ホンダジェットが新たなステージに突入する。3月28日、ホンダエアクラフトカンパニー(HACI)はANAホールディングスと戦略的パートナーシップを結び、ホンダジェットの潜在需要の発掘と市場の拡大に向けて積極的な取り組みを行うことになった。
「ホンダはモビリティカンパニーとして、空においても新しい価値の創造を目指してきた。そして今回、HACIとANAはより多くのお客さまにビジネスジェットという快適で便利な交通手段を提供することを目的として、戦略的なパートナーシップを締結することになった。ビジネスジェット機市場の拡大に向けて多方面で協力し、多彩なサービスを提供していく」とHACIの藤野道格社長は話す。
まずは北米、欧州のハブ空港に到着するANAの定期便からホンダジェットに乗り継ぎ、日本から欧米の最終目的地をダイレクトに結ぶサービスを提供する。これによって大幅な時間の短縮ができ、例えばロサンゼルスに到着してフェニックス、サンフランシスコを回ってロサンゼルスに戻る場合、定期運航便では通常4日間かかるが、このサービスを使えば2日間で済むそうだ。
その後、日本でもサービスを開始するということになるわけだが、日本ではなかなかビジネスジェットが利用されていないという実情がある。その理由について、藤野社長は「ビジネスジェットをどうやって使ったらいいのか、どういうメリットがあるのか、それと贅沢品ではないかなど心理的な部分がある」と話し、こう付け加える。
「日本にはホンダジェットが使える地方空港が84ある。私個人も先日日本に来た時、羽田から仙台まで30分で行けた。日本でもビジネスジェットの優位性は十分ある。今回のANAとのとのパートナーシップ締結によって、より多くの人がビジネスジェットを使う機会が増えることを期待している」
ホンダジェットについては詳しく説明するまでもないが、ホンダ独自の技術を採用した世界最先端のビジネスジェットで、2017年の出荷数が43機となり、小型ジェット機部門で世界1位になった。しかし、それだけ売り上げても収入はわずか230億円ほどで、営業赤字の状態だ。
HACIとしても、できるだけ早い時期に黒字転換したいところだが、そのためには販売数量を増やし、できるだけ多く利用してもらう必要がある。しかし、最大に製造できるしても、年間80機ほどだ。そうなると、頻繁に利用してもらい、そのメンテナンス費用で稼ぐしかないわけだ。そして、そのメンテナンスビジネスは非常にうまみのあるものなのだ。