SUVとクーペスタイルの融合、アメリカで知名度のある名前でデビュー…三菱 エクリプスクロス 開発者[インタビュー]

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三菱エクリプスクロス
三菱エクリプスクロス 全 24 枚 拡大写真

三菱自動車から久々の新規車種である『エクリプスクロス』がデビューした。SUVとクーペスタイルを融合した新たなポジショニングを獲得したというこのクルマ。なぜ三菱はエクリプスクロスを登場させたのか、またなぜ、このネーミングを採用したのかを含めて話を聞いた。

◇新たな車種を投入した理由

---:まず初めに、既存車種のモデルチェンジではなく、新規投入車種であるエクリプスクロスをなぜ三菱は開発したのでしょうか。

三菱自動車商品戦略本部CPSチーム(C&Dセグ1)の山慶之氏(以下敬称略):三菱には『アウトランダー』と『RVR』という実用性を重視したコンベンショナルな、今まで通りのSUVの兄弟を持っています。そこで、これらをベースにしつつもスタイリッシュなクーペスタイルを融合させた、全く新しいジャンルのクルマを作りたかったのです。

そのポジショニングは、縦軸に上をアウトランダー、下にRVRを置いたときに、中間よりも少し斜め上に位置するイメージ。つまり、スペシャリティという位置づけのクルマを作りたいと考えました。

その背景ですが、我々のクルマ作りは、これまでゴツゴツとした『パジェロ』から始まって『デリカ』など、そういうクルマを多く作ってきましたが、スタイリッシュさを表現したクルマが足りなかったのです。そこで、そういったクルマも作りたいと、SUVラインナップの真ん中ではなく、その横に並ぶようなポジショニングで作ろうというのがこのクルマのスタートでした。

---:SUVとクーペスタイルの融合だったのですね。では、そもそもSUVを作りたいと思ったのですか。あるいはクーペを作りたいという思いだったのでしょうか。

山:基本的には我々が強みとしている部分、SUVの基本パッケージと四駆性能をベースとしたところでのクルマ作りをしたいと思っていますので、ものとしてはSUVを作りたい。しかし、これまでの強みの部分をただただ形にしてしまうと、今まで通りの三菱らしいゴツゴツした感じのものが出来上がってしまいます。

そこで昔、アメリカで『エクリプス』というクーペを販売していましたので、こういったクーペスタイルの流麗さを取り入れたものを、SUVの中で表現したいと考えたのです。つまりクーペを作りたくてSUVになったのではなく、SUVの中でクーペらしさを最大限取り入れたかったということです。

---:ゴツゴツした三菱らしいSUVではダメだったのですか。

山:もちろんダメというわけではありません。ただし、我々はアウトランダーやRVRをすでに持っていますので、明確にその2車と変えたかったのです。従って、今回のエクリプスクロスが狙うターゲットも違います。今までのSUVは荷物がきちんと積載でき、人も乗れて、ありとあらゆる道に進んで行けるという使い方、ファミリーユースというイメージが強かったのです。

しかし、エクリプスクロスは極端にいうと一人とか二人で乗ってもらうクルマです。子供がいて皆でどこかへ行こうねというレジャーのクルマではなく、子供がすでに独立していてとか、夫婦二人でまた楽しみたいというときに乗ってもらいたいクルマです。そのあたりのターゲットユーザーも明確に分けて考えています。

◇日本のターゲットは子育て終了層

---:もう少し具体的なターゲットユーザーを教えてください。

山:子育て終了層。その中でもよりアクティブな方で、何か新しい楽しみを自分で見つけ出そうなど、ヤングマインドを持っている方がまずひとつあります。また、グローバルにみると、例えば中国などでSUVは若い世代に人気があります。そういったところでは子供が生まれる前の25歳から30歳くらいの若い都会的な夫婦層です。都会的とは、昼はスタバでコーヒーを飲んで夜はバーに行くような人たち。中国では、スタバのコーヒーは一杯800円から1000円ぐらいするのです。コーヒーを飲むだけでかなりのお金がかかるのですが、それでもオープンテラスでコーヒーを飲んでいるんだなど格好をつけたい人たちや、自分の持ち物を自慢したり、そういう思考を持った若い世代の人達をターゲットにしています。

