【ルマン24時間】給油予定30回、現場スタッフ90人、シフトチェンジ約2万3000回…王者ポルシェの数字トリビア

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昨年のルマン24時間レースを制した#2 ポルシェ919ハイブリッド。
昨年のルマン24時間レースを制した#2 ポルシェ919ハイブリッド。 全 8 枚 拡大写真

今年のルマン24時間レース(6月17~18日決勝)で総合3連覇、最多勝記録更新となる19勝目を目指すポルシェが、ルマンやWEC(世界耐久選手権)にまつまる数字トリビアを公開した。

なるほど、と思わせる数字もあれば、これは必要? と思われるものもあるが、ルマン24時間というレースの性格の一端と、それにかける歴代最多勝メーカー・ポルシェの強い気持ちが伝わってくる数字の数々は興味深い。

今年のルマン(WEC第3戦)は4日のテストデーから現地での戦いが始まる。決勝まではまだ2週間ほどあるが、1~243,000の数字トリビアは、観戦の事前学習としてうってつけかもしれない。

1
ポルシェ919ハイブリッド(現在のLMP1クラス参戦車)の初走行は、2013年6月12日、バイザッハのテストコースでポルシェのワークスドライバーであるティモ・ベルンハルトによって行なわれました。その2年数カ月後、彼はさらに開発が進められたマシンでWECチャンピオンの座に輝きました。

3
これまで3人のハリウッドスターがポルシェでルマンに参戦しました。スティーブ・マックィーンは映画制作のために1971年に参戦。1979年にはポール・ニューマンが総合で2位となり、2015年の表彰台にはLMGTE-Amクラス2位のパトリック・デンプシーの姿がありました。

3.2
24時間のレース中、それぞれのポルシェのLMPドライバーがマッサージベッドで過ごす平均時間は3.2時間です。

4
2013年、ルマンの調査のため、ポルシェLMP1チームから4名のメンバーが派遣されました。これは、ポルシェがトップカテゴリーに復帰する1年前のことでした。この年、911 RSRがGTクラスで優勝を飾り、1998年以来初となるワークスポルシェの優勝となりました。

5
2011年末、フリッツ・エンツィンガーの指揮の下、5名のメンバーでポルシェはLMP1復帰の準備を始めました。2015年以降、チームの人数は260名で、そのうち160名がエンジニアです。

6
6名のポルシェLMPドライバーは、3つのベッドルームに分かれて休みます。ピットボックス裏手のコンテナを2名ずつのドライバーでシェアし、休憩、睡眠を取ります。コンテナには、バスルームも用意されています。ただ、静けさは期待できません。

8
効率性に関するレギュレーションにおいて、8メガジュール(MJ)が1周あたりのエネルギー回生システムからの最大エネルギー量です。8MJを選択した最初のマニュファクチャラーがポルシェです。919が多くの電気エネルギーを使えば使うほど、消費燃料が減ることとなります。

10
2015年6月10日の午後10時、ニール・ジャニが最初のルマン予選のスタートを切りました。ジャニのラップタイム3分16秒887は現在までの最速記録です。

12
ルマン24時間のほぼ4週間前の2017年5月23日に12名のスタッフがポルシェのLMP1ピットボックス裏の2階建て鋼鉄製ホールの建設を開始しました。5月30日、レースカーとすべての機材を積んだ8台のセミトレーラーが到着し、6月4日のテストデーには、すべての準備が整う予定です。

14
24時間のレース中、それぞれの919ハイブリッドはおよそ14ギガバイトの走行データを送信します。

15
2014年、シルバーストンにおける919ハイブリッドの初レース15分前、チーム監督のアンドレア・ザイドルは、名言にひっかけたジョークで緊張感を和らげました。「この一歩は人類にとっては小さな一歩だが、ポルシェにとっては偉大な飛躍である。2台のLMP1カーをグリッドに並べたのだから!」

19.9
ホイールとタイヤの合計重量は19.9 kgです。メカニックのライナー・ミュールホイザーは、使用済みのホイールの取り外しと未使用品の取り付けの作業をそれぞれ片手でこなします。WEC開幕戦のシルバーストンで彼がこれを披露して以来、他チームのピットレーンメカニックは同様の技術の習得に励むようになりました。

20
2014年のルマン24時間レースで20時間経過後、カーナンバー20の919ハイブリッドが先頭に立ちました。しかし、マーク・ウェーバーが最終スティントを開始してから20分後にエンジントラブルが発生し、ピットに戻ることとなってしまいました。さらにその20分後にはカーナンバー14のギヤボックスが故障してしまいました。

20:32
2013年9月9日20時32分、暗闇の中でマーク・ウェーバーがそれまで走行したことのなかったサーキットでLMP1カーによる最初の周回を開始しました。このポルティマオでのテストはポルシェにとってターニングポイントになりました。ポルシェは当初、919ハイブリッドのV4エンジンによる振動に悩まされていましたが、この日を境に改善が進み12月までに問題は解消されました。

25
2014年10月10日、WEC富士ラウンドのプラクティスデーで、チームがブレンドン・ハートレー25歳の誕生日を祝いました。プレゼントも用意しましたが、残念なことに彼の誕生日は1カ月先でした。

