交通事業者に車両とシステムをパッケージで提供していく…SBドライブ佐治社長

自動車 ビジネス 企業動向
SBドライブ代表取締役CEOの佐治友基氏
SBドライブ代表取締役CEOの佐治友基氏 全 7 枚 拡大写真

SBドライブ代表取締役CEOの佐治友基氏は7月20日、Softbank World 2017 のセミナーに登壇し、同社の自動運転に関する取り組みをアピールした。ここではその講演の内容を紹介する。

佐治氏は、真っ黒に日焼けした姿で登場した。「ちょうどいま、すぐそこで自動運転バスの試乗イベントをやっていまして、このところの暑さですっかり日焼けしてしまいました。遊んでいるわけじゃありません!」と冒頭から聴衆の笑いを誘った。

(註:SBドライブは7月23日までの予定で、自動運転バスの一般公開試乗会を実施

■自動運転の現状

佐治氏はまず、自動運転に関する現状の説明から始めた。「自動運転の要素技術は、認知・判断・操作。これらの技術のレベルが上がってきた。また、日本では規制緩和により公道での実験が可能になっている。国交省、警察庁が環境を整えてくれた」

「レベル4とレベル5はシステムが運転し、人は介入しない。レベル4は限定した状況下での自動運転で、レベル5は制約のない完全な自動運転。SBドライブが狙っているのはレベル4。ルートが決まっている路線バスなどだ」

つづいて、自動運転の実現までのSBドライブの取り組みについて説明した。「公道実証に向けた段階的レベルアップを目指している段階。最初は閉鎖空間での実験。東京大学柏キャンパス内で実験を実施した。そしていま、公開試乗にこぎつけた段階。ここでのお客様の反応が重要だと思っている。自動運転だからと言って、怖がらず自然に乗っていただくことが重要。実際に、自動運転バスに乗ってしばらくすると、お客様はスマホをいじりだす。つまり、怖くないということだ。そうなるとバス会社の方も興味を持ってもらえる」

■自動運転をめぐる業界の動き

次に佐治氏は、自動運転をめぐる業界の動向について説明した。「自動運転に取り組む企業を、自動車メーカー勢力と、ITサービス勢力に分けるとすると、メーカー勢力は車両の製造、ITサービス勢力はカーシェアリングサービスなどを手掛けていて、ITサービス勢力のほうがユーザー囲い込みという点では先行している。例えばUberなどだ」

「自動運転は日本の交通事業者に受け入れられるか。地域のバス事業者が、本当に自動運転バスを受け入れるのかどうか。日本におけるバス事業は厳しい状況だ。全国の7割の路線バス会社が赤字であり、人件費がコストの5割を占める。にもかかわらずドライバー不足が深刻化している。だが、公共交通なので簡単になくせない」

■SBドライブとは

次に佐治氏は、SBドライブの事業領域や強みをアピールした。あらためて、SBドライブとは、「クルマに必要になるITサービスを作る会社。クルマそのものは作らない。バス事業者など、交通事業者に対して、車両とシステムをパッケージで提供していきたい」

「SBドライブのコアテクノロジーは3つ。5G通信技術・ビッグデータ処理・AI。まず5G通信技術について。自動運転バスには遠隔監視が不可欠。車内外の状況をリモートで見守る必要がある。それには5G通信が欠かせない。ビッグデータについては、ヤフーの移動関連ビッグデータを交通最適化のシミュレーションに活用する。AIについて。車内の異常をAIで検知し、監視者の負担を減らす仕組みがある」
SBドライブのコアテクノロジー

「沖縄の実証実験では、遠隔監視システムを用意した。ドアの開閉や燃料、車速の推移、車内カメラのモニタリング機能もある。5Gを利用した運行管理だ。そして、AIで乗客の危険状況を察知する。路線バスにおいては、乗客が立ち上がった時に事故が多い。AIによって乗客が立ち上がる瞬間を検知して車内安全につなげていく」
遠隔監視システムの画面

■自動運転バスの実用化に向けて

「SBドライブは現時点で4地域と協定締結している。地方都市、中山間地域、観光地など、地域の特性に合わせて現場からニーズを吸い上げている。そして2018年の実証実験については、30以上の自治体から応募をいただいた。自動運転バスに対する期待の高まりを感じている」

「自動運転バスのビジネスチャンスは、(有人運転バスの)人件費と、自動運転バスの運行管理システムの運用費と車両改造費との差額でビジネスが成り立つこと。これが基本のビジネスモデルだ」
自動運転バスのビジネスチャンス

「(実用化に向けて)一番重要なのは安全対策。SBドライブでは、走行状況を限定することでリスクを下げていく。走行スピードを低速に限定したり、ルートを限定して走らせるなどだ」

「そのほかにも、実用化に向けては沢山の課題があり、一筋縄ではいかない。もどかしく見えるかもしれないが一歩づつ着実に進めていく」

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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