永遠のライバル、スバルと三菱のルーツを探る 『歴史のなかの中島飛行機』

モータースポーツ/エンタメ 出版物
歴史のなかの中島飛行機
歴史のなかの中島飛行機 全 1 枚 拡大写真

歴史のなかの中島飛行機
桂木洋二著(グランプリ出版)
定価:1800円(消費税抜き)
ISBN978-4-87687-350-0

今でも国内ラリー選手権ではSUBARU(スバル)と三菱自動車はよきライバルだ。この関係を決定づけたのは、三菱が『ランサーエボリューション』を、スバルが『インプレッサ』を発売した1992年だろう。

両車はWRCのグループA車両としてワークス参戦に利用されただけでなく、欧州メーカーワークスとトップ争いを繰り広げた。国内では、競技利用を前提としたスペシャルモデルの「ランサーエボリューションRS」、「インプレッサWRX-RA」が設定され、全日本ラリー選手権、ダートトライアル選手権を筆頭に、各種グラスルーツ競技車両としても活躍した。

1992年以前も、三菱は『コルト1000F』や『A73ランサー』、スバルは『レオーネ』や『レガシィ』でオーストラリアのラリーやサファリラリーなどで活躍していたり、80年代にはトヨタ・日産・マツダがWRCに参戦したりしていた。しかし、70年代、80年代はサファリラリーなど特定のラリーでの成績にフォーカスを当て気味で、シリーズチャンピオンを争うモータースポーツとしてはF1がようやく認知されてきたくらいだ。

90年代のWRCは、日本車と欧州メーカーがトップカテゴリでシリーズ争いを繰り広げ、世界中のファンが熱狂したという点で際立っていた。この構図を盛り上げていたのが、ほかならぬスバルと三菱自動車だ。

両者には、必然的にほどよいライバル関係が生まれ、お互いに技術を切磋琢磨させていったのだが、じつはこの関係のルーツは第二次世界大戦前までさかのぼることができる。

前置きが長くなったが、本書はスバルの前身である中島飛行機がたどった歴史を軸に、創業者である中島知久平氏の足跡と同社の飛行機開発の変遷をまとめている。著者のまえがきにあるように、人物としての中島知久平氏と中島飛行機にスポットを当てているため、本当の飛行機マニアには物足りないのかもしれないが、中島飛行機が作ったエンジンや飛行機について、純粋な技術的背景ではない、歴史的・社会的・経営的背景など多角的な視点からの分析が興味深い。

中島飛行機が設立された1917年(大正6年)は、航空機が輸送手段だけでなく兵器として価値が注目され、列強が飛行機開発に力をいれ、空軍や航空機部隊を編成し始めたころだ。日本も欧米に技術を学びエンジンのライセンス生産から国産機製造が活発化した時代だ。当然、航空機開発には軍の関与が不可避、不可欠となった。

三菱も中島飛行機もこの例外ではなく、両者は軍用機の開発で激しく競い合ったわけだが、この時代、すでに財閥を形成していた三菱に対し、群馬で9人で始めたベンチャー企業である中島飛行機がなぜ、軍用機の2大メーカーのひとつとなりえたのか。零戦以降の主力戦闘機開発で三菱との協業と、中島飛行機の葛藤。さらに中島知久平氏は、未完に終わった巨大爆撃機「富嶽」に何を求めていたのか。

ネタばれになるので、詳しくは本書を読んでいただきたい。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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