電動化&自動運転に向けたサプライヤーの技術を体感【Vision Zero Days Japan】

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Vision Zero Days Japan
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ドイツのメガサプライヤー、ZFの日本法人が開催した先進技術試乗会「ZF VISION ZERO DAYS」。レベル4実現のベースとなるシステムを実装したテストカーや次世代シティコミュータ向けのシャシー、電動パワートレイン技術などがメインだが、それ以外にもさまざまなテクノロジーを搭載したテストカーが用意されていた。

そのすべてを試すだけの時間はなかったが、3車種をドライブないし同乗で体感することができた。ひとつはブレーキブースターから真空倍力装置を廃して電動ブースター化した次世代型ブレーキ・バイ・ワイヤのシステム。中国の長安汽車のオリジナルSUV『CS75』だ。

運転したのは他メディアの記者。同乗したエンジニアがドライバーに「ブレーキを強く踏んでみてください」とうながし、記者が急制動をかける。その瞬間、ドーンとものすごいショックを伴うほどの強さでブレーキがかかった。このブレーキのピックアップは調整が可能で、マイルドな利きにもできる。強い利きを最初に試させたのは、レスポンスを実感させるためだったのだという。

「自動運転および電動化に対応するための技術です。ブレーキの引きずり抵抗がごく小さいため、運動エネルギーの100パーセント近くを電力として回生できます。また、バイワイヤが失陥したとき、普通のブレーキだと倍力装置が作動せず、目いっぱい踏んでも制動力不足になりますが、このシステムだと普段と同じように利きます。応答性の良さは自動運転にも有用で、システムの判断から実際の作動までのタイムラグはほとんどありません。次世代車用のシャシー技術としては、こういうものも必要になるのではないかということで研究しています」(ZFのエンジニア)。

次はフォードの大型ピックアップトラック『F150』。全長5.4m、全幅2m、ホイールベース3.2mと、日本に持ってくると超弩級というサイズ。そのF150で車幅に対する余裕がほとんどないクランクコースに挑むというプログラムだった。

筆者は2トントラックのオートテストならやったことがあるが、このサイズでボンネットありというクルマの運転経験はほとんどない。ここまで前に出てからハンドルを切っても転回が間に合うのかなどと仰天しながらコースを1回通過。

ところがZF版のF150の本領はそこではなかった。リアに12度もの逆位相転舵が可能なシステムが装備されており、それをオンにして再度トライ。オンの状態だとまさに消防自動車の小型版と言うべき驚異の小回り性能で、逆の意味で運転に戸惑う。トヨタがかつて販売していた大型SUV『メガクルーザー』も後輪操舵を備え、超小回り性を実現していたが、インパクトはそれ以上に思えた。

最後は『BMW740e』。これはすでに市販されているプラグインハイブリッドだが、後輪操舵とトルクベクタリング制御のある、なしでパイロンスラロームのやりやすさの違いを体感することができた。もちろんありのほうが格段にスムーズなドライビングが可能である。

今、自動車業界は電動化、運転支援システム、コネクティビティ、それらを支えるシャシー技術など、開発課題が山積みになっている。それらの技術開発において、サプライヤーの役割は重要になるばかりだ。完成車メーカー間の競争だけでなく、部品メーカー間の競争もますます興味深いものになるだろうというのが、試乗後の所感だった。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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