航空機の博物館が出来るまで…その歴史と修復へのこだわり

モータースポーツ/エンタメ 出版物
『航空機を後世に遺す』
『航空機を後世に遺す』 全 1 枚 拡大写真

『航空機を後世に遺す』
歴史に刻まれた国産機を展示する博物館づくり
著者:横山晋太郎
発行:グランプリ出版
定価:2400円(消費税除き)
2018年5月22日刊行
ISBN987-4-87687-356-2

岐阜県各務原市にある“岐阜かかみがはら航空宇宙博物館”は、1996年に開館。ここを作るために、どのような基準のもとに機体を収集、復元していったのか。単に集めてきれいに修復すればいいのではないという問題提起も含めて、創設に携わった著者が詳細に経緯を語る。

現存する日本最古の飛行場がある航空自衛隊岐阜基地。そこに隣接して岐阜かかみがはら航空宇宙博物館はある。つい先日リニューアルオープンし展示面積はこれまでの1.7倍の9400平方メートルになった。

メインフロアには、STOL実験機『飛鳥』やT‐2練習機など、30機を超す実機が年代ごとに並ぶ。さらに、唯一現存する旧陸軍戦闘機『飛燕(ひえん)』や各務原飛行場で初飛行した戦闘機『ゼロ戦』の初号機も展示。そのほか、NASA(米航空宇宙局)のアポロ計画やスペースシャトル、日本のH‐IIロケットなど宇宙開発の歴史も展示されているので、まさに名の通り航空宇宙博物館なのである。

しかし、ここに至るまでの道のりは苦難の連続だったようだ。まずはどういった機体を収集するのかの基準を決めるところから始め、それがどこにあるのか、入手は可能か。さらにはその保存状態から修復もしなければならない。

その修復にしても単にすべての部品を交換しきれいにするのではなく、オリジナルを尊重し、実際にスミソニアン航空宇宙博物館が行っているのと同様に、印をつけて、オリジナル部品かどうかがわかるようになっている。そのうえで、実際に使われていた時の修理の跡や傷が残された。こういったオリジナルの保存が最も重要で、これを失ったらその飛行機の歴史が失われると著者はいう。そういった観点で収集、修復されているのだ。

実はこういった修復は近年盛んなクラシックカーのレストアにも共通する考えでもある。単に新車同様かそれ以上にレストアするのではなく、そのクルマそのものが歩んできた歴史を大切に必要な部分だけレストアする。そうすることで後世に、その歴史を伝えていけるからだ。著者いわく、”何も足さない。何も引かない”という考えなのである。

本書は単に博物館を創設するに至るまでのストーリーが記されているだけではなく、展示される機体が持つ歴史から、修復への考え、苦難とハプニング、そして完成した喜びまでが克明に綴られている。飛行機好きはもちろん、クラシックカー等のレストアを考えている人たちにも一読をお勧めしたい。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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