【アウディ TTS 海外試乗】ゆかりの地“マン島”で実感した、痛快ハンドリング…大谷達也

試乗記 輸入車
アウディ TTS 改良新型 海外試乗
アウディ TTS 改良新型 海外試乗 全 28 枚 拡大写真

マイナーチェンジを受けたアウディ『TT』の国際試乗会がイギリス・マン島で開かれた。ところで、マン島がTTというモデル名の由来になっていることを皆さんはご存じだろうか?

イギリスとアイルランドの間に浮かぶマン島では1907年以来、5月下旬ないし6月上旬にモーターサイクルによる公道レースが行なわれてきた。公道レースにもかかわらず平均速度が極めて高い(現在のラップレコードは平均で212km/hを越える)ため、“世界でもっとも危険なモーターサイクルレース”とも呼ばれるこのイベントこそ、マン島TTレースである(TTはTourist Trophyの頭文字)。

現在のアウディを形作った4ブランドのひとつであるDKWは1938年にULD250というモーターサイクルでTTレースに参戦、見事優勝を勝ち取った。また、戦後になってアウディ・グループに加わったNSUも1954年に250cc以下のクラスで1~4位を独占する大成功を収めた。以来、NSUは特別なスポーツモデルにTTの名を与えるようになり、1965年デビューのNSUプリンツ1000TTではこれが4輪車にも用いられるようになった。アウディTTはこうした伝統に根ざしたネーミングなのである。

今回は初代アウディTTがデビューして20年目の節目ということもあって、その生まれ故郷であるマン島で試乗会を行なうことになった。

マイナーチェンジ版の目玉はふたつ。ひとつはデザインが見直されたことで、もうひとつはドライブトレインが刷新された点にある。

デザインの見直しはフロントグリルがそれまでの水平バーから大胆なハニカム形状とされたのがいちばんの見どころで、そのほかにもチンスポイラー部のエアインテークに加飾が追加されたり、ヘッドライト内部の構成が改められたりした。いっぽうでインテリアに大きな変更点は見当たらなかった。

いっぽうのドライブトレインは、『TTS』を一例に挙げると最高出力が286psから306psへ、最大トルクが380Nmから400Nmへと向上したほか、Sトロニックと呼ばれるデュアル・クラッチ式トランスミッションが従来の6段から7段へと改められたのがポイントである。

マン島で試乗できたのは新しいTTSのみ。正直いってパフォーマンスの向上分は明確に感じられなかったものの、新しい7段Sトロニックはどんなコーナーでもぴたりとギア比があって小気味よかった。

それよりも痛快だったのがTTSのハンドリングで、フロント・エンジンであることが信じられないくらい車体のヨーモーメントが小さく、低速コーナーから高速コーナーまでストレスを感じることなく、狙いどおりのコーナリングを楽しめた。この点は、初代や2代目では味わうことのできなかった、3代目TTならではの魅力といえるだろう。

ところで、今回のドライブトレイン見直しは、ヨーロッパで導入された新しい排ガス規制“Euro 6d-TEMP”に対応するという意味合いが濃い。このため、同規制が実施されていない日本市場には、これまでと同じエンジンとギアボックスがそのまま搭載され、デザインのみが変更されるという。言い換えれば、現行のスタイリングがお好みの向きは、いまのうちにTTを購入したほうがいいともいえるのだ。ちなみにマイナーチェンジ版の日本導入は2019年初頭の見通しである。
アウディ TTS 改良新型と大谷達也氏
大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材す ることが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。

《大谷達也》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. マツダ、電動セダン『EZ-6』世界初公開、24年発売へ SUVコンセプトも…北京モーターショー2024
  2. 【ホンダ ヴェゼル 改良新型】開発責任者に聞いた、改良に求められた「バリュー」と「世界観」とは
  3. 多胡運輸が破産、首都高のローリー火災事故で損害賠償32億円
  4. Sズキが電動マッサージ器を「魔改造」、25mドラッグレースに挑戦!!
  5. 見逃せない! ホイールのブレーキダスト除去術 ~Weeklyメンテナンス~
  6. 郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
  7. トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開…北京モーターショー2024
  8. ホンダ『ヴェゼル』マイナーチェンジで3グレードに集約、納期改善へ…「HuNT」「PLaY」新設定で個性強調
  9. ノンジャンル220台のマニアック車が集合…第15回自美研ミーティング
  10. メルセデスベンツ『Gクラス』にEV誕生、4モーターで587馬力…北京モーターショー2024
ランキングをもっと見る