【ホンダ フリード モデューロX 試乗】走りにこだわるファミリー派には魅力的な存在…片岡英明

試乗記 国産車
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ホンダ フリード モデューロX
ホンダ フリード モデューロX 全 24 枚 拡大写真

ホンダの純正ドレスアップ用品や純正オプションなどを開発し、送り出しているホンダアクセスを代表する用品ブランドが「モデューロ」だ。2012年からは、その機能やクオリティに磨きをかけ、走りの実力も高めたコンプリートカー(メーカー公認のドレスアップ&チューニングカー)の販売を開始した。それが「モデューロX」だ。

記念すべき最初の作品は、先代のホンダ『N-BOX』だった。2012年12月にリリースされ、好評を博している。15年夏には『N-ONE』を、16年秋には『ステップワゴン』のモデューロXを送り出した。その第4弾として開発され、17年12月に発売を開始したのがコンパクト・ハイトワゴンの『フリード』だ。


◆空力理論に基づきノーマルと異なるデザインに

モデューロXシリーズの魅力のひとつ、それは精悍なエアロパーツをまとっていることである。ホンダ直系の用品メーカーだし、ファミリー層も多いから、エクステリアのデザインには強いこだわりを見せた。カッコイイだけでなく、空力理論に基づいてデザインを決めている。また、安全性についてもメーカー基準の高いハードルを設けて取り組んだ。

エアロパーツなどの装着によってフロントマスクは存在感を高めた。モデューロXは、エアロバンパーとビームライトだけでなく、フロントグリルも専用デザインだ。バンパーの左右にはLEDフォグライトも付く。リアは、専用デザインのロアスカートを追加し、テールゲートスポイラーも装備した。多くのパーツを追加し、凛々しいルックスになったが、フリードのフォルムにうまく溶け込み、見た目の安定感も増している。派手さはないが、幅広い層の人たちに愛される上品な装いが好ましい。

サスペンションは専用開発だ。車高はノーマル車と変わっていないが、ダンパーとスプリングを専用チューニングし、ハンドリング性能を向上させている。これに剛性アップした15インチの専用アルミホイールとダンロップ製のエコタイヤ、エナセーブ(185/65R15)を組み合わせた。今回試乗したモデューロXは、キャプテンシートを装備した6人乗りのハイブリッド車だ。

ちなみにフリードのモデューロXは2種類のパワートレーンから選べ、シートタイプも6人乗りと7人乗りを設定している。1.5リットルの4気筒エンジンやモーターはノーマル仕様のままだ。だが、サスペンションを変えたため、持てる実力を引き出しやすい。1.5リットルエンジン搭載車は無段変速機のCVT、ハイブリッド車はデュアルクラッチ採用の7速DCTだ。インテリアは、インパネにピアノブラック調の化粧パネルを張り、シートはブラック&モカカラーのコンビシートで差別化を図った。このシート表皮は滑りにくく、フィット感もいい。ステアリングは、手触りのいい専用の本革巻きタイプ。専用オープニング画面の9インチナビ(ギャザズ)も用意されている。


◆ワインディングロードで真価を発揮

都内の一般道から高速道路を目指す。タイヤはノーマル車と同じだが、乗り味はちょっと引き締まった印象だ。大きく違うのは、足の動きが一段としなやかになり、接地フィールもよくなっていることである。低速域でも路面の凹凸を上手に受け流す。高速道路のランプ進入では、リアの追従性がよくなり、気持ちよく向きが変わることを確認できた。コーナリングではロールの出方が滑らかだ。ステアリングの応答性がよくなり、コーナーの出口でも姿勢が乱れず、踏ん張りが利く。

試乗した日の高速道路は強い風が吹いていた。背の高いハイトワゴンには不利な条件だったが、モデューロXは直進安定性が向上している。サスペンションの変更に加え、エアロパーツも効果を発揮しているのだろう。接地感、安定感が増し、流されたときの修正も無理なく行うことができた。ハンドリングがよくなっているから、レーンチェンジも難なくこなす。ハイトワゴンは、ステアリングを切り込んでいったときにキャビンの動きがワンテンポ遅れることが多い。だが、モデューロXは前後のバランスがよく、ふらつきや上下動も小さく抑えられている。一体感がある走りだから、同乗者も酔いにくいはずだ。元のレーンに戻るときの動きも滑らかだった。

もっとも違いが分かるのはワインディングロードの走りである。試乗したのは車重の重いハイブリッド車だったが、軽量なガソリンエンジン搭載車に迫る軽快な走りを手に入れていた。ノーマルのフリードは、コーナーが連続するワインディングロードではロールが徐々に大きくなり、その後の揺り返しも大きめだ。リアの追従性に物足りなさを感じる場面も多い。ファインチューニングしたモデューロXは、これらの弱点が解消され、意のままの気持ちいい走りを楽しむことができる。ワインディングロードではタイヤの踏ん張りと接地感が際立ってよくなっていた。無駄な動きとロールを上手に抑え込み、ステアリング操作に対する応答性も向上している。だから狙ったラインに乗せやすい。また、ブレーキング時の挙動変化も小さくなった。

乗り心地は、フロントシートに座っている限り、乗り心地が悪い(硬い)と感じられる場面はほとんどない。低速域ではちょっと硬質な乗り味だ。が、ペースを上げていくと気にならなくなる。ただし、2列目と3列目に座ると、突き上げが気になる場面があった。とくに目地や段差を駆け抜けたときにはシートを通してショックが伝わってくる。

フリードのモデューロXは、過大なスポーティ感を期待する人は、ちょっと不満を感じるかもしれない。だが、多くのドライブシーンで運転しやすく、コントロールできる領域も広がっている。ステアリングを握っていると楽しいし、走りの質感と安心感も高められた。価格はベース車のハイブリッドGより60万円ちょっと高いが、ロングドライブ派や走りにこだわるファミリー派には魅力的な存在と映るはずだ。

モデューロXのホームページはこちら

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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