水上バイクで東京を「下から眺めてみた」…意外にも身近な非日常

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ヤマハの水上バイク「マリンジェット」で東京散策。非日常体験に身も心もリフレッシュ
ヤマハの水上バイク「マリンジェット」で東京散策。非日常体験に身も心もリフレッシュ 全 35 枚 拡大写真

いま、海上からひとり、ぼんやり東京を眺めている。水上バイクのシートの上からだ。普段ではまず味わうことのできない非日常的な体験だが、こんなにもリラックスできる空間が身近にあったなんて想像すらできなかった。

すぐそこは高層ビルが建ち並ぶ都心だというのに、空も海も絵に描いたように青く、そして手に負えないほどに広い。いつも陸の上にしかいない自分にとっては、東京も捨てたものじゃないなと認識が180度変わってしまう。

◆郊外に出なくても、空いた時間で楽しめる

どうしていま、水上バイクに乗っているのか……少し話しをさかのぼろう。

忙しい毎日に追われ、知らぬうちに心や脳、身体全体に疲労やストレスを抱えてしまっていた今日この頃。休暇を取り、しばらく都会の喧噪から離れ、心身ともにリフレッシュしたいと考えたのが、そうはいかないのが現実であった。そんなとき、半日もあれば未知なる体験ができることを知り合いから教えてもらった。水上バイクをレンタルしての東京散策だ。

まず、水上バイクに乗るための特殊小型船舶免許が必要だが、これは「ヤマハボート教室」などで2日間あれば取ることができ、昨夏土曜日と日曜日を利用してすでに取得している。そして今回水上バイクを借りたのが、千葉県市川市にある「MG MARINE(エムジーマリーン)」。都心からわずか20といった場所に、マリーナがあることさえ知らなかっただけに、その身近さには拍子抜けした。免許さえあれば、水上バイクに乗って水上を気ままにツーリングすることができるのだ。

◆水上は交通量が少なく、快適きわまりない

ヤマハの場合、全国約30か所でヤマハの水上バイク「マリンジェット」をレンタルできる「Sea-Style JET」という会員制度があり、クラブ員ならレンタル実施マリーナで約2時間の座学と実技によるライディングスクールを受講すれば利用できる。免許取得時に法規や運転するための基本操作は学んだものの、マリーナ周辺のローカルルールなどは分からないからレクチャーしてもらえるのがありがたい。

今回、借りたのはヤマハの『MJ-FX HO』。1.8リットルという普通乗用車以上の排気量を持つ4ストローク4気筒エンジンを搭載する3人乗り仕様で、ヤマハらしいスタイリッシュなデザインが気に入った。

水上に出ると、それだけで開放的な気分になる。もちろん水上にも交通法規があり、ルールを厳守するのは言うまでもないが、それを守っていれば好きなように走ることができる。当たり前のことながら、道路にくらべると川の上は交通量が圧倒的に少なく快適そのもの。なんという気持ち良さなんだろう、右手のスロットルレバーを引き、『MJ-FX HO』の強烈な加速を存分に楽しむのだった。

◆灼熱の陸を尻目に、涼しげな川面を進んでいく

海に出ると波は大きいが、『MJ-FX HO』は安定感抜群で、このまま大海原に出て行きたくなるほどに船体が落ち着いている。葛西臨海公園を経て夢の島、そして晴海の沖に出る。東京湾クルーズや隅田川を往来する水上バスを横目に見ながら、マリンジェットは余裕を持って追い越していける動力性能を持つ。

開通を急ぐ築地大橋、昭和55年を最後に開橋廃止となった勝どき橋、佃渡船のあったところに戦後架けられた佃大橋、何本もの鋼線が帆船のようにも見える中央大橋と、頭上に架かる隅田川の橋を下から眺めるのも新鮮な体験だ。そして、今回もっとも楽しみにしていた日本橋川へと進路を進めていく。

真上にはこの瞬間も間違いなく混雑し、クルマがひしめき合っているであろう首都高速がずっと屋根をするかのように続いているが、この差は何なんだろうかと不思議に思えるほど、自分がいる川の上はひっそりと静まりかえっている。『MJ-FX HO』には「クルーズアシスト」や「ノーウェイクモード」が備わり、スロットル調整をせずに一定の回転数での走行をサポートしてくれるから、日本橋川での最徐行も右手の微妙なアクセルレバー操作を不要とし、疲労を軽減してくれたからありがたい。

日本橋川最大級の江戸橋が、手の届きそうな距離で迫ってくる。それをくぐれば、次はいよいよ五街道の起点であり、日本国道路元標もある日本橋だ。都会の真っ只中にいるのに、人は自分しかいないから、まるでこの空間を独り占めしているかのよう。エンジンを切って見上げれば獅子像があり、やはりその上には首都高が覆い被さっている。こんなアングルから日本橋を眺めるのは初めてだから、しばらくここで佇みたい。

橋の上からはハンカチで汗を拭うサラリーマンが、こちらを不思議そうに見ている。日陰となっている水の上は涼しく心地良いが、炎天下の陸の上はさぞかし暑く不快なのだろう。いつもなら自分はあそこで働いている。今日は特別な1日、自分へのご褒美だ。

◆水上ツーリングに身も心もリフレッシュ

首都高速の屋根とオサラバすると、こんどは神田川へ。東京で生まれ育ち45年の自分には、右手の頭上には中央線、左側には東京ドームなどという具合に位置関係をイメージするのは容易いが、その見慣れた東京の景色に今回まったく新しい、水上からというビューが自分の記憶の中に擦り込まれることとなった。これは新鮮であり、センセーショナルな体験だった。

秋葉原へとマリンジェットを進めていくと、レンガ造りのマーチエキュート神田万世橋が右手の頭上に見えてきた。アーチ型のリズム感ある形がよくわかり、リバーサイドのテラスでは、水辺の空間で一息ついている人たちがやはりこちらを珍しそうに見ている。スマートフォンで撮影している人は、きっと外国人観光客だろう。少しだけアクセルを大きめに開けて、加速してみせるのだった。

情緒ある屋形船が所狭しと停泊する柳橋を抜けると、再び隅田川に至る。東京スカイツリーを横目に南下し、帰路へつく。南の島や海外で楽しむイメージが強かったマリンジェットだが、こうして東京のど真ん中で楽しめたのは新たな発見であったし、わずか3時間程度のクルージングで身も心もすっかりリフレッシュできたのがなによりも嬉しい。

水の上のツーリング、こんどは誰かを誘ってみようか。それともまた、ソロがいいかな……。いずれにせよ、癒されたくなったら、またマリンジェットを借りてみようと思う。

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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