電気モーターに生きる内燃機関の技術…トヨタ電動化技術

自動車 ビジネス 企業動向
4代目のステートコイル。電線が四角い
4代目のステートコイル。電線が四角い 全 6 枚 拡大写真

トヨタが28日に開催した電動化技術に関する記者説明会。解説されたモーター、バッテリー、そしてパワーコントロールユニット(PCU)のうちモーターについて詳しく解説する。

【画像全6枚】

モーターの性能を決めるのは、大きさやコイルの巻き数くらいで、あまり技術投入の要素が内容にみえるが、話をきくとそうでもなかった。まず、電動化車両の場合、モーターは小型で大出力(大トルク)なものが理想となる。ハイブリッドやPHEVの場合、エンジンやトランスミッションが残るので、小型モーターの要求は高い。

しかし、小型モーターは一般的に回転数が上がるが、トルクは細くなる。そのためプリウスではモーターに減速ギアを組み込んでいる。どれくらい小型化できたかというと、初代『プリウス』で最大出力30kW、モーター容積5.1リットル、最高回転数5600rpmだったものが、4代目では53kW、2.2リットル、17000rpmとなっている。容積で半分以下、出力は約1.7倍だ。

モーターの効率を少しでも上げるため投入された技術もいくつか説明された。

モーターのローターの周囲を取り囲むステーターコイルは丸い銅線ではなく、平角線(断面が方形の銅線)を使い、丸線が作る隙間をなくし、銅線の密度を上げる。モーター本体に対するコイルの占積率は1.3倍(初代、4代目比)よくなっている。また、ローターに内蔵する永久磁石の配置を最適化し、より多くのトルクを生み出すようにしている。この技術は、そのままモーターの出力を上げるのではなく、利用する永久磁石の量を減らす技術として利用している。同じ出力でも、重量を減らす効果と、強力な永久磁石に不可欠な重希土類(レアアース)の削減につながっている。

プリウスの場合、駆動用のモーターと発電用のモーター(ジェネレータ)を同軸に配置し、プラネタリギアで出力軸を回していたが、モーターを小型化し、並行配置することでギアのかみ合い数を減らした。これはモータートランスアクスルの機械的なトルク損失を低減する。また、モーター内を油室化することで、ローターのグリスシールなどを廃止した。これも機械ロスを減らすことになる。油室化するというのはモーター全体を囲っているハウジングの中にAFTオイルを浸し、回転するモーターがAFTを攪拌しハウジング上部のオイルキャッチタンクがモーター本体にオイルを散布する。オイルは充填されているわけではないが、ローターの軸受けのグリスは不要となる。また、モーターの冷却効果も期待できる。

オイル冷却は、モーター内部のローターにも利用されている。エンジンのクランクシャフトでも、中空構造にして冷却のためオイルが流れるようにしているものがある。プリウスのモーターもローターのシャフトは中空になっており、磁石の入ったローター内部にもオイル通路がある。シャフトのオイルは遠心力で外側の磁石を冷やしながらステーターコイルに吹き付けている。

じつは磁石は高温になると磁力が弱くなる。モーターのオイル冷却は理にかなっているそうだ。

電気モーターだが、内燃機関のノウハウが生きている興味深い技術といえるだろう。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

+ 続きを読む

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. マツダ『CX-60』大規模刷新へ、内外装からエンジンまで…ラージ商品群4車種をテコ入れ
  2. 三菱『パジェロ』3階層のシリーズ展開へ…軽も登場、壮大なシリーズ化が始まる
  3. ホンダ『NSX』が現代のスーパーカーに転生…JAS×ピニンファリーナ『テンセイ』がイタリアでワールドプレミア
  4. 日産『セレナ』次期型は2028年登場か!? 第3世代e-POWER搭載へ
  5. 【スズキ ジムニーノマド 新型試乗】ノマドに乗るならやっぱり「ATがオススメ」な理由…中村孝仁
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. EU「欧州製EV」優遇へ、産業加速法を審議---売れるEVと売れないEV
  2. EV・欧州減速=日本が正しかった、では見えてこない欧州市場と中国の戦略[インタビュー]
  3. 【セミナー見逃し配信】※プレミアム・法人会員限定 欧州自動車産業の次の一手、欧州の現場で何が起きているのか~EV減速局面・SDV/AIへの移行・中国勢の浸透~
  4. NITTANのエンジンバルブ技術、インドで実証へ…経産省グローバルサウス事業に採択
  5. CASE革命と電動化、次世代の自動車部品
ランキングをもっと見る