アルファロメオ ジュリア はアルファのDNAを受け継ぎ、タイムレスなデザインを目指した[デザイナー&CEOインタビュー]

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アルファロメオ・ジュリア
アルファロメオ・ジュリア 全 16 枚 拡大写真

FCAジャパンが輸入するアルファロメオ『ジュリア』は、アルファロメオ久々のミッドサイズセダンである。デザインや販売戦略について話を聞いてみた。

◇新プラットフォームでもアルファのDNAを受け継ぐ

ジュリアは“ジョルジョ”という新しいプラットフォームで開発された最初のモデルだ。このプラットフォームは縦置きエンジン、後輪駆動のレイアウトを採用することで、「ジュリアにダイナミックかつスポーティなプロポーションをもたらしている」とは、アルファロメオのエクステリアチーフデザイナー、アレッサンドロ・マッコリーニ氏の弁。

そのエクステリアデザインは、「アルファロメオのDNAともいうべき、独創的でありながらも、シンプルさを強調。デザインの開発段階で、ダイナミックなフロントデザインを取り入れるため、フロントオーバーハングを縮小。その結果長いボンネットが実現出来た」という。また、「ボンネットから一体となったAピラーによってフロント全体を素晴らしいプロポーションに仕上げている」と述べる。

ジュリアの高性能バージョン、クアドリフォリオは500ps以上のパワーと300km/hのスピードを発揮するハイパフォーマンスカーだ。そのためフロントとリアのエアロダイナミクスパーツは、「空力性能とハンドリング性能に大きく関わる。これらのパーツは決して見た目のスタイリングのためではなく風洞実験による結果から導き出されたデザインだ。我々は結果に基づいた機能性を追求しそれをデザインしたのだ」とコメント。

今回のジュリアは、最初にクアドリフォリオを開発したのち、「通常モデルのジュリアの開発を始めた。しかしそれは決してジュリアクアドリフォリオの性能を制限するという発想ではなく、よりバランスが取れエレガントな雰囲気で、デザインもシンプルになり、基本性能を更に引き出せるモデルに仕上げていった」とした。

更に、「『ディスコヴォランテ』とジュリアのフェンダーラインや、『ジュリアスプリント・スペチアーレ』とジュリアのサイドのショルダーラインには近似性を持たせている。これは、我々が持つ長い歴史からインスパイアされたもの」とし、ジュリアがアルファロメオのヘリテージを受け継いでいることを伺わせた。

◇タイムレスなデザインを目指して

---:新型ジュリアのデザインではディスコヴォランテやジュリアスプリント・スペチアーレなど、アルファロメオの歴史の中でも、特にフランコ・スカリオーネが手掛けたクルマたちに影響され、そのモチーフが用いられたようです。そこで、ジュリアをデザインするにあたり、フランコ・スカリオーネをフィーチャーしたいという思いはあったのでしょうか。

マッコリーニ氏(以下敬称略):その質問は非常に難しいですね。当時とは時代も違いますしね。ただし、キーワードとしてフランコ・スカリオーネは重要です。それから、彼がデザインした『33ストラダーレ』を見ると、とても重要なデザインだと感じます。33ストラダーレはジュリアと比べると最も世界観が遠いクルマです。しかし、そのアプローチはまさに同じなのです。

そのアプローチとは、ボディのバランス感、それから機能とスタイルのバランスです。例えばサスペンション、エンジン、空力などなどの調和感がデザインにおいてとても重要だということです。

また、ドアの開き方ひとつとっても、33ストラダーレはランボルギーニとも、メルセデス『300SL』とも違う形で開きます。それはとてもアメージングで、本当にびっくりするようなソリューションなのです。そこから室内に入ると、私は背が高い(目視で180cm以上)が、きちんと座り、ドアを閉めることも出来るという素晴らしいソリューションを持っています。

このクルマが1967年に作られた時、自動車関係のデザイナーから、古いコンセプトカーだといわれたものです。しかし今日、誰もがこのクルマを覚えているでしょう。つまり、ピニンファリーナをはじめ、同じようなコンセプトで多くのクルマが作られ、どれもが博物館にあるような良いクルマです。しかし、ひとつひとつを皆が覚えているでしょうか。しかし33ストラダーレは誰もが覚えている、タイムレス、時間を超えたクルマということが出来るでしょう。

従って、フランコ・スカリオーネのこれを取ってきたということは重要ではないのです。それ以上に、まさに彼の仕事というのは、スタイルと機能の素晴らしい融合。そしてそれが時間を超えるという意味において、十分にエッセンスをもらったといっていいでしょう。