---:そうすると二極化するイメージですか。

山:マーケットによって全く違います。日本の若い夫婦世代は、正直我々も苦労しています。シェアカーもありますし、そこに訴求していくにはこのクルマは300万円ぐらいしますので、少し難しいでしょう。そこで、日本では子育てが終わった方で、余裕のある人。でもアクティブな遊びを楽しみたい方です。そして、中国や東南アジア系、中南米などでは若い方々がターゲットになっているのです。

◇アメリカで知名度のあるエクリプス名

---:これまで三菱にはエクリプス以外にもいくつもクーペがありました。その中でなぜエクリプスというブランドを選んだのでしょう。

山:確かに色々な案がありました。SUVとクーペスタイルを融合させるというコンセプトワードのもと、三菱ではクーペとしてエクリプスや『スタリオン』、『GTO』、『FTO』などがあり、我々としてはまず、クーペとして大事にしてきたブランドを使いたいと考えました。

このエクリプスクロスのメインマーケットは欧州とアメリカ、中国で、国単体で考えると北米はかなりのボリュームになります。実は三菱はアメリカでそれほど強くないこともありますので、三菱で知られているエクリプス名をつけることで、より多くの人にこのクルマをアピールしたかったことが大きな理由です。

---:三菱ではブランドネームを消してしまうことが良くあります。ぜひこのネーミングは使い続けてほしいですね。

山:はい、名前をもっと大事にしたらいいなと私も個人的には思っています。名前を決めて商標を取りに行くことも僕らの仕事の中にあり、全世界でエクリプスという商標を取りに行きました。アメリカではエクリプスという名前は持っていましたが、欧州や中南米ではありませんでしたが、なんとかグローバル統一ネームに出来ました。グローバル統一ネームで出したのは三菱では他にはないように思います。そこまでこだわりを持ってグローバル統一ネームにしましたので、なんとか続けていきたい名前ですね。

◇ディーゼルは少し先、PHEVも検討中

---:今回1.5リットルガソリンターボという、ダウンサイジングターボが搭載されました。昨年のジュネーブショーで発表されたときには2.2リットルディーゼルが計画されていましたが、なぜディーゼルを搭載しなかったですか。

山:エクリプスクロスをワールドプレミアしたときに、ディーゼルはラインナップしており、実際にその計画で動いていました。国内に関してもディーゼルを導入する計画でしたが、VWの排ガス問題や欧州におけるディーゼルの市場動向が、昨年以降、劇的に変わってしまいました。欧州でのディーゼルに対するイメージがどんどん落ちて、需要も少しずつ減ってきています。また、欧州当局の規制も厳しくなってきており、どこまでの環境対応を織り込めば間違いなく出せるのかを含めて、慎重に見極める必要があったのです。

本来1.5リットルガソリンエンジンはディーゼルの投入後に発売する予定でしたが、急遽先にガソリンを出したという次第です。直前での判断だったので我々も悩みに悩んで、開発側にも負担をかけました。今のところの目標としては、欧州向けには2018年度中にディーゼルを出し、その後、日本も検討していく予定です。時期は未定ですが十分日本にも投入する可能性はあります。

---:3月1日、日本での発表に際し、CEOからプラグインハイブリッドも検討中というコメントが出ましたが。

山:実はそこでは発表しないことになっていたのですが(笑)。早いタイミングで出したいという思いがありますので、基本的にはアウトランダーに積んでいるシステムを採用する方法が開発期間としても短くてすみ、まさに今それを検討しています。

従いましてパワートレインのラインナップは、立ち上がりはダウンサイジングターボで出して、次に国内に関してはディーゼルの可能性を探りながらPHEV化も行うというライフサイクルの計画になるでしょう。

---:では、エボの可能性はありますか。

山:実は我々も全く知らなかったのですが、東京モーターショー2017で『e-エボリューションコンセプト』が登場しました。これは本当に知らなくて、こんなのがあるんだという感じでした。3モーターを研究開発しているというメッセージを持って出す以上、今後どの車種かはわかりませんし、ひょっとしたらこのクルマかもしれませんが、乗せてくるのではないかと思っています。このクルマでやらせてもらえるなら私は喜んでやりますよ。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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