【ヤマハ 電動アシスト車いす 改良新型】「片流れ制御」を追加…既存ユーザーの声を反映

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ヤマハ発動機 JWウィング・JWX2を発表。
ヤマハ発動機 JWウィング・JWX2を発表。 全 20 枚 拡大写真

ヤマハ発動機は21日、電動アシスト車いす『JWスウィング』、および同アシストユニット『JWX-2』を発表した。新型の最大の特徴は、傾斜地での片流れ制御が追加されたことだ。

ヤマハ発動機は、車いすの電動ユニットを1995年から発売している。アシストユニットも翌年1996年には発売しており、福祉機器のメーカーとしても20年以上の歴史を持つ。当時、車いすは、利用者の体型などに合わせて購入または利用するのがメインで、ヤマハ発動機の事業も既存製品に後付できるユニット製品からスタートしている。高齢化、介護需要の高まりから現在は、完成車(電動フルサポート車も含む)も製造・販売している。

ヤマハ発動機の車いすは、「国内では年5000台規模の出荷状況となり、市場は堅調に推移している」(SPV事業部JWビジネス部の米光正典部長)という。海外では約2000台の出荷でこちらも成長傾向にある。とくに海外では、電動フルサポートに加え、電動アシストタイプの市場が拡大しているという。

同社では、フルの介護を必要としない車いすユーザーが、さらにアクティブに活動する場を求め、電動アシストタイプの国内市場も伸びると予想し、またそのようなユーザーをサポートすべく、既存ユーザーの声を反映する形でJWスウィング、JXW-2を発表した。

要望で多かったのは、傾斜地ではまっすぐ漕いでも斜面の方向に車いすが流れてしまう「片流れ」の対策、車等での持ち運びのための軽量化、アクセサリー類やデザインの強化、などだ。これらの声を参考に、電動アシスト車いすとしては世界初(同社調べ)という片流れ制御機能を追加した。

通常、道路や歩道は、排水のためかまぼこ型かわずかに傾斜した形になっている。そのため、屋外での移動は常に片流れを意識した操作を強いられる。片流れ制御を有効にすれば、斜めの路面でもまっすぐ両輪を漕ぐことができる。記者発表会で体験試乗をしたが、車いすに乗ったことのない記者でも、左右に4度傾いた斜面を水平に進むことができた。制御はジャイロセンサーと速度センサー、および利用者の体重(設定値)によって左右に発生させるアシストトルクを変えることで行う。

アシスト距離制御機能も改良された。これは、屋外、屋内での操作をしやすくするため、ひと漕ぎで進む距離を制御する機能だ。屋内では同じ力で漕いでも進む距離を短くし、屋外などでは長く進むように切り替える。この制御範囲を広げて(9段階)、より利用者の好みや状況に合わせることができる。

電動アシスト車いすは、自走できるユーザーが前提となるが、中には腕の力が弱い人、出せない人もいる。そのため、ハンドリムが漕ぐトルクを検出する不感帯(あそび)をさらにチューニングし、感度を30%ほど向上させた。発表会にゲストとして登場した、JWスウィングのユーザーでもあるeriさんも「障害により腕もあまり強い力がだせません。自分はもともとアクティブな方で買い物など出かけることが好きなのですが、このアシスト機能は、一人でも外出できますし、より自分らしさが出せるようになったと思います。今後は、海外旅行にも行ってみたいと思っています」とコメントする。

片流れ制御やアシスト距離制御の他、アシストトルクの設定などユーザーの好みや状態に合わせた細かい設定は、「Smart Core」という機能によりパソコンの専用ソフトから行うことができる。スマホからできると便利なのだが、車いすの制御は医師や専門家の指導のもと行うことが推奨されるため、現在はこのような仕様になっている。

記憶できるモードは2種類あるので、基本的な個人設定ができれば、屋外用と屋内用といったプリセットも実用的には大きな問題はないそうだ。ヤマハ発動機では、市場の声を聞きながら、スマートフォン対応やプリセットなどは検討していきたい(JW技術グループの野村真志開発プロジェクトリーダー)とのことだ。

現在、車いすには縁がないと思っていても、高齢化社会では親の介護で他人事ではなくなることがある。高齢者は転倒の骨折によって、他に障害がなくても車いすが必要になることが少なくない。電動アシスト車いすの存在は知っておいて損はないだろう。
通常車いすは、道が横方向に傾斜している場合、傾斜によるトルクが発生し傾斜方向に曲がっていく…

《中尾真二》

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