【上海モーターショー】新ブランドが続々登場、混沌がよみがえった

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Nio EP9
Nio EP9 全 25 枚 拡大写真

中国の自動車産業は、市場規模が世界最大となった現在でも大きな変化を続けている。上海モーターショー2017でも、さまざまな背景を持つ新しいブランドがいくつも出展。その様子は、市場が成長を始めた1990年代末に感じた混沌を思い起こさせるものだった。

今回見かけた新しいブランドには、中国の他のモーターショーや他国のイベントに出展し、話題となったところも多い。しかし中国の大規模な国際モーターショーでは初登場となったところばかり。その内実はベンチャーやスタートアップの新規参入組と、大手メーカーの新ブランドというふたつに大別できる。

新規参入組の特徴は、IT系や電機系の企業グループや投資ファンドからの資金調達、あるいは地方政府の肝入りでEV事業を立ち上げていること。代表例は「NIO」というブランドでEVラインナップの展開を予定しているNextEVだ。

今回はすでに公開済みの市販予定スポーツカー『EP9』や自動運転コンセプトの『EVE』に加え、大型SUVの量産モデルを予告する『ES8』をワールドプレミアした。この7人乗り電動SUVの製造は長安汽車に委託され、2019年に発売される予定。

2017年2月に表舞台に登場した雲度汽車(Yudo Auto)は、福建省と地元国有企業の出資で誕生したEVメーカー。これまでに市販予定のコンパクトカー『π3』(パイ3)、『π1』(パイ1)を公開していたが、上海ショーではガルウイングドアを持つクロスオーバーコンセプト『X-π』を初公開。なおパイ3とパイ1もEVながら、モノコックは旧型のトヨタ『ヴィッツ』をベースに開発されたようだ。

湖西省の漢騰汽車(Hanteng Auto)も、2016年に初のモデルとして『X7』を発売したばかりの新興メーカー。今回はコンパクト電動SUVのコンセプトモデルを公開したが、このプロトタイプには車名が与えられていない。いっぽう奇点汽車(Singulato)は、今年後半に初の市販モデルとして発売予定の『iS6』を初公開。
iS6もまた電動プラットフォームを持つSUVだ。

今年のジュネーブショーで、ピニンファリーナのブースに『H600』がディスプレイされた正道集団(Hybrid Kinetic)は、自社ブースで『K750』と『K550』をワールドプレミア。この2台のSUVもH600と同じくピニンファリーナがデザイン開発を手がけ、タービン発電機を備えたハイブリッドシステムなど搭載メカニズムも同様。セダンに次いで市場投入する予定だという。

変わったところでは、車載用バッテリーやリチウムイオン電池を手がける広東省の猛獅科技(Dynavolt Tech)が、ワイヤレス給電システムを搭載するコンセプトEV『戴楽開拓者』を公開。18650型リチウムイオン電池を搭載して300kmの走行が可能という。発売する計画もあるとのことだが、狙いはおそらく完成車メーカーへの給電システムの供給だろう。

いっぽう奇瑞汽車が観致汽車を、BYDが騰勢汽車を設立したように、大手企業グループが新ブランドを立ち上げる例も見られた。吉利汽車が2016年に立ち上げた新ブランド「LYNK&CO」では、若者向けのポップなブースを展開。ブランド初の市販モデル『01』とともに、ボルボが開発した小型車用プラットフォーム「CMA」をディスプレイ。現在の計画では同ブランドのすべての車種が、このプラットフォームを採用したHVあるいはPHEVになるという。

斯威汽車のアルファベット表記「SWM」を見て「おや?」と思ったのは2輪関係者だろう。近年になって復活したイタリアの2輪ブランドの名が、なぜ上海モーターショーにあるのか。それはここが華晨汽車(Brilliance)と、現在SWMブランドを所有する2輪メーカーグループ、重慶信源摩托車との合弁企業だからだ。設立されたのは2016年で、位置づけとしては華晨汽車のサブブランドということになる。

初公開となったコンセプトカーの『EROE』は電動クロスオーバーSUVという触れ込みだが、すでに発売されている市販モデルや新型車として展示された『X3』は、華晨汽車のラインナップと同じ4気筒ガソリンエンジンを搭載している。

ほかにも長城汽車がプレミアム感覚のサブブランドとして立ち上げた「WEY」など、昨年の北京モーターショーでは見られなかった新しいブランドが目立っていた。中国の自動車産業は、業界を整理して国際競争力を高めたいという中央政府の思惑もあって、企業の統合や合従連衡が少しずつ進められている。しかし起業家や、地元産業を振興あるいは育成したい地方政府の思惑はやや異なっているようだ。このダイナミックな動きはいつまで続くことになるのだろうか。

《古庄 速人》

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