JR東日本は12月5日、「ドップラーレーダーを用いた突風に対する列車運転規制」を、12月19日10時から実施すると発表した。
日本海縦貫線の一翼を担う羽越本線(新津~秋田間271.7km)では、2005年12月25日、砂越(さごし)駅(山形県酒田市)~北余目(きたあまるめ)駅(山形県庄内町)間で、局所的に突風を受けた特急『いなほ14号』が脱線・転覆し、死者5人、負傷者33人を出す痛ましい事故が発生した。
この事故を受けたJR東日本は、突風対策として、風速20m/s(従来は25m/s)で速度規制、25m/sで運転中止とする運転規制値の見直しや風速計の増設、防風柵の設置、徐行運転といった対策を行なってきたが、より科学的な対策として、2006年2月にはJR東日本研究開発センター内に防災研究所を設立。2007年1月には、余目駅(山形県庄内町)にドップラーレーダーを設置し、気象庁の気象研究所と共同で、レーダーを活用した突風観測の研究開発を進めてきた。
ドップラーレーダーは、上空にある雨などの降水粒子からの反射波を使って、その粒子の移動速度や方向を「ドップラー効果」により観測する装置。
ドップラー効果とは、たとえば、救急車やパトカーなど、サイレンを鳴らす車両が接近すると音がだんだん高く聞こえてくるが、遠ざかると次第に低くなるような特性を言う。ドップラーレーダーは、その特性を活かして、レーダーに接近する風と遠ざかる風をペアで観測して、「渦」と呼ばれる突風の探知・追跡を可能にする。
これにより、渦の進路予測範囲を算出することができるようになり、それが線路と重なる場合は、該当区間を指令室の端末に表示。指令員はその情報に基づき、運転士に対して無線で運転中止を指示する。このような方法で行なわれる列車運転規制は世界初だという。
2008年1月以降は、毎年11~3月に気象レーダーを通じて送られる気象情報を活用した運転規制が、秋田・山形・新潟県内の日本海沿いで広範囲に行なわれてきたが、今回始まる新しい運転規制では、2011年11月に酒田市内に設置された高性能の新レーダーを活用し、その中心から半径30km圏で規制を実施するとしている。