ロールスロイス カリナン…ユーザーの若返りでSUVへの要望多数、商品企画マネージャー[インタビュー]

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ロールスロイス カリナン
ロールスロイス カリナン 全 24 枚 拡大写真

ワールドプレミアして約1か月、ロールスロイス初のSUV『カリナン』が日本でも発表された。高級大型サルーンを中心にオープンやクーペモデルなどを作ってきた同社が、なぜSUV市場に進出したのか。カリナン商品企画マネージャーに話を聞いた。

◇“作らなければ”ではなく“作ろうと思った”

----:冒頭からですが、率直に伺います。なぜなぜロールスロイスがSUVを作らなければ“いけなかった”のでしょう。

ロールス・ロイス・モーター・カーズカリナン商品企画マネージャーのジョン・シアーズ氏(以下敬称略):まず作らなければ“いけなかった”わけではなく、長い期間お客様からの要望があったことから“作ろうと思った”のです。

作るにあたっては、まず本物のロールスロイスでなければいけません。つまりオンロードとしてそのカテゴリーをリードするクルマである必要があります。同時に、オフロードでもお客様の期待に応えるクルマでなければいけませんので、急いで作らずに時間をかけてじっくりと仕上げました。2015年にロールスロイスとしてSUVを導入すると発表してから3年かかったのはこういうことなのです。

----:ではなぜお客様はロールスロイスのSUVを求めたのでしょう。

シアーズ:より若くて新しいお客様の世代は、家族と一緒にいろいろなところへ出かけたりしますから、SUVの持っている多目的で実用的なところを求めています。そこにプラスしてもともとロールスロイスが持っているラグジュアリー感のあるクルマが欲しいという要望があり、そこに応える形でカリナンが生まれました。

----:そういった若いユーザーは実際にロールスロイスの他のクルマを購入していたりするのでしょうか。

シアーズ:はい。2009年に『ゴースト』を出して以来、お客様の平均年齢はどんどん若くなってきています。ゴーストを出した時点で10歳は若返りました。次に『レイス』を出したところでさらに10歳若くなったのです。現在はおよそ45歳から50歳ぐらいが平均年齢でしょう。このようにお客様の平均年齢はどんどん若返っているのです。また我々のイベントに来場するお客様も若い人たちが増えており、そういった人たちがレイスや『ドーン』、ゴーストを購入しています。

このように購入層が若返っており、そういう方々は家族がいて、その家族と出かけるためのクルマを欲しがっているので、このカリナンはぴったりなクルマだと思うのです。

◇SUVはカリナンのみ

----:いまの状況はとてもよくわかりました。では今後、例えばファントムがあってゴーストがあるように、カリナンに続いてもう1台SUVを登場させることは考えていますか。

シアーズ:はぁ(苦笑)、カリナンのプロジェクトが始まる前、私の髪の毛は黒かったんですよ(笑)。

現在は複数のSUVの車種を出すことは考えていません。我々はロールスロイスなのでいつも大きいということが期待されていますし、お客様もこれよりも小さいSUVが欲しいという方はいないのではないでしょうか。

カリナンはドライバーズカーです。シートポジションも高く、後輪操舵システムが付いていますので、非常に運転しやすくなっています。レンジローバーのロングボディよりも少し長いだけですから、お客様が嫌だと思うほど大きくはないでしょう。

◇大胆でパワフルなデザインで“ソフトローダー”に見えないクルマ

----:ロールスロイス初のSUVということで、デザインも注目ですね。そのデザインのコンセプトはどういうものでしょう。

シアーズ:カスタマークリニックなどでお客様の声を聞いたところ、大きくて大胆でパワフルで勇気があるようなクルマにしてほしいということでした。レイスやドーンのようなデリケートでソフトなラインは望まれていないのですね。もっと男性的で大きくてパワフルなものが望まれていたので、それらをデザインに取り入れています。フロント周りではその存在感を強調した結果、ロールスロイス史上最も高い位置にスピリット・オブ・エクスタシーが配されているのです。

しかしながら100%ひと目でロールスロイスとわかるクルマでなければいけません。しかも“ソフトローダー”に見えてはダメなのです。このソフトローダーとは、見た目だけのSUVでオフロードに実は向いていないクルマを指しています。ロールスロイスはオンロードでもオフロードでも最高でなければならないので、そのように見えなければいけないのです。

----:ロールスロイスに見えなければいけないというのがポイントということですが、具体的にはどのような表現なのでしょう。

シアーズ:まず存在感、そしてプロポーションです。長いフロントのボンネットやCピラー、そして品質が良く、クラフトマンシップが感じられることも挙げられます。

そしてラグジュアリーさ。SUVの多くのクルマに欠けているのがこのラグジュアリーさです。もちろんラグジュアリーさを備えているSUVもありますが、そういったクルマのほとんどは数多くの台数を販売していますので、エクスクルーシブ性に欠けています。この両立が重要なのです。

----:いまCピラーが特徴とのことですが、具体的にはどういうことでしょう。

シアーズ:まずリアのDバック(1930年代のロールスロイスはリアにスーツケースを“背負って”おり、その形状をモチーフにしたデザイン形状)はCピラーの延長になっていますのでカリナンのデザイン上の大きな特徴です。さらに、後部座席はロールスロイスの特徴として、プライベートな空間になりますから、その演出にCピラーは役立っているのです。また、金属で光ったブライトワーク(サイドウインドウ後端のモール部)はファントムやレイスと共通のモチーフで、このクルマにも採用されています。

ロールスロイスとして見たときに重要なのは3か所あります。まずはフロントで、見ただけで存在感があり「ワオ!」といわせるような部分です。そしてサイドビューはクルマが通り過ぎたときに水平の線がエレガントで洗練性を感じさせるもの。リア周りでは小さなテールランプが、クルマが走り去った後にだんだん消えていく印象を与えるようにデザインしているのです。これらは当然カリナンにも取り入れられているデザインの特徴でもあります。

----:では最後に、カリナンはアラビアのロレンスにとって最も良いクルマに仕上がっていますか。

シアーズ:アラビアのロレンスだったらこのクルマに乗って砂漠を走ることを厭わないでしょう。このカリナンを見たら自分の目が信じられないととても喜ぶと思いますよ。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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