザイン。シャープさが際立つプリウスに比べ、リアまわりを中心にあたたかみのある、やわらかなデザインが採用されている。ぬめっ、というか、ふにゃっというか。街中で見かけると、思わず二度見するような印象的なインパクトである。

インテリアの最大の特徴は11.6インチのタテ型カーナビディスプレイだ。どーんと中央にあるディスプレイ。運転席に座ったとたん目を見張るほどの演出なのだが、これで電力消費量はどのくらいなのだと心配性な私は気になって仕方がない。

タテ型に配置することで、ヘディングアップでルート表示したときに進行方向がより多く表示され使いやすい…ということだが、自車位置が画面半分より下に表示されるため、運転中の視線移動が大きくてどうも落ち着かない。さらに決定的なのは、私はカーナビはノースアップで使うということだ(男脳なもので、地図が読めて話が聞けない)。まったくメリットがないうえに、単に自車位置が低くて見えにくいだけだ。このカーナビはぜんぶ取り外して、三分の一程度の大きさの画面でいいから、もっと視線移動が少なくてすむ上の方に取り付け変えたい思いである。

走りのポイントとしては、バッテリーから出される電力で、加速がよくなったということだ。アクセルを踏み込むと、さすがに最初のリアクションはいい。おおっ、加速がするどい! しかし、喜んだのもつかの間、その後の盛り上がりに欠ける。モーターアシストのトルク感が最初だけで終わってしまい、その後は物足りないのである。残念だ。最初の加速のわくわく感がずーっと続いてくれればどんなに気持ちのいいことだろうに。

さて、100Vのコンセントからも充電できるようになった新型PHVである。多少時間がかかるとはいえ、日本のスタンダードである100Vのコンセントが使えるのはありがたいことである。ただ、どうしても誰が買うのかユーザーが見えてこない。

PHVは今後の日本、いや、世界的に必要な技術であることは間違いないのだが、その最初の担い手がプリウスでいいのかどうか。エコ技術はプリウスからというトヨタの気もちはわからないでもない。でも、ユーザーが求めているのは、違う気がする。

使用環境からいえば、ガソリンスタンドが減少している過疎地の足として。ならばクルマはもっと小さく安いものである必要がある。逆に、技術に敏感なゆとりあるユーザーであれば、もう少しハイクラスなクルマを選ぶだろう。小さいクルマに載せるには、価格的にも大きさ的にも難しいのはわかる。でも、いちばん熱望しているのは、きっとこのあたりなんだと思う。

プリウスで量産効果を上げて、もっと小さくもっと廉価なユニットにして、一日も早くコンパクトカーに搭載される日を願っている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 世界初の「破壊不可能ホイール」って何だ!? テスラ向けパーツ手掛ける米メーカーが開発
  2. 待望の新型スズキ『GSX-R1000R』が予告なしの初公開!「3色3様」往年のレーシングカラーで日本市場復活へ
  3. 「ミニGSX-R」をスズキがサプライズ発表!? 鈴鹿8耐マシン以上に「サステナブルかもしれない」理由とは
  4. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  5. 「盤石シャシー」に「戦甲車体」採用、ワイルドすぎるオフロードSUVが1時間で9700台受注の人気に
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
ランキングをもっと見る