【ミシュラン X-ICE3+】謎の「Mチップ」が摩耗しても氷雪性能を持続させる

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ミシュラン X-ICE3+ 発表会
ミシュラン X-ICE3+ 発表会 全 18 枚 拡大写真

26日、日本ミシュランが発表した「X-ICE3+」は長持ちするアイスブレーキング性能にこだわったタイヤだ。なぜ、そこにこだわったのか。どんな技術で実現したのか。発表会の内容とともに紹介する。

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X-ICE3+の発表会は、日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長 ポール・ペリニオ氏の挨拶から始まった。ペリニオ氏は「ミシュランは1982年から日本市場にスタッドレスタイヤを供給しており、今年で35周年を迎える。フランスのメーカーだが、日本向けの製品は、群馬県太田市で研究開発を行い、北海道士別市のテストコースで試験を行っている。」と前置きし、X-ICE3+も日本の気候・道路、そして消費者ニーズを踏まえて開発を行ったという。

日本の消費者はアイスブレーキング性能にこだわる

具体的にどんなニーズをもとに開発したのか、新しく投入された技術は何なのか。これについての詳細説明は、同社マーケティング部 ブランド戦略マネージャ 望月一郎氏に託された。望月氏は、2016年に同社が行ったアンケート調査から、「日本の消費者がスタッドレスタイヤに求める一番の性能はアイスブレーキング性能だった」とする。回答者の80%が新品を選ぶときに重視するポイントとしている。次に重視する点は、2年後、3年後のアイスブレーキング性能(同前73%)だという。また交換の目安についてのアンケートでは、2年~3年・4年~5年と年数を基準に考える層(37%)、残り溝(プラットフォームが見えるくらい)で判断する層(35%)、そして止まらなかったなど危険な目にあったとき(28%)となっている。

調査結果を受け、「多くの人が、スタッドレスタイヤについて、凍結路面でのブレーキング性能にこだわっており、しかも交換の目安は2年~5年で、タイヤの残り溝は50%くらいになるまで使い続けたいという消費者の意向が読み取れる。X-ICE3+は、凍結路面でのブレーキング性能を追求し、それが3年、5年と持続する性能にこだわって開発した」とした。

性能向上は、新品時のX-ICE3+と一世代前のX-ICE3(新品)との制動距離比較で4.5%よくなったという。20km/hから停止までの制動距離でいうと、新品X-ICE3+の平均制動距離は9.5メートル。旧モデル(X-ICE3)は10mだ。

10000kmの実車走行で摩耗させたX-ICE3+(同前制動距離=12.9メートル)と旧モデル(14.7メートル)の比較でも約11.5%の性能向上がみられたそうだ。ちなみに、計測日は異なるそうだが、新品時のX-ICE3+の制動距離と消耗時のX-ICE3+の制動距離は3.4メートル(12.9-9.5)伸びたことになる。X-ICE3の新品と消耗時の比較では、新品10.7メートル、消耗時14.7メートルと、4メートルほど伸びている。同一条件ではないが、X-ICE3+の性能低下は旧モデルより小さいと言えるだろう。

このような性能向上を生み出した技術だが、望月氏は「トレッドパターンに採用された技術を変わっていない」という。X-ICE3に採用されているマイクロポンプ(トレッド面の小さい穴)、クロスZサイプ(タイヤトレッド面と断面方向のサイプ)、Zig Zagマイクロエッジ(氷面を噛むギザギザのブロックエッジ)はトレッドデザインとともに変更はない。

消耗で氷雪性能が落ちないわけ

大きく変わったのは、「Mチップ」という特殊な素材を含んだ新コンパウンドだ。「表面再生ゴム」とも呼ばれる。X-ICE3+では凍結路面でのブレーキング性能を向上させるため、コンパウンド表面に極小の穴が空いている。この穴を氷面の吸水に利用するのだが、穴の正体は、ゴムの表面のMチップが溶け出したあとだ。Mチップはコンパウンド全体に含まれているので、ゴムは摩耗していっても新しいMチップの穴が現れる。

このしくみによって、プラットフォームが見えるくらいまで使っても、アイスブレーキング性能の落ち込みを抑えているというわけだ。また、Mチップは物質でありその部分が空洞になっているわけではない。同じような効果を狙って気泡にしてしまうと、ゴムの剛性が落ち、グリップや耐摩耗性に悪影響を与えるが、X-ICE3+ではタイヤ剛性を落とさず、アイスブレーキング性能を向上させている。

なお、Mチップについては企業秘密なので、その素材や組成は明らかにしていない。担当者等に聞いたところ、別の素材(昔、クルミの殻を配合したスタッドレスタイヤがあった)を混ぜているわけでもなく、シリカや乳化剤のようにゴムに化学結合しているわけでもないそうだ。溶け出したMチップは、厚生労働省の届出物質にも入っていないもので、環境への影響はないとされる。

サイズのラインナップは15インチ(185/65R15)から18インチ(245/45R18)までの15サイズで、8月から順次市場投入される。価格はオープンプライスだが、実際の市場では現行のX-ICE3と同等価格になる見込み。また、ランフラットを含む全53サイズで展開するX-ICE3も継続して販売されるそうだ。

商用バンにもX-ICEを投入

今回の発表はこれだけではない。商用車向けのAGILIS(アジリス)にも、今回スタッドレスタイヤが投入されると発表された。アジリスは国内ではトヨタ『ハイエース』や日産『キャラバン』など商用バン向けに販売されている銘柄だ。これまでスタッドレスの設定はなかったが、今回、X-ICEのトレッドパターンおよびコンパウンド技術(Mチップは採用されていない)を投入した「アジリス X-ICE」が8月1日より発売開始される。

アジリスのロングライフを特徴づけるカーカス技術をタイヤ側面に生かし、トレッド面にX-ICEの技術を投入している。現状で、サイズは195/80R15 LT105/107 Rのみとなっているが、注目したいのは速度域対応の表示が「R」となっており、170km/hの高速走行に耐える仕様になっている点だ。これは「日本でも高速道路の一部区間で速度制限の緩和が行われている。対応するために商用車タイヤのアジリスも、以前の110km/h基準から引き上げているが、スタッドレスのアジリスX-ICEでもその性能を引き継いだ」(望月氏)ためだ。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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