ホンダは10代目『シビック』シリーズを9月29日から日本国内で販売を開始すると発表した。開発責任者を務める本田技術研究所四輪R&Dセンターの松本英樹主任研究員はCセグメントトップクラスの操る喜びを目標に掲げ、『OTOKOMAE』を合言葉に開発にあたったと語る。
Cセグメントトップクラスの操る喜びを目標にしたことについて松本主任研究員は「この極めて高い目標を掲げた理由は2つある。ひとつは世界のCセグメントの競合車の飛躍的な進化に対する危機感。もうひとつは近年のシビックは保守的になったのではないか?というお客様の生の声」と明かす。
また「従来の延長線上では世界には通用せず、お客様の期待を超えるシビックは提供できないと考え、従来の枠を大きく超えた企画を提案した。いま一度、シビックらしい大胆なチャレンジで、存在感を一層際立たせ、世界中のお客様に喜んで頂きたいという強い思いがあった」とも振り返った。
そこで「この高い目標にチャレンジする上で、開発チームでは『OTOKOMAE』を合言葉にしてきた。スタイリング、佇まいの美しさを追求するのはもちろんのこと、メンタリティでもチームをひとつに導いてきた大切な言葉。すべての意志決定においてOTOKOMAE、つまり一切の妥協をしないこと。開発チームはもちろん、時には評価する側に対してもOTOKOMAEの判断を求めてきた」という。
具体的には「通常のモデルチェンジの枠を遥かに超えて、クルマ造りを根本から見直す必要があった。まずクルマの基本性能であるプラットフォームを刷新し、開発の初期段階からタイプRも想定した骨格造りを行った。これをコア要素としてシビック史上で初めてセダン、ハッチバック、タイプR各モデルをひとつのチームで開発し、世界で最も厳しい道路条件が揃ったドイツのアウトバーンやニュルブルクリンクで徹底的に鍛え上げた」と話す。
実際、先代までのシビックは、北米市場が中心のセダンと、ヨーロッパを主体のハッチバックとではデザインだけでなくプラットフォームも異なっていた。またスポーツ仕様のタイプRはすでに完成されたハッチバックをベースに改良を施していたことから、10代目の開発は従来の手法とは大きく異なるというわけだ。
松本主任研究員は「シリーズの同時開発は高いコモナリティ―(共有性)を持たせながら、クルマを熟成することが可能になった。例えばハッチバックやセダンにはタイプRと同じ血が流れ、よりスポーティに。またタイプR自体のダイナミック性能はベースモデルの大幅な性能向上により、効率的に向上できている」と同時開発のメリットを語る。
こうして誕生した10代目シビックの日本でのラインアップは1.5リットルターボエンジンを搭載したセダンおよびハッチバック、そして2.0リットルターボエンジンを搭載したタイプRとなっている。価格はセダンが265万320円、ハッチバックが280万440円、タイプRが450万360円。
セダンはCVTのみだが、ハッチバックには6速マニュアルも設定されている。松本主任研究員は「当初はハッチバックの6MTを導入する計画はなかったが、ドライブをしたいと、チームが懇願し導入した経緯がある」と明かす。というのも「CVTしかなくてつまらないと日本のお客様からずっと聞いてきた。そこで我々も乗りたいが、どちらかというとお客様の声に応えたいというのが一番だったから」とのことだ。