空白区間最長183km、高速道のGS閉鎖で…「ガス欠」防ぐ策は【岩貞るみこの人道車医】

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高速道路のガソリンスタンド空白区間拡大を止める策はあるか(画像はイメージ)
高速道路のガソリンスタンド空白区間拡大を止める策はあるか(画像はイメージ) 全 2 枚 拡大写真

【高速道路のガス欠】新緑から日に日に緑が濃くなり、ドライブが楽しい季節である。緑を求めて遠出したくなるけれど、気になるのは高速道路のガソリンスタンド(以下GS)だ。東京を中心に生活していると、高速道路上のサービスエリア(以下SA)にはGSがあるものだと思っていて、50kmに一か所は給油できると信じている。なので、クルマのインパネにガス欠注意ランプがついてから対処しても間に合うのだが、地方エリアにいくとそんな悠長なことは言っていられない。

◆岡山で全国最長183kmのGS空白区間

この春、岡山県周辺で注目を集めたのは、岡山自動車道(下り)にある高梁SAのGS閉鎖だ。これにより、四国の香川方面から岡山県北や鳥取に向かうルートではGS空白区間が全国最長の183kmになるというのである。183kmって、あなた、東京駅から軽井沢駅を超えて、ハルニレテラス(星野リゾートのこじゃれたショップが並ぶエリア)まで行けてしまう距離ではないか。

閉鎖の理由は経営難。赤字続きで続行不可能とのこと。そりゃそうだよね、いまやクルマの燃費は向上し、自動車専門誌ではたびたび「ワンタンクで九州まで走るぞ、おー!」的な企画を組んでいる。高速道路での給油はしなくなる一方だ。一般道のGSならば、減った売上分をオイル交換や車検で補おうという動きもとれるけれど、高速道路上ではそうはいかない。セルフ化を進めたとしても最低一人はいなければならず、人件費だってバカにならない。

しかし、ユーザーにしてみれば高速道路上でガス欠ストップはつらい。夜中で、雨で、よもやのガス欠なんて! 路肩に止めれば事故誘発の危険性だってあり(トラックドライバーは、前方をいく車両のテールランプを見つめて運転するので、路肩に止めても追突される危険性大。夜昼関係なく路肩に止めたら、すみやかに車外に出て安全な場所に避難すべし)、絶対に避けたいものである。

◆高速道路事業者の取り組み

では、GSのない区間でガス欠しそうになったらどうするか。一度、一般道に降りて給油せよという声もあるけれど、インターチェンジ(以下IC)降りてから、いったいどこにGSがあるのよ? それに、高速料金だって割高になっちゃうじゃん、それってどうなのよ。

そんな声に応えて、2016年4月から国交省とネクスコ東・中・西の三社は、150kmを超えるGS空白区間の解消を目指して、指定ICを出ても、指定GSで給油して手続きして戻ってくれば高速料金は変わらないという社会実験を始めている(開始当初は5か所)。さらに2017年4月から新たに東北自動車道の十和田ICが追加された。

ふうむ、では、十和田ICのケースを見てみよう。

東京方面から東北自動車道を北上していくと、岩手県に24時間GSを営業している岩手山SAがある。そのまま北上すると56.4km先に花輪SAがあるのだが、なんとここ、下り線(北上方向)にはGSがないのである(上りにはある)。最終ICである青森東ICまで行くとなると、花輪SAで給油できないままさらに99.3km走らなければならないのだ。ゆえに、国交省とネクスコ東日本では、花輪SAのひとつ先にある十和田ICで降り、2kmほど先の一般道にあるGSで給油してもどってこられるようにしたというわけだ。

だけど、私の手元にあるハイウェイ・ウォーカー(ネクスコ東日本のSAなどで無料配布している情報誌)2018年5月号によると、この一般道のGS営業時間は朝7時から夜19時半までだ。土日は19時である。それ以降だと給油はできない。しかも、もっと大切なことがある。これは、ETC利用者限定のサービスなのである(北海道の十勝清水ICをのぞく)。

◆そもそも根本的な問題は

ちょっと待った! そりゃ確かに、高速道路でのETC利用率は9割を超えたけれど、持っていない人もいる。それに、二輪車はETC装着率がかなり低い。燃料タンクが小さくて、こまめに補給しなければならないのも二輪車のはずだ。限定解除で免許を勝ち取った元ナナハンライダー(いまやすっかりペーパーライダーです、すいません)としては看過できないぞ?

十勝清水ICでは、ETCじゃなくてもOKなら、ぜんぶそうしようよ。ついでに、「一般道のGSで手続きをして……」というケチくさいこと言わず、一定時間内にもどればいいよってすればいいのに。東京メトロの乗り換えだって、改札外で乗り換える駅は、30分以内ならOKってしているのにさ。

そもそも根本的な問題は、SA上のGS経営の前途が多難ということだ。上下線のどちらからでも使えるようにしたり(集約型)、一般道からでも使えたりという工夫をしていかないと、これからもっと空白区間だらけということにもなりかねない。高速道路事業者は、20年後30年後の動向を見据えて、GSの在り方を検討していただきたい。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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