【個性派ミニバン比較 第2回】やっぱり3列目で選ぶ?シートアレンジ・使い勝手は…岡本幸一郎

試乗記 輸入車
「個性派ミニバン比較」第2回は、シートアレンジ・使い勝手を検証する
「個性派ミニバン比較」第2回は、シートアレンジ・使い勝手を検証する 全 40 枚 拡大写真

家族使いはもちろん、ライフスタイルにもこだわりを持つ人にこそ、ぜひ目を向けて欲しいのが、輸入車の3列シート車だ。シトロエン『グランドC4ピカソ』、VW『ゴルフトゥーラン』、BMW『2シリーズグランツアラー』の個性派3台に、国産ミニバンを代表して日産『セレナ』を加え、モータージャーナリストの岡本幸一郎がレポートする。第1弾に続いては、「居住性・ユーティリティ・質感」を含めた使い勝手にフォーカスする。

◆絶大な開放感とシトロエンらしいユニークさが光る…シトロエン グランドC4ピカソ
岡本幸一郎氏(写真はシトロエン グランドC4ピカソ)
各部にこのクルマならではの独創的なつくりが見られて興味深い。乗り込んでまず感じるのが、他のクルマでは味わうことのできない絶大な開放感だ。パノラミックガラスルーフに加えてルーフ前端まで回り込むように広げられたフロントスクリーンやAピラーに配された大面積の三角窓は、良好な視界にも寄与している。

12インチのセンターメーターの下に配した7インチのタッチスクリーンや、ステアリングホイールに設けた多数のスイッチ類により、各種機能をここで集約して調整できる。また、コラムシフトを採用しているのも特徴だ。

車内のつくりもいろいろ特徴的。1列目のシートレールをフロア面にめり込ませたおかげで2列目の足元はより広々としているし、その下には隠れた収納スペースがある。サイドステップの段差もなく乗降性にも優れる。

2列目にはほぼ対等なサイズの3人分の独立したシートが並ぶ。欧州車にはちらほら見られるが、こちらのほうが便利という人は少なくないはず。3列目は広くはないが、いざというときには十分に使える空間が確保されている。

◆そつのない合理的なパッケージングと高い質感…VW ゴルフトゥーラン
岡本幸一郎氏(写真はVWゴルフトゥーラン)
万人向けのクセのないスタイリングと控えめなキャラクターは、むしろトゥーランにとっては持ち味といえる。そのイメージのとおり、クルマ自体もあらゆるところがそつなくまとまっている。

従来型よりも拡大したとはいえ、けっして大きくないボディサイズの中で無理することなく3列目まで7人の乗員が不満なく座れる空間を確保しているのはたいしたものだ。着座姿勢は立ち気味ながら頭上空間に余裕があり、前席の頭上にはシーリングトレーもある。

2列目には3人分の独立したシートが配されているので、中央席も有効に使える。

また、運転席と助手席の背面に設置されたテーブルが、使える面積が減らないようドリンクホルダーが横にせり出す仕組みになっていたり、タブレット等が置けるようテーブル面を斜めに固定できるようになっていたりと、よく考えられていて感心する。

写真はエントリーグレードの「コンフォートライン」をベースに装備を充実させた「テックエディション」という限定車だが、2代目トゥーランは全体的に車格のわりに質感が高まったのも特徴といえる。

◆視覚面での高級感も備えた、さすがはBMWの一員…BMW 2シリーズ グランツアラー
BMW 2シリーズ グランツアラー
BMWが初めてこうしたミニバンタイプの実用車を手がけたのが同車だが、BMWの一連のエントリーモデルとの共通性の高いインテリアデザインや、わずかにドライバー側に向けられたBMW流のインパネ、シフトわきにダイヤル式のコントローラーを設置した「iDrive」など、まぎれもなくBMWの一員であることを感じさせる。

その他の車内のつくりはいたってオーソドックスで奇抜なところはとくにないが、今回の中では、さすがはプレミアムブランドのBMWらしく、見た目の高級感では一歩抜きん出ている。

ドライビングポジションや車内の全体雰囲気はもっとも乗用車的で、今回の中では車高が低く、乗員の座る位置も全体的に低めとなっている。ルーフの大部分を開口部としたガラスルーフは前半をスライドさせることも可能。Aピラーの付け根に配された小さな三角窓は良好な視界にも寄与している。

2列目は40:20:40の3分割可倒式で、荷室の後端にあるスイッチで3列目でなく2列目を倒せるようになっているのも便利。3列目の居住スペースや荷室は今回の中でもやや狭めだが、そこは割り切っているようだ。

◆圧倒的に広い室内空間とセレナならではの装備も多数…日産 セレナ
岡本幸一郎氏(写真は日産セレナ)
今回、日本を代表するミニバンとして持ち込んだセレナは、圧倒的に広い室内空間に両側スライドドア、多彩なシートアレンジと、欧州勢とは異質の要素をいくつも持ち合わせている。こうしたパッケージが日本で主流となっているのは、日本での使われ方に合っているからであるのはいうまでもない。

スライドドアなら狭い駐車場でも乗り降りしやすく、箱型ボディなら3列目まで成人男性でも不自然な体勢をすることなく座れる。車内はフロアが高く、アイポイントももっとも高い。それでいてベルトラインが低めで、運転席と助手席は開放的で視認性にも優れる。

シートアレンジのバリエーションの豊富さは、なみいる国産ミニバンの中でもセレナの強み。中でも「マルチセンターシート」はセレナの特徴的な装備だ。

3列目は左右に跳ね上げて格納するタイプで、3列目シートにも前後スライド機能があるのは同じくセレナの特徴であり、3列フル乗車しながらも後端の荷室を必要に応じて広げることもできる。また、テールゲートの上半分のみを開閉できるのもセレナならではである。

続く第3回では、走り、乗り心地、安全性について検証する。

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《岡本幸一郎》

岡本幸一郎

1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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