ガソリン自動車遠乗り会110周年記念式典開催…国立を日本の自動車産業の芽生えの地へ

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タクリー号(レプリカ)とオートモビルクラブジャパン会長の是枝正美氏
タクリー号(レプリカ)とオートモビルクラブジャパン会長の是枝正美氏 全 8 枚 拡大写真

8月1日、谷保天満宮(東京都国立市)において、我が国初のガソリン自動車遠乗り会110周年記念式典が開かれた。

■110年前のドライブツアー

いまから110年前の明治41年8月1日、有栖川宮先導のもとに11台が都心の日比谷公園を後に甲州街道を下り、昼食会場となる谷保天満宮を目指す遠乗り会、いまでいうグランドツアーが開催された。参加したクルマはタクリー号3台のほかはフィアットやフォード、メルセデスなどの輸入車だった。

タクリー号はこの遠乗り会の前年となる明治40年、1907年に作られた日本初のガソリン自動車である。これは有栖川宮威仁親王殿下が東京自動車製作所の吉田眞太郎に作らせたもので、電気関係の部品とタイヤ以外はすべて日本製であった。価格は5000円で当時の輸入車より5割は安かったという。オーナーは有栖川宮をはじめ、井上薫、中上川次郎吉など当時の政財界の名士ばかりだった。

このタクリー号の試験走行も兼ねて行われたのがこの遠乗り会だ。昼食会場となる谷保天満宮の梅林には現在この記念碑が残されている。

■国立は日本の自動車産業の芽生えの地

谷保天満宮権禰宜の菊池茂氏は、「日本の殖産興業、その中に自動車産業を日本に根付かせ、日本を豊かに、そしてクルマという便利な交通機関を世の中に広めたいという思いからデモンストレーション的に遠乗り会が開かれたのだろう」と、当時の有栖川宮をはじめ参加した名士たちの気持ちに思いをはせる。

そこでは、「自動車産業について、そして、この梅林でオートモビルクラブジャパンという自動車クラブが設立されるなど、自動車に関する多くのことが語り合われた。そして神殿にて一同はこれからのクルマ作りが上手くいくようそれこそ真剣に拝んだと思う」と述べる。

実際にそこでは、長岡外史陸軍少佐は軍隊での自動車の利用を提唱、矢野恒太(第一生命の創設者)は、仕事で使う馬車や人力車は非文明的であり、また不便でもあることから、これからは自動車など文明的なものに変わっていかなければならないと述べ、そのためにはより安価な自動車を研究していかなければならないと、自動車工業の芽生えともいえる話し合いがもたれていた。

同イベント実行委員長兼オートモビルクラブジャパン会長の是枝正美氏は、「日本は世界的な自動車王国になったが、日本人の誰もが日本の自動車の歴史は国立から始まったというぐらいの意識を持ってもらえればうれしい」とこのイベントへの想いを語る。

■11月11日にイベントを開催

今後110周年を記念した企画がいくつか進行している。そのひとつが11月11日に開催される“国立HISTORICA G.P. 2018”だ。110年前と同じように11台の戦前車が日比谷公園を出発し、谷保第3公園までの遠乗り会を遂行。グラウンドで参集している世界の名車や旧車と合体し、クルマ文字で110を描くという。

是枝氏は最後に、「“日本の自動車工業芽生え地・くにたち”をキャッチーなフレーズにこれからの10年を再び歩んでいきたい」と語った。

今回の式典には遠乗り会に参加した孫やひ孫にあたる方々も臨席し、伝えられてきた話などを披露。今後、多くの史実が明らかになることを期待したい。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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