スズキの新型『GSX-R1000R ABS』をサーキットにて試乗したが、オール新設計の車体は応答性と俊敏性が向上している。ストレートからコーナーへ進入していくとき、ブレーキングで意識的に車体姿勢を整えなくとも、スッと車体を寝かし込んでいけるイージーな感覚があるのだ。
試乗後、車体設計担当の小林浩二さんにそれを告げると「そういう乗り味を狙いました!」と答えてくれた。
「上手なライダーはコーナーの手前でキチッとブレーキングができ、車体を曲げていくための姿勢をつくれるのですが、新型ではブレーキングにそれほど気を遣わなくとも、楽に一次旋回に入っていけると思います」
開発チームは、今回の新型でディメンションを一新している。
ホイールベース 1405mm→1420mm
キャスター 23°50'→23°20'
トレール 98mm→95mm
装備重量 205kg(ABSモデル)→203kg
「エンジンの出力がものすごく出ているので、ホイールベースを伸ばして対応しています。マシンがライダーにやさしくなればなるほど速く走ることができる、と我々は考えていまして、過激で扱いづらい車体にならないよう設計しました」(小林さん)
1つキモとなっているのは、スイングアームの長さだ。最終的に35mm伸ばした。2次減速比を含めて、最終段階まで熟考したという。
「結果的に、コーナーの立ち上がりでより早くアクセルを開けられるようになりました」(小林さん)
つまり、コーナーからの脱出が早くなり、ストレートでの加速もより鋭くなって速度を高めていける。
新型GSX-R1000Rはエンジンを6°後傾させたことによってエンジン前後長が短くなり、フロントアクスルからスイングアームピポットまでの距離を20mm短縮している。エンジンを前輪に近づけることでフロントまわりのフィーリングとライダーに届く情報量を増やすことに成功しているが、スイングアーム長を伸ばすことでハンドリングを過激すぎるものにせず、小林さんの言う“ライダーにやさしい”ものとしているのだ。
200ps近いパワーを発揮する1000ccスーパースポーツでありながら、やさしさ=扱いやすさを追求。それが速さに結びついた。