30
ルマンのレース中、それぞれのポルシェ919ハイブリッドは、30回の燃料補給のピットストップと10回のタイヤ交換およびドライバー交代を予定しています。

54
2016年のルマンの夜間、ロマン・デュマおよびニール・ジャニは、優勝車両で54周の連続周回をしました。セーフティカーフェーズがあったため、ポルシェLMP1ドライバーの中でデュマのスティントが最長だと語り継がれています。スティントは0時13分から始まり3時38分まで続きました。これは、F1でいえばほぼ2戦分の時間です。

60/40
919ハイブリッドの回生エネルギーの約60%がフロントブレーキ、約40%がエキゾーストシステムで発生します。

65
通常のWECの6時間レースの場合、ポルシェLMP1チームは65名のスタッフで運営されます。ルマン24時間レースでは、その数は90名となります。

90
919ハイブリッドのV4内燃エンジンのバンク角は90度です。ただし、エンジンの動きは、急角度がついた水平対向エンジンのものです。

100パーセント
2015年WECの最終戦バーレーンで、ティモ・ベルンハルト/ブレンドン・ハートレー/マーク・ウェーバー組の車両の両方のスロットルバレルレバーが破損しました。それでもこの車両がチェッカーフラッグを受け世界チャンピオンになったのは、メカニックたちの的確なアイデアと、エンジニアたちの素早い思考があったからです。メカニックたちは、エンジンに2組のペンチを取り付けてバレルをフルスロットル位置で固定し、エンジニアたちは車両の走行中、リアルタイムでプログラミングを行ないました。

239
2014年11月30日、サンパウロのシーズン最終戦でマーク・ウェーバーが239周目を走行中、彼のキャリアで最悪のクラッシュに見舞われました。

248
そのサンパウロ戦において、もう1台の919ハイブリッドを操るニール・ジャニが、248周を終えてポルシェ919ハイブリッドの初勝利を飾りました。

395
2015年のルマン24時間レースでアール・バンバー/ニコ・ヒュルケンベルグ/ニック・タンディ組は優勝まで395周の周回を重ねました。この3名のLMP1ルーキーは、レース前にクラッシュだけは避けることを確認し合っていました。この誓いが1998年以来のポルシェの総合優勝という結果に結びつきました。

397
ルマン24時間史上最長の走行距離は397周です。2010年の優勝者全員がポルシェ ジュニアの経験者でした(ティモ・ベルンハルト/ロマン・デュマ/マイク・ロッケンフェラー)。彼らはアウディで5,410.713 kmを走行しました。

400
2系統のエネルギー回生システム(フロントアクスルブレーキおよびエキゾースト)が400 PS以上を発生します。オンデマンドで電気モーターがフロントアクスルを駆動し、919ハイブリッドは一時的に4WD車に変貌します。

500
919の後輪を駆動するガソリンターボエンジンの最高出力は500 PSです。

919
919ハイブリッドは、LMP1カーとして唯一、ブレーキング中だけでなく、エキゾーストエネルギー回生によって加速中にもエネルギーを回生する車両です。

1900
1900年、フェルディナンド・ポルシェは、シリアル方式のハイブリッドドライブを搭載した最初の車両を製作しました。その“Semper Vivus”という名は「常に活動的」という意味です。2基の内燃エンジンで発電機を駆動して、ホイールハブに組み込まれた2つのモーター(それぞれ20A、90V)と1つのバッテリーに常に電気を供給します。1901年のゼメリング・ヒルクライムレースで、その改良版のローナーポルシェ プロトタイプが電気自動車のベストタイムを軽々と叩き出しました。その後、2シーター・エレクトリック・コンパクトカーが少数生産されました。

2013
2013年、最初の919ハイブリッド テストカーのコクピットの換気の悪さに耐えかねて、ニール・ジャニが「ドライバーがおならをしたら、2時間は臭い続けるだろう」とコメントしました。

22,984
2016年ルマン24時間レースにおけるポルシェ919ハイブリッド(ウイニングカー)のシフトチェンジは、22,984回でした。

62,000
テストおよびレースウイークエンドでの合計走行距離321,000 kmで、ポルシェ919ハイブリッドの2つのエネルギー回生システム(フロントアクスルのブレーキエネルギーおよびエキゾーストエネルギー)は62,000 kWhの電気エネルギーを発生させました。919ハイブリッドが発電所だったとすれば、15世帯(1世帯4人)の小さな村の電気を1年間まかなうことができます。

120,000
エキゾーストシステムには120,000 rpm以上の回転数のタービンが備えられ、ジェネレーターを駆動します。低回転域でもエネルギーを回生するため、タービンは可変ジオメトリとなっています。代わりに、ターボチャージャーにはVTGは採用されていません。

128,000
2014年はじめから2017年5月末までのレース(プラクティスと予選を含む)で、さまざまなバージョンのポルシェ919ハイブリッドが走行した距離は128,000 kmです。

193,000
2013年からのテストも含めると、その距離は193,000 kmになります。

243,000
2016年のルマンにおいて23時13分に突然故障するまでに、ポルシェ919ハイブリッドのウォーターポンプが記録した走行距離は243,000 kmでした。1時56分にベルンハルト/ハートレー/ウェーバー組は、トップグループから39周遅れでレースに復帰しました。

《遠藤俊幸》

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