ZFジャパンは5月24~26日に開催された「 人とくるまのテクノロジー展」に出展。安全、自動運転、電動化といった領域の先進技術がひとつのブランドに集約された、世界最大級のシステムサプライヤーとしての総合力をアピールした。
ブースは大きく分けて「自動運転」「電動化」「衝突安全」という3テーマで展開され、幅広い領域をZFというひとつのブランドで包括的にカバーしていることを示した。同社によれば「メガサプライヤーの1社として、OEMのみなさんにワンストップでさまざまな機能を提供できるということを目指しています。安全、効率、自動運転を柱に、業務に取り組んでいます」とのこと。
自社のビジョンと技術に基づく自動運転技術
そのなかでも、もっとも広い面積を割いていたのは自動運転のための技術と、それによって実現可能となる新しい機能のデモンストレーションだ。ZFでは現在「See-Think-Act」というビジョンを掲げている。これは、みずからを導く指針であると同時に、自社技術がもたらす独自の提案内容として営業活動に活用しているものでもある。具体的にはカメラやレーダーで検知し、それをもとにECUで指示を出し、アクチュエーターを動作させる、つまり「見て、考えて、動かす」という一連の動作を指している。今回は、このビジョンに沿った自動運転技術をアピールしていたのが印象的だった。
まず「見る」では、視野角が52度と100度の単眼カメラ、そしてこの標準的なカメラと魚眼、望遠という合計3つのカメラを組み合わせた複眼ユニットを展示。近距離から遠距離まで、そして広い角度で物体認識が可能になるというものだ。これで得た情報をもとに「考える」プロセッサには、NVIDIAとZFが共同開発した自動運転用AIの「Pro AI」が搭載されている。
さらに「動かす」では、電動パワーステアリングやブレーキシステム、減衰力連続可変制御ダンパー などを展示。後輪アクスルのトー角を能動的に可変させて旋回をアシストする「アクティブ・キネマティック・コントロール」が興味深い。こうした部分では「ZFはもともと、トランスミッションやダンパーといった駆動系のハードウェアに強みを持っている、ということが大きく活きています」と説明員。
これらの実機展示の後方では、液晶モニターを用いた2種類のデモンストレーションを展開。ひとつは来場者が乗用車の模型を置くと画面上の車両が走り出し、遅い前走車に追い付いてぶつかりそうになるとレーンチェンジするというもの。「左右レーンや後方の状況を常にチェックし、減速するのかレーンチェンジするのか、最適な挙動を判断する」とのことだ。また道路工事や悪天候などによる仮設の速度規制標識を認識し、自動的に減速する機能の可能性も示した。
電動化関連や衝突安全の技術も紹介
もうひとつのデモンストレーションは、同社が「X2Safe」と名づけたインテリジェントアルゴリズムの紹介。これは歩行者や自転車との衝突を予防しようというもので、画面ではそれぞれの存在を検知し、その後の動きを予測して警告を発する様子が示されていた。車両とスマートフォン、スマートウォッチなどのモバイル機器が双方向通信し、お互いを検知することで実現できるものだという。
このほか「電動化」に関わる展示ではモーターとデフ、トランスミッションを一体化した駆動ユニットや、モーターを追加することでハイブリッド車にも使用できる8速デュアルクラッチトランスミッションなどが見所となっていた。横滑り防止装置を組み込んだ回生協調ブレーキは「See-Think-Act」におけるActの領域にも貢献するものだ。
一方、衝突安全に関わる部分は2年前に買収し、経営統合したTRWが強みを持っていた領域。ここでは後席乗員用エアバッグや、頭部保護を重視したサイドエアバッグが目を引く。後席乗員用エアバッグは前席バックレストのフレームに装着する構造で、シートメーカーへの納入を想定。同社によれば「後席用エアバッグは、これから需要が伸びると予測している」とのことだ。
シートベルト関連の展示はアクティブバックルリフター、アクティブコントロールリトラクターなど。なお、これらの安全装備も「衝突が避けられないと判断したらプロセッサが指示を出し、衝突前にシートベルトやエアバッグを作動させて、効果を高めるといったことも考えている」とのこと。安全装備も駆動系メカニズムと同様にActを担うものと位置づけ、連携させることで機能をより高める狙いがあるという。幅広い領域を手がけ、安全にも注力するメガサプライヤーとしての姿勢をアピールする展示内容だったといえる。