夢と希望の スープラ ヒストリー…セリカXX 誕生から40年の歴史を振り返る

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トヨタ スープラ
トヨタ スープラ 全 48 枚 拡大写真

トヨタはジュネーブモーターショー2018で、次期『スープラ』でのレース参戦を示唆したコンセプトカー『GRスープラ・レーシングコンセプト』を初公開した。初代が誕生してから40年を経て、復活への期待は膨らむ一方だ。ここで、その歴史を紐解いてみたい。

セリカXXから始まったスポーツクーペの軌跡

“SUPRA”は、ラテン語で「最高」や「上へ」という意味だ。最初の作品は2代目のA40系『セリカ』をベースに開発され、1978年4月に登場した。セリカの上級に位置するスペシャルティカーで、直列6気筒SOHCエンジンを積むためにホイールベースとボンネットを延ばしている。角型4灯式ヘッドライトやT字をモチーフにしたグリルなど、フロントマスクは専用デザインだ。北米市場では『フェアレディ 280Z』が好評だったが、トヨタには6気筒エンジンを積む上質なスポーツクーペがなかった。そこで開発されたのである。

海外でのネーミングは『スープラ』だ。が、日本では『コロナ』に対する『コロナ マークII』のように『セリカXX(ダブルエックス)』を名乗った。日本では大人のラグジュアリークーペとしてユーザーに迎えられている。だが、走りの魅力が足りない、という声も少なくなかった。そこで80年8月のマイナーチェンジのときに、2600Gのエンジンを5M-EU型直列6気筒SOHCエンジンに換装している。これが2800Gだ。また、全車のリアサスペンションをセミトレーリングアームの独立懸架にしてハンドリングに磨きをかけた。

トヨタ スープラ/日本名:セリカ XX(79年式)

走りへのこだわり見せた2代目

2代目のA60系セリカXXが登場するのは81年7月だ。ロングノーズにファストバックの3ドアクーペという図式は変わらない。だが、ウエッジシェイプの精悍なフォルムになり、ノーズ先端には角型のリトラクタブルヘッドライトを組み込んでいる。インテリアもスポーティかつ上質なデザインだ。2800GTは時代の先端を行くデジタルメーターを採用し、ヘッドレストと一体になったバケットタイプのフロントシートをおごっている。

走りにこだわるのは、この2代目からだ。メカニズムを一新し、初代『ソアラ』と共通性を持たせることによって刺激的な走りを手に入れている。フラッグシップのセリカXX2800GTには、その当時、最強スペックを誇った2.8リットルの5M-GEU型直列6気筒DOHCエンジンを搭載した。5速MTのほか、時代に先駆けてマイコン制御の電子制御4速AT(ETC-S)を用意している。ステアリングは全車パワーアシスト付きで、切れのいいラック&ピニオン式とした。

走りの実力を大幅に高めたことにより、スープラはファン層を広げている。若返りに大きな効果を見せたのが、2.0リットルモデルのラインアップ強化だ。82年2月にターボ搭載車を加え、8月には2000GTを送り込んでいる。心臓は新設計の1G-GEU型DOHC4バルブで、160ps/18.5kg-mを発生した。

84年式 トヨタ セリカXX 2000GT

レースでも活躍、マイチェン重ね走り向上

第3世代のA70系にバトンタッチするのは86年2月である。車名を海外向けと同じスープラに統一し、新たなスタートを切った。エクステリアはA60系セリカXXの流れを汲む伸びやかなフォルムで、リトラクタブルヘッドライトも受け継いだ。ボディは少しコンパクト化され、全長とホイールベースを切り詰めているが、遠くからでも目立つ。ファストバックスタイルのセンターピラーをロールバー風の処理としているのも新鮮だった。登場から4カ月後には脱着式のディタッチャブルトップを装備した爽快なエアロトップを設定している。

インテリアもスポーティなデザインだ。5人乗りだが、後席は子ども用と割り切った・インパネはセンターコンソールまでを一体化した横L字型デザインで、視認性に優れたデジタルメーターのほか、瞬時に情報を読み取れるアナログメーターを用意している。フロントシートは調整機構を増やし、優れたホールド性を実現したバケットタイプだ。座り心地がいいだけでなく、表皮の手触りもいい。

