【川崎大輔の流通大陸】獲得すべき市場、アセアン自動車アフターマーケット

自動車 ビジネス 海外マーケット
タイの中古車ディーラー
タイの中古車ディーラー 全 6 枚 拡大写真

獲得すべき市場へと変化するアセアン

日本が親、アセアンが子と見ている気がする。確かにアセアンは日本を見習わなければならない部分もある。しかしながら現在のアセアンの「活気」、「スピード感」は、日本が見習うべき点だ。

時代がたち、日系企業のアセアン進出の目的も変化してきた。以前は製造業のコスト削減がメインの市場であった。しかし今はそういった目的は減少傾向で、販売拡大にシフトしている。これはアセアン各国にいえることだが獲得すべき市場となってきたためだ。日本国内の消費が年々減少傾向を続ける中、多くの自動車メーカーが目を向けているのがまさにアセアン市場となる。

インドネシアの自動車販売と見てみると波はあるが、為替相場の安定、政権の安定などの要因で2000年以降、6%前後の市場成長で右肩上がり2008年から2013年までの2年間で2倍の急成長をしている。2014年に国内新車販売台数は約121万台。これ以降タイを抜いてアセアン市場最大の新車市場となり盟主の地位を獲得した。世界4位、アセアン最大の2億5,000万の人口と自動車購入可能な中間層が増加。1人あたりGDP約3,600ドルを超えたことでモータリゼーション期に突入した。

タイの首都バンコク。朝夕のラッシュ時は車で道路が埋め尽くされる。クラクションの音とごった返す車を数センチの幅でかわして走る大量のタクシー。タクシーのほとんどはトヨタのカローラ。自動車全体車シェアの90%が日本車で埋め尽くされている。また、タイは輸出と国内需要が半々くらいになっており、タイ国内の内需以上の生産を行い「輸出拠点」となりアセアンのデトロイトと呼ばれるほどに成長した。

アセアンで第3位の自動車市場規模のマレーシアは、アセアンで唯一、自国(マレーシア生産)の自動車メーカーを持つ国として、本格的なモータリゼーション期に突入している。

◆ 消費というキーワード

日本市場はバブルが崩壊して以来、20年近く成長をしてないのは事実だ。更に加速する人口減少、そして少子化と高齢化、更に生産人口も減り内需縮小が確実だ。何がいいたいかといえば、近い将来日本は外需の獲得が必要だ。かなり前から、日本の自動車保有台数は約6,000台を推移している。1億2,000万人の人口の日本を見ると、先進国は2人に自動車1台で飽和の状態となっている。この自動車保有台数が6,000万台(2人で1台)で止まっているという事実に非常に重要な意味が隠されている。

日本の自動車の耐用年数は平均で12年。6,000万台を12年で割ると、500万台となる。実は日本で1年間に販売される自動車の台数が2000年以降500万台前後で止まっている。これが日本を含む先進国の悩みだ。つまり市場で売れる数が決まっているということ。

自動車を購入するには、大きく2つの需要がある。新規需要と代替え需要となる。しかし、市場が飽和したため、12年後に買い換える代替車しか、販売されない。皆様も実感があるかと思うがまさに経済成長が止まるということだ。昔は、先進国も自動車が欲しくてたまらなかった。しかしすべての人々に自動車が行き渡ってしまった。一方、アセアンにはまだ自動車が飽和していない。アセアンの急成長は日本から失われてしまった、より良い生活をしたいという人々の素朴な意欲やハングリー精神が根元にあることは間違いない。これが大きな消費市場となる。ただし、注意しなくてはいけないのは、アセアンがこれから日本の水準になるまでに長い年月がかかるかといえば、そうではないということ。日本がたどってきた年月よりも非常にスピーディーな成長を遂げることは間違いない。

◆日系企業主導のアフターマーケット

日本市場ではなく、アセアン市場に話を戻すと、タイやインドネシアでは日本車の市場シェアは既に90%を超えている。周辺のアセアン諸国においても日系メーカーを中心とした自動車市場が拡大してきている。新車販売では既に一定規模の現地財閥を中心としたプレーヤーが存在しており、ブルーオーシャンとはいい難い状況になってきている。そこでこれから注目するのが、アセアン市場における日系企業主導のアフターマーケットビジネスだ。

自動車アフターマーケットとは新車販売後に発生してくる自動車附帯ビジネスの総称だ。大きく中古車、自動車整備、カー用品・補修部品、自動車金融、その他関連サービスの5つの分野で構成される市場である。中古車市場に含まれる主な参入ビジネスとしては新車ディーラー(中古車部門)、中古車ディーラー、中古車輸出事業、オートオークションなどを指す。自動車整備市場は文字通りの整備業者で修理や補修メンテナンス、最近では外国人整備士の紹介などの需要が急増している。カー用品・補修部品市場はカー用品販売、交換部品、中古やリビルドのリサイクル部品の販売や輸出事業など。自動車金融市場はオートローン、自動車保険、更に賃貸事業の自動車リース、レンタカーなどが含まれる。最後のその他関連サービスとは、自動車情報誌、中古車サイト、顧客管理システムなどが主なビジネスとなっていた。しかし最近ではネット会社主導の自動車関連ビジネスへと変化してきている。多くのネット会社を中心として自動車ビジネス系プラットフォームが立ち上がり、更に配車アプリを始めとする、各カテゴリーでスタートアップが勃興している。これらの一連の取引を含む市場を自動車のアフターマーケットと呼ぶ。

アセアンにおける自動車アフターマーケットは、市場を把握することが非常に難しい。しかし新車市場の成長に比例してアセアンのアフターマーケットが急速に伸びていくことは間違いない。そして、アセアン地域の人々の所得向上とともに、「安かろう、悪かろう」から「多少高くても品質重視」と考えにシフトしていく。

アセアンにおける自動車アフターマーケットは、フローからストックへ、そして新車を販売して収益を得る形からアフタービジネスでの収益へとシフトしていく。これからアセアンで自動車アフターマーケットの市場拡大が加速されていくことは間違いない。

<川崎大輔 プロフィール>
大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年より自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る