小田急線、列車延焼火災で車両を公開 屋根の一部に変形した焦げ跡

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小田急電鉄は、10日に小田急線で起きた沿線火災による列車を公開した
小田急電鉄は、10日に小田急線で起きた沿線火災による列車を公開した 全 6 枚 拡大写真

東京都渋谷区代々木のボクシングジムが入る建物からの延焼で小田急電車の列車の一部が焼けた火災で11日、小田急電鉄は車両を公開した。

世田谷区の喜多見検車区に運び込まれた車両は、地上から見る限り火災が起きたとは、まったく思えないステンレス製ボディの銀色を輝かせている。しかし、壁面階段を登り、上から車両を見下ろすと、まるで塗装をはがしたような焦げ跡を残した屋根のある車両が確認できた。

10日16時5分頃、小田急線参宮橋駅~代々木八幡駅の沿線にある3階建ての建物から出火した火災は、約6分後に現場付近に差し掛かった本厚木発新宿行き普通電車(8両編成)に延焼し、屋根に炎を乗せてゆっくりと動く様子がニュース映像でも流れた。

焦げ跡を残した車両は、まさしくその炎をのせた車両だ。新宿に向かって2両目、7号車と8号車の連結部から7号車に向かって、ほぼ半分が焼けている。8号車の白い屋根は、7号車に移ると黒く焦げ跡が残り、ところどころ不自然に波打っている。屋根の両側にある雨水が流れる溝も変形し、その中には細かい炭がたまっている。

小田急電鉄によると、ステンレスボディは燃えないが、屋根一面は、2~3センチの厚さでポリウレタン樹脂が塗られているという。落雷などの影響を避けるための絶縁と防水性を高めるための屋根材だ。ただ、この樹脂の中には不燃材が混ぜられ、鉄道基準にあった難燃性が保たれている。

「難燃性だから、ぜったいに燃えないというわけではないが、ある程度たてば火は消える」(運転車両部)という水準の材料だ。一部炭化した焦げ跡は、この屋根材ではないかと推定されている。

確かに、列車内部は炎を乗せて、ゆるゆると進んだとは思えないほど、いつも通りの車内だった。通常の車両と違うと思わせたのは、屋根の燃えた7号車に入った時だ。連結部の扉を開けると、その車両だけに樹脂が燃えた化学性の刺激臭が漂っていた。

しかし、天井や窓、パネルが取り外された空調の吹き出し口を見ても、火災によるすすなどの汚れはまったくない。屋根の火災から車内は隔絶されていたことを示すものか。

消防などによる11日の現場検証は終わって、同社はその結果を待つ。また「沿線火災による列車への影響は過去に例がない。今後はこれを教訓として、どういう対応ができるのか検証していく」(CSR・広報部)と話す。

《中島みなみ》

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