社有車やスクールバスで、車両は自社で保有するものの、運転は外部からの派遣でコスト削減を図るという例は珍しくない。
しかし、派遣元が運送事業者などいわゆるプロのドライバーを抱える企業であったとしても、運送事業と派遣では、まったく運転者のチェック体制が違うことをご存じだろうか。
22日、青森県八戸市の八戸第一養護学校のスクールバスが運行中に自損事故を起こした。運転者は車両運行管理業務専門会社から派遣されていたが、24日には警察による事故後の呼気検査でアルコールが検出されていたことが判明した。運送事業で運行管理業務といえば、道路運送法や貨物自動車運送事業法に基づく、事業用自動車の運転者の運行の安全を確保する業務のことだ。しかし、派遣された運転者は事業用自動車で義務付けられている点呼を受ける必要がなかった。
例えば、運送事業者であれば、運転者へのアルコール・チェックや免許証の確認、健康確認などを、始業前の点呼で必ず行うことが定めらている。その対象は、バス、タクシーの運転従事者だけでなく、郵便配達や毎日のように行われるごみ収集の運搬車両の運転者も漏らさず行わなければならない。
しかし、スクールバスは養護学校の所有の自家用車、いわゆる白ナンバーだ。運転者が雇用されている車両運行管理業務専門会社は、養護学校を派遣先とした派遣会社に過ぎない。養護学校からすれば専門会社に報酬を払ってプロドライバーを雇っている安心感を買っているつもりでも、法令上はバスに児童生徒を乗せた報酬を受け取るわけではないので、運送事業には含まれない。そこに派遣先と派遣元の意識のギャップがある。
派遣を受けることはコスト負担の軽減には役立つが、まったく運行管理から開放されるということではない。派遣会社に任せているから事故責任からも免れるとは、必ずしも言えないことを車両の所有者は知っておく必要がある。