渋滞末尾で追突されないために、今できること【岩貞るみこの人道車医】

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渋滞末尾での追突事故を避けるために、岩貞氏が推奨することのひとつが「ハザードランプをつける」ことだという(写真はイメージ)
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◆渋滞末尾の追突事故対策

相変わらず起こる、高速道路上での渋滞末尾への追突事故である。

被害軽減ブレーキが装着されたクルマも増え、こうした、追突事故が減っているのは事実とはいえ、被害軽減ブレーキ=追突事故起こしません、というわけじゃない。タイヤの限界を超えれば、クルマは止まらない。

想定された速度よりも高かったり、クルマがフル乗車+荷物満載で重かったり、雨で路面が滑りやすかったりタイヤの溝が減っていてブレーキがききにくかったりすれば、止まらずにぶつかることになる。この点は、自動運転の開発者と話をしていても出てくるポイントで、本気で衝突事故をなくすなら上に逃げるしかない(ジャンプ!)という人もいる。ただ、上に飛び上がったあと、落ちてくるときにどう安全を確保するのかセットで考えなくちゃいけないから、これはこれでかなり難しい技術がいると思う。

渋滞末尾の追突事故は、乗用車がぶつかってくるなら比較的、軽微なものが多いけれど、問題は大型車である。大型車=重い=事故が大きくなる。2012年7月に、税関職員6名の乗るワンボックスカーが首都高湾岸線を走行中に渋滞にはまり、後続のキャリアカーに追突されて4名が亡くなるという事故が起きている。当時、私はこども用ノンフィクション本のために東京消防庁芝消防署の密着取材に入っていて、芝署の特別救助隊がこの現場に急行したことから記憶に鮮明に残っているのだが、前方の大型コンテナ車と、追突してきたキャリアカーにはさまれたワンボックスカーは、原型をとどめないつぶれ方だった。

乗用車よりも、衝突エネルギーの大きな大型車にこそ被害軽減ブレーキを。多くの人はそう思っているはずだ。きっと、事故を引き起こす側のトラックドライバーもそう感じていることだろう。ボンネットのない大型車の事故は、ドライバーの死亡率が高いのである。

◆今日明日の命を守るために

では、大型貨物自動車(車両総重量8トン超)の被害軽減ブレーキ装着率って、どうなっているのだろう? 国交省の資料によると、2007年にはほぼゼロだったものが、翌年から少しずつ動きを見せ始め、2012年には54.5%へとジャンプアップしている。そして、国交省の目標は、2020年にはこの数字を90%にしよう、というものである。

ただし! ここで気を付けなければいけないことは、これはあくまでも新車販売のときの装着率だ。要するに、走っているトラックの割合ではないということ。むう。大型トラックってたしか寿命が25年くらいあったよね……遠い目。とはいえ、始めなければ終わりなし。地道な努力も、いつか必ず成し遂げられると信じるほかはなく、国交省も運送会社などに対し、装置装着車への補助金を導入して買い替えを促進している。

高速道路では高い速度で走っているため、前方でなにかあったとき、気づいたときには遅かった、となりやすい。サーキットのように、イエローフラッグがふられて、事前にわかるようなシステムがあればいいのにと思うけれど、道路側の設備投資&維持費が膨大になって、とんでもない高速料金になりそうだ。ここはやはり、コネクテッド技術の出番だろう。車両同士が通信で教えあい、的確なタイミングで情報を伝える技術はすでに始まっているし、反対車線を走るクルマを介して後続車両に情報提供をするアイディアは、10年くらい前から研究されているはずである。

さて、未来の技術はともかく、今をどうするか。技術や被害軽減ブレーキ車両の普及を待っていても、今日明日の命は守れない。

1)ハザードランプをつける
2)渋滞末尾にぴったりつかない

私が推奨するのは、この2点の徹底である。ハザードランプについては、静岡県高速隊も呼び掛けているとおり、渋滞=高速道路上のある種の異常であり、後続車に知らせるための有効な手段である。さらに、実践してもらいたいのが、2)の部分。ぴったりついて止まってしまうと逃げ場がなくなってしまうので、前方に渋滞を見つけたら、安全を確認しながらすぐに速度をゆるやかに落とし(ここで急ブレーキをふんで、後ろから突っ込まれないこと!)、ハザードランプをつける。そして、後ろのクルマや2台後ろに大型トラックがいたらその大型トラックが速度を落としてハザードをつけるまでゆるゆると走り、渋滞末尾に止まる。これを徹底すると、かなりの確率で突っ込まれる危険性が減るはずだ。

週末からのお盆の高速道路は渋滞必至。どうか、ご安全に。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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