もちろん、素晴らしいデザイナーだということは言わずもがなですね。

---:そうするとこのジュリアはタイムレスなデザインを目指しているといってもいいのでしょうか。

マッコリーニ:そうです。しかしこれはいま分かるのではなく、この後時間が経って初めて証明されるのですけどね(笑)。

◇スポーツカーのセダン

---:今回このジュリアのエクステリアをデザインするにあたり、最初に考えたことはどういうことだったのでしょう。

マッコリーニ:まずボディサイズに関するリサーチをしました。それからフロント、キャビン、リアなどのボリュームの配分を考えたのです。フロントが長い場合には、全てがパーフェクトじゃないといけません。その中でスタイルをどうするかでした。

美しいものを作るという点では様々なオプションがあります。しかし我々にとって重要なアプローチは、ショートオーバーハング、ロングノーズとロングホイールベース、そして、キャビンが後ろ寄りというこのレイアウトをどうやって強調するかということでした。つまりスポーティな雰囲気をいかに醸し出させるかという意味です。言い方を変えると、ナチュラルなボディだといえるでしょうね。

---:つまりスポーティセダンのイメージですね。

マッコリーニ:そうではなく、スポーツカーのセダンと捉えてほしいです。セダンであろうとなかろうとこのクルマはスポーツカーなのです。例えば街で見かけると、ダイナミックで非常に俊敏性が高く、まるでアスリートのようなクルマだという印象を得るでしょう。

◇アルファ専売店を作るという意味

---:ジュリアをデビューさせるタイミングで、ディーラーをアルファロメオ専売店に絞りましたが、なぜそこまでこだわりをもってデビューに至ったのでしょうか。

FCAジャパン代表取締役兼CEOのポンタス・ヘグストロム氏(以下敬称略):ディーラーネットワークに関してあえてこのような選択を取ったのにはいくつか理由があります。これまでフィアットとアルファロメオを併売し、そこにアバルトがありました。その結果台数が増え、売上も伸びて、物理的に空間がもうなくなってきてしまったということがあります。

それから今後、アルファロメオはジュリアや他のモデルで、もう少しプレミアムセグメントにアプローチをすることを考えており、だからこそアルファロメオに特化したチャンネルがあるべきだと判断しました。そうすることで、より充実した顧客体験の場を提供しようということであえてこの戦略を取ったのです。

---:ジュリアの販売台数はFCAジャパンの中でどのくらいの割合を占めたいという目標はありますか。

ヘグストロム氏:まず1万台というキーワードがあります。3つのフランチャイズ、ジープ1万台、フィアット・アバルトで1万台、アルファロメオで1万台という目標です。今年は全体で2万2000台を目標とし、今後3万台を目指していきます。しかし、実数値はあまりこだわってはいないのです。むしろ我々が市場に対して積極的に攻勢をかけていくというところがポイントです。

おそらくジープも今年は1万台を超えるでしょうし、フィアットとアバルトを組み合わせて1万台をクリア出来るでしょう。そしてアルファロメオは、ジュリアと新たに投入するSUVの『ステルヴィオ』でこれまで以上に台数的には伸びていくことを予想しています。

アルファロメオは過去日本で最も多かった台数は、『147』を投入した、2000年頃でおよそ7,000台でした。少なくともそこは絶対に超えていくのが目標です。

---:ジュリアのターゲットユーザー層はどういった人たちを想定していますか。

ヘグストロム氏:これまでアルファロメオのコアファンをベースにターゲットを絞って販売してきたという経緯があります。その結果、既存のオーナーの方々は約5万人ほどいらっしゃいますので、まずは彼らにジュリアや他のモデルを提案していくことになります。

その一方で、もう少し裾野を広げても行きたのです。ジュリアは、いまドイツ勢が完全に席巻している中型セダンのセグメントにぴったりと狙いを定めたというの公の秘密です。ジュリアであれば高機能だけでなく、もっとワクワク感を提供出来ますので、中型セダンを購入検討している方には、これまでは違う価値観を提供出来るのではないでしょうか。

また、400万円を少し超えるぐらいからスタートする価格帯なので、プレミアムセグメントのクルマにはいままで乗っていないが、何となくプレミアム系のクルマが欲しいと思っている人にもすごく納得してもらえるでしょう。そして、約1100万円のクアドリフォリオは、 AMGやBMW『M3』に対して、競合車として強くアピール出来るのではないかと考えています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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