キャッチコピーは「ハイパフォーマンス・スペシャルティカー」である。メカニズムは同時期に登場した2代目のZ20系ソアラに限りなく近い。頂点に立つのは、インタークーラー付きターボを追加した3.0リットルの7M-GTEU型直列6気筒DOHC4バルブだ。2.0リットルエンジンは1G-GTEU型DOHCツインターボと自然吸気の1G-GEU型DOHC4バルブを設定した。トランスミッションは5速MTと電子制御4速ATが選べる。

サスペンションは4輪ダブルウイッシュボーン/コイルに進化した。上級グレードは減衰力を変化させる電子制御サスペンションTEMSだ。また、電子制御スキッドコントロールや4輪ESCなど、先進の挙動安定制御システムも採用した。セリカから独立し、制約がなくなったことにより走りのポテンシャルは大幅に引き上げられている。素性がいいから、このスープラはグループAカーによって争われる全日本ツーリングカーレースに参戦した。デビューするのは87年だ。その緒戦で優勝を飾り、話題をまいている。また、サファリラリーにも挑んだ。

87年1月、スープラは初のマイナーチェンジを断行した。新登場の3.0GTターボリミテッドは海外向けと同じワイドフェンダーを採用し、全幅とトレッドを広げている。88年夏には化粧直しを実施し、エンジンをプレミアムガソリン仕様に変更した。また、ワイドフェンダー仕様を拡大する。このとき、グループAレースのホモロゲーション(公認)を取得するためにターボAを500台だけ限定発売した。インタークーラーを大型化し、コンピューターなどを交換して7M-GTE型エンジンを270psまでパワーアップしている。

最後のマイナーチェンジは90年夏だ。7M-GTE型エンジンを整理し、新たに2.5リットルの1JZ-GTE型直列6気筒DOHCツインターボを送り込んだ。最高出力はついに280psに到達する。主役の2.5GTツインターボはビルシュタイン製のショックアブソーバーを装着し、タイヤもインチアップした。走りの実力は驚くほど高くなっている。

トヨタ スープラ(88年式)

3L直6エンジン復活、パワフルに

93年5月、新世代のスープラがベールを脱ぐ。企画の早い段階からワイドフェンダーでデザインし、全幅を1810mmまで広げている。また、運動性能を高めるために、全高を25mm下げ、全長とオーバーハングも短くした。アクティブスポイラーや大型リアスポイラーを装着するなど、エアロダイナミクスにも強いこだわりを見せている。エアロ仕様は世界最高レベルの空力性能で、Cd=0.30だ。燃料タンクもトランクの下に移し、前後の重量配分を最適化した。もちろん、エアロトップも設定している。

エンジンは、3.0リットルの直列6気筒を復活させた。搭載するのは2.5リットルの1JZ-GE型をベースにした3.0リットルの2JZ-GE型DOHCと2JZ-GTE型DOHC2ウェイツインターボだ。ターボ搭載車は自主規制枠の280psに到達しているため、最大トルクを44.0kg-mに増強させた。ゲトラグ社と共同開発した6速MTを主役に、電子制御4速ATも設定した。サスペンションは4輪ともダブルウイッシュボーン/コイルを受け継いだ。ターボRZはビルシュタイン製のショックアブソーバーを標準装備する。

94年夏にマイナーチェンジを行い、ツインターボに17インチタイヤをオプション設定し、大型リアスポイラーも装着車を拡大した。95年にはRZにレカロ製バケットシートを採用している。96年にはサスペンションを改良し、ボディなどの剛性を高めてコントロール性を高めた。また、運転席と助手席にエアバッグを装備し、ABSも標準装備する。エンジンに可変吸気システムなどを採用するのは97年だ。が、21世紀になると排ガス規制が強化され、市場規模も縮小した。そこで2002年夏、未練を残しながら生産を打ち切っている。

最後のスープラはレースでも活躍した。グループAレースではR32型『スカイライン GT-R』や三菱『GTO』、ホンダ『NSX』、Z32型『フェアレディZ』などと熾烈なバトルを繰り広げ、生産終了後も元気な姿を見せている。SUPER GTでは4度のチャンピオンに輝き、ルマン24時間レースにも挑んだ。ムード派からピュアスポーツに進化し、多くの人に夢と希望を与えたのがスープラである。

トヨタ スープラ(94年式)

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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