【DS 5 ディーゼル 試乗】長距離で本領発揮、疲れ知らずの快適クルーザー…内田俊一

試乗記 輸入車
DS 5 Chic BlueHDi
DS 5 Chic BlueHDi 全 21 枚 拡大写真

フランス本国では大統領車としても使われている『DS 5』。ディーゼルモデルが日本にも導入されたのを機に長距離を走らせてみた。すると、このクルマの良い面がはっきりと伝わってきた。

東京は恵比寿にあるプジョー・シトロエン・ジャポンで車両と対面した時の印象は、相変わらずアヴァンギャルドなデザインだということだった。全体のシルエットはもとより、ヘッドライトからAピラーに抜けるサーベルラインは非常に特徴的だ。しっかりとしたドアを開けて室内に乗り込むと、時計のベルトをモチーフにしたクラブレザーシートが迎えてくれる。この座り心地はさすがにヨーロッパのモデルだけあり、ベストのひとつといっていいだろう。

センターコンソールの右寄りにあるスターターボタンを押すと、2リットルディーゼルターボエンジンは目覚める。その音と振動は、今となってはいささか大きいきらいはあるが、設計年度を考えると妥当なところだといえそうだ。そこからゆっくりと車道へ出て、アクセルを踏み込んでいくと、最高出力180ps、最大トルク400Nmは十分すぎるほどであることが伝わってくる。特に信号からの出足などで、パワー不足は一切感じられず、混んだ街中でもきびきびと走ることが出来た。

更に、足回りがしなやかなため、荒れた路面でも快適に通過できるのは嬉しい限りだ。あえてこの乗り心地の話を書いたのにはわけがある。ガソリンモデルには235/45R18タイヤが装着されているのだが、このディーゼルモデルでは225/50R17に変更されているため、本来の乗り心地の良さが強調されているのだ。また、ディーゼルエンジンを搭載した分の重量増(130kg)も貢献しているに違いない。

さて、このクルマの本領発揮は高速の長距離移動だ。高速道路においては、直進安定性は頭抜けて良く、軽くステアリングに手を添えているだけで、どこまでもまっすぐに走っていく印象だ。ちょい乗り程度ではそう感じられるクルマもあるが、やはり長距離になると、微妙な修正舵を無意識のうちに繰り返して、肩が凝ったり、目が疲れたりするものだ。しかし、DS 5に限ってはそういうことはなく、もう一度名古屋まで行けといわれても、躊躇なく向かったことだろう。

もうひとつこのクルマは前述したシートの出来がいいことだ。2時間以上座り続けても、腰が痛くなるどころか、座りなおしたいとさえ思わない快適なシートなのだ。一見デザインコンシャスに見えるが、基本設計がしっかりしているのだ。

実は今回このDS 5を借りだした理由は名古屋まで日帰りでの取材があり、長距離移動が楽なクルーザーを考えた結果、DS 5に白羽の矢の立てたのだが、その選択に間違いはなかった。なぜなら、帰宅後すぐに原稿を書くことが出来るほど疲れを感じられなかったからだ。

では、DS 5を誰にでも勧められるかというと、少し躊躇する。そのひとつはデザイン/ユーティリティだ。例えばパワーウインドウスイッチはドアではなくセンターコンソールに配されるし、オーバーヘッドコンソール(ルーフスイッチ)にあるスイッチ類も瞬時に使い分けるのは難しい。オーディオ周りのスイッチ類は“プラスチッキー”だ。更に安全装備ではクルーズコントロールはアクティブではないなど、最新のクルマを知っていると物足りなく感じてしまい、だからこそ万人に勧めることが出来ないのだ。

それでもデザインに惚れ込み、走りに共感を覚えた方は、購入して間違いはないだろう。きっと貴方(と助手席の方)をどこまでも快適に連れて行ってくれるはずだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラと同じくルノー10。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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