【アルファロメオ ジュリア ヴェローチェ 試乗】「イタ車かくあるべし」という見本のよう…中村孝仁

試乗記 輸入車
アルファロメオ ジュリア ヴェローチェ
アルファロメオ ジュリア ヴェローチェ 全 15 枚 拡大写真

アルファロメオ『ジュリア』には、トップモデルの「クワドリフォリオ」、受注生産のベースモデルと、「昔の名前で出ています」的な、「スーパー」と、「ヴェローチェ」が存在する。

実質的には受注生産のモデルはほぼ入らないだろうから、事実上、下からジュリア・スーパー 、ジュリア・ヴェローチェ、そしてクワドリフォリオの3グレードとなる。今回試乗したのは、中間グレードのヴェローチェだ。そのヴェローチェ、昨年デビューした時は4WD左ハンドル仕様のみだったが、今年に入って右ハンドル仕様のFRモデルが追加された。4WDとの差額、たったの10万円と聞くと、多くの人は、ならば4WD…って思うかもしれない。しかし、真の意味でイタリアンスポーツセダンのを味わいたいのなら、僕はこのFRをお勧めしたい。

ジュリア・スーパーに対して性能的なアドバンテージは最高出力で80ps、トルクで70Nmの、280ps、400Nmである。この数字、パワーはともかくとしてそのトルクは人気のディーゼルパワーを持つDセグメントライバルのモデルとほぼ等しい。その400Nmのトルク、ディーゼルの場合は完全なテーブルトップ上のトルクカーブを示し、全域で使いやすい設定になっているのだが、ジュリアの場合、その発生回転数は2250pmのピンポイントである。ところがそのトルクカーブを調べてみると、その2250rpmで、まるで地面から突き出た蕾のごとく、僅かに盛り上がっているだけで、ほぼ4500rpm付近まで、恐らくは390Nmほどをテーブル上に絞り出しているから、実質的には全域で極めて使いやすい設定となっているのである。

エンジンは思ったよりも回らない。5500rpmからレッドのゼブラゾーンが始まり、6000rpmで打ち止め。マニュアルで引っ張っていくと、そこで勝手にシフトアップする。もっとも、そこまで引っ張れるギアは精々1速と2速だけ。3速でそこまで引っ張ると、もう、法律的なOBゾーンに入る。

直4、2リットルというスペックはスーパーと同じ。そもそも、エンジン自体は基本同じものだ。このエンジン、僅かだがファイアーウォールを通して昔懐かしいアルファ・サウンドが耳に心地よく届く。そのあたりからしてアルフィスタにはたまらない刺激だと思うが、その心地よいサウンドは決して不快ではないから、アルファをチョイスするようなクルマ好きにとっては、下手なオーディオより遥かに気分を高揚させてくれるし、同時にリラックスもさせてくれると思う。

スーパーに試乗した時も、そのパワーには何ら不満なく、これで十分と思ったが、ヴェローチェの場合、街乗りのいわゆるタウンスピードの領域ではその本領を発揮しないから、事実上スーパーと同じような性能である。ところが、高速に入ってひとたび鞭を入れると、俄然その正体を露わにする。実質的には3000rpmから上が、一段次元の異なる性能領域といって過言ではないだろう。

異様にクイックなステアリングはスーパー同様で、こぶしひとつほど左右に振ってみると、恐ろしいほどのシャープさで、クルマが向きを変える。しかもフロントの食いつき感がハンパなく高い。正直、このクイックなステアリングに慣れないドライバーは、路上に飛び出した小動物を避けようとした場合など、相当に注意しないと危ないとも感じた。

巨大なパドルシフトで操作できる8速ATのシフトタイミングも、スポーツセダンを名乗るに相応しい。一度高速上で、前を行く某イタリアンメーカーのスポーツセダンと加速争いをしたが、こちらの方が速かった。

というわけで、クイックなステアリングと、軽快で素早いシフトが出来る8速AT、レスポンスよく、十分にパワフルなエンジンと、少々硬いがしっかりと粘るサスペンションとの連携は、このセグメントのモデルとしては最良の一台。確かにナビはApple CarPlayやAndroid Autoにお任せという、最近のクルマとしてはプアなネガ要素もある。それに後席は予想以上に狭いし、トランクスペースはその開口部が狭く、大きな荷物を入れづらいなど、機能面でも褒められない部分もあるが、自動車の愉しさはこうだろう!とカツを入れられている気がしなくもなかった。

まさにイタ車はこうあるべきの見本のようなモデルと感じた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  2. セリカに次ぐ「リフトバック」採用のカローラは、50年経ってもスタイリッシュ【懐かしのカーカタログ】
  3. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  4. シートに座ると自動で送風開始、取り付け簡単「クールカーシート」2モデルが発売
  5. 【マツダ CX-60 XD SP 新型試乗】やっぱり素のディーゼルが一番…中村孝仁
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る