高齢者の事故は「ドラポジ」で解決できる…“人間中心”マツダの安全思想

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「高齢者なりきりセット」を装着して最新マツダ車のペダルレイアウトを確認。少ない負担で無理のないペダル操作が可能だ
「高齢者なりきりセット」を装着して最新マツダ車のペダルレイアウトを確認。少ない負担で無理のないペダル操作が可能だ 全 36 枚 拡大写真

マツダが安全取材会なる催しを、東京のお台場で行った。マツダ各車に装備される安全デバイスを実体験できるイベントである。

去る3月13日、マツダは日本国内で販売している新世代商品群に、先進安全技術「i-ACTIVESENSE」(アイ・アクティブセンス)の標準装備化を、2017年度中をに行うという発表を行った。これに先立ってそのアイ・アクティブセンスに含まれる内容の一部を、実際に体験してもらおうというのが、今回の取材会の趣旨。そもそも、衝突被害軽減ブレーキを筆頭に、試乗車を借りたところでそいつを試してみようとは決して思わない、要するにいざという時にならないと活躍しないデバイスを、安全かつシリアスに体験させてくれるということである。

実際に体験できた内容を列記すると、体験した順番に「リア・クロストラフィック・アラート」、 「ブラインドスポットモニタリング」、「衝突被害軽減ブレーキ」、「後退時スマートシティブレーキサポート」、「AT誤発進抑制制御」、および人間中心に考えたペダルレイアウトがもたらす高齢ドライバーによるペダル踏み違い事故の抑制などである。

順番に解説しよう。リア・クロストラフィック・アラートというのは、駐車場からバックで出るような時に、後方を横切るクルマがいると、ドライバーに警告を出す機能。ギアをリバースに入れると、リアに備えたカメラが後方を映し出す。そして万が一後方に横切るクルマが近づくと、サイドミラーとカメラ映像内に警告が出る仕組み。まだ装着車で実体験したことはなく、デモではあるが今回が初体験であった。因みに駐車する際にバックして障害物を検知すると警告音を出すバックソナーとは違う。

ブラインドスポットモニタリングは、すでに装着車が多いので改めて説明する必要もないが、例えば高速などでウィンカーを出して車線を変更する時など、サイドミラーの視界には入らない、いわゆるブラインドスポットにクルマがいる場合などに警告を出す仕組みで、これは現実にブラインドスポット、即ち死角に入り込んだ車がある時など、ハッとした経験のあるドライバーも多いと思う。自分もそんな目に合っているから、装備したいアイテムではある。因みにこの装備はすべての新世代商品群に標準装備される。

3つ目は衝突軽減ブレーキ。正確にはアドバンスド・スマート・シティ・ブレーキ・サポートと呼ばれるもので、これは歩行者まで感知してブレーキをかけてくれる。というわけで、これは助手席で体験させてもらった。30km/hで走行する車両がダミー人形に迫る。そして、それを感知すると凄まじい減速Gを伴ってクルマを止める。まさに寸止め。それ以前にドライバーが気が付いてブレーキを踏んだとしても、その減速力が足りない場合にはクルマがさらに強力なブレーキをかけてくれるそうだ。

後退時のスマートシティブレーキは、後方の障害物に気づかずバックで駐車するような場合、クルマ側で勝手にブレーキを踏んで衝突を防いでくれるもので、これも有れば便利なものに違いない。

AT誤発進抑制制御は、車止めなどを乗り越えて発進させてしまうようなケースで機能するもの。実際に車止めに車を止め、そこからアクセルを全開にしてもクルマ側がトルクを制御するため、障害物が前方にある場合はクルマが車止めを乗り越えることはない。ただし、車止めが存在しないと車両は障害物に向かっておおよそATのクリープ程度の車速で前に出るという。「急加速でコンビニに突っ込む」というような事故は防げるわけだ。

そして最後はマツダが拘るハンドルに正対したドライビングポジションと、オルガン式アクセルペダル、および理想的ペダル位置がもたらす効能についての体験。これを何と高齢者になった気分でやって欲しいという。そのために高齢者なりきりセットなるものが用意され、専用のベストに合計4kgのウェイトを入れ、O脚を実現する特殊な靴を履き、膝に動きを抑制するサポーターを巻き、さらには視野を狭めるゴーグルを付けての体験である。これを新旧、ペダルレイアウトの異なる『デミオ』と『アクセラ』で体験した。因みに旧型デミオとアクセラのアクセルは、ともにオルガンタイプではなく吊り下げ式だ。

アクセル、ブレーキの踏み間違いは主として「内旋角」という膝を内側に向けようとするときの角度が、高齢者は小さくなってしまうことが主原因の一つで踏み違いを起こすということだが、実際に試してみるとその内旋角は確かに小さくなっている。何よりもこの高齢者なりきりセット、良くできているのだが、踏み間違いは床に付けたかかとの位置が大きく起因すると筆者自身は感じた。

運転をする際、アクセルを踏むための右足のかかとはほぼブレーキペダルの下。もしくはできるだけブレーキペダルに近い位置で、そこから右方向に開いてアクセルを踏む。こうすれば例え高齢者になって内旋角が小さくなっても、瞬時にブレーキを踏むことが出来る。つまり、常に正しい運転姿勢をしていれば、こうした事故は抑制できるわけで、正しい運転姿勢が取りやすい最新マツダのコックピットは、事故を抑制できるものだ。

因みに公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)の調べによれば、アクセラ、アテンザ、デミオ(デミオのみデータは2年分、他は3年分)の販売台数1万台当たりのアクセルブレーキ踏み間違いによる死亡事故件数は、オルガン式アクセルとドライバーに正対したペダル及びハンドル位置を持つ新世代商品群が、旧世代商品群に比較して実に86%も減少しているという。

日々クルマが進化しているが、人間の衰えには歯止めがかからない。マツダでは高齢化社会でのソリューションとし、自動運転をバックアップシステムとして考え、ドライバーが認知や判断、操作が出来なくなったときにクルマ側が人間をオーバーライドして最適な場所へ自動で導くような機能の開発に取り組んでいる。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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