クラウド連動運行管理と先進健康管理の両面から---WILLER新木場拠点で見えた高速バス業界の先手

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WILLER EXPRESS JAPAN 新木場拠点の運行管理センターや乗務員宿泊棟
WILLER EXPRESS JAPAN 新木場拠点の運行管理センターや乗務員宿泊棟 全 16 枚 拡大写真

高速バス運行のヒューマンエラー予防施策はいま、どんなフェーズにあるか。その一端を、東京・新木場のWILLER EXPRESS JAPAN 新木場拠点で垣間見た。

新木場駅前に、バス車両59台収容できる駐車場、給油所、整備場、本社屋を構えるウィラーの一大基地「新木場拠点」。ここに、宿泊施設(男性用75室・女性用4室)や食堂、浴室、シャワールーム、女性専用パウダールームなどを備えた乗務員宿泊棟が誕生した。

その名も「新木場BASE」。ウィラーのドライバーたちが“運転席に座る時間以外”で、リラックスしながら食事や休息・睡眠をとれる空間をめざしてつくられた。

新木場BASEは3階建て。エアコン、ベッド、液晶テレビ、ミニ冷蔵庫、デスク、コンセントなどを備えた部屋が、2・3階に並ぶ。女性専用エリアは、その他のフロアと干渉しないつくりで、出入口も異なる。

脳疾患予防のためにも、仕事メシを改善

1階のカフェテリアでは、健康管理を意識したヘルシーメニューをドライバーに提供。各メニューとも、エネルギー500kcal台、脂質約22%、塩分3g未満、野菜量230gを意識し考案。日替わりで、バラエティをつけている。

ウィラーがこうした乗務員宿泊棟を新設したのは、乗務員の運転ミスや操作ミスではなく、健康起因による事故を予防するという狙いがある。

その背景には、バスやタクシー、トラックの運転手が業務中に脳疾患に襲われ、事故を起こしたケースが、8年間で261件もあるという現実がある。2016年は48件で、2009年からのカウントで最多件数を記録した。

常に緊張する現場、メディカルチェックで防衛
WILLER EXPRESS JAPAN 平山幸司代表取締役(右)とメディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック知久正明院長
なぜバス運転手の事故発生率が高いのか? WILLER EXPRESS JAPAN は、多くの乗客の命を預かる緊張感、分刻みのタイトなスケジュールによるストレス、長時間連続運行による疲労感、質の高い睡眠がとれなかったときの眠気など、運転手に日常的にふりかかる負荷を分析。

同社はこうした分析をふまえ、脳梗塞や心筋梗塞などの突発的運転不能状態に陥るリスクをゼロに近づけるべく、脳ドック、BNP心不全診断、眼底検査、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査を定期的に実施することを決めた。

また、画像診断クリニック「メディカルチェックスタジオ」とコラボし、スマートフォンやPCで予約・問診・検査結果通知・その後の管理を一貫して行える「スマート脳ドック」も、バス事業社で初めて導入する。

富士通のクラウド型ネットワーク運行支援サービスで結ぶ

乗務員宿泊棟「新木場BASE」のとなりにある WILLER EXPRESS JAPAN 本社屋内には、運行管理センターがある。

この運行管理センターのスタッフたちは、全国各地を行くウィラーの高速バスの位置情報をはじめ、ドライバーの心身状態やバスの挙動をリアルタイムに確認。

居眠りの可能性があるドライバーの表情・ふるまいや、急な車線変更、急ブレーキといった挙動を検知すると、管理画面にそのバスのアラートが表示される。

それを見た運行管理者は、その瞬間の動画を確認したり、場合によってはドライバーに直接注意をうながすこともある。

モニターの軌跡表示・画像表示ウィンドウには、刻々と変わる状況をリアルタイムに把握し、上下左右前後のG、ジャイロ、速度の関係が直感的にわかるグラフが表示される。

運行管理センターでは、点呼直前の5メートルにも注目

こうした、運行管理センターと運転現場をリアルタイムで結ぶ“肝”となるのが、富士通のLTE対応クラウド型車載ステーション DTS-D1D(ドラレコ搭載モデル)と、ドライバー側のウェアラブルセンサー FEELythm(フィーリズム)。

そして、その両デバイスを結ぶのが、富士通のクラウド型ネットワーク運行支援サービス「ITP-WebServiceV2」。

「WILLERは早いうちから、富士通のネットワーク運行支援サービスを導入した高速バス事業社のひとつ。現在、業界シェアトップのシステムで、長距離トラックなどの貨物車が7割、バスなどの旅客車が3割という割合で、導入がさらに広がっている」(富士通マーケティング)

いっぽうで、クラウドと連動したデジタル運行管理システムを構えるWILLERの運行管理センターでは、違った確度から乗務員を見つめる習慣がある。

運行管理センターのエントランスと、乗務員点呼場(対面窓口)の間を5~6メートルほどあえて距離を設けている。

WILLER幹部陣は「乗務員がセンターに入ってきて、点呼場まで向かうこの5~6メートルの距離で、乗務員の表情や体調を見守っている。この数秒の時間も大事と思っている」と教えてくれた。

《レスポンス編集部》

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