ADAS車両を使いこなす楽しみ---トヨタ クラウン 新型で探ってみた

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新型クラウンのADAS機能
新型クラウンのADAS機能 全 16 枚 拡大写真

軽自動車にも衝突被害軽減ブレーキが標準装備される時代、いわゆるADAS(高度安全運転支援システム)は特段珍しいものではなくなった。性能も安定してきた今、積極的に使うためのコツがある。また、足りない機能はなにか。そんな視点でチェックしてみた。

チェックした車両は新型『クラウン』の「RS Advance」(2.0リットルターボ)仕様。搭載されたADAS機能は、レーダークルーズコントロール、レーントレーシングアシスト(LTA)、プリクラッシュセーフティ(自動ブレーキ、衝突被害軽減ブレーキなどと呼ばれている)、ロードサインアシスト、先行車発進告知機能、ブラインドスポットモニターなどだ。

他にもアダプティブ入ビームシステム(自動的にハイ/ロービームの切り替えや対向車防眩配光調整)やインテリジェントパーキングアシスト(ステアリング操作のアシスト)、踏み間違え防止サポート(前進・後進対応)といった機能がある。

新型クラウン RS Advance
今回のレビューでは適切な比較環境、操作環境が用意できなかったのですべての機能を試していないが、ADAS機能を使う上での便利な点、使い方のコツ、注意点など改めて感じたことをまとめてみたい。

●クルーズコントロールは割り込み車両に注意して使う

昔のアクセルコントロールだけのクルーズコントロールと違い、いまのアダプティブ系、インテリジェント系クルーズコントロールは、一度使うと高速道路では欲しくなる機能だ。クラウンのレーダークルーズコントロールは単眼カメラとミリ波レーダーを併用するタイプ。高速道路で巡航している場合、他車、ステレオカメラ式との制御の差はほとんど感じられないが、先行車両が遠くてもレーダーによって測距できるためか、車間距離が100m以上でも追従制御に入ることがあった。


車両が2.0リットル・ガソリンエンジンのダウンサイジングターボのため(ハイブリッドではない)、加速制御はスムースでないかもしれないと心配したが、先行車との距離を見ながらの制御に違和感はなかった。例えば、割り込みなどでブレーキを踏んでオートクルーズが解除され、再び復帰(RESボタンを押す)するとき、前車との間が空いたからと急加速のような状態にはならない。

この手のクルーズコントロールは、状況が安定していればほぼ快適に機能を利用することができるが、合流地点や左右から車線に入ってくる車には要注意だ。センサーはかなり車線に入ってこないと前走車として認識しない傾向がある。ウィンカーを認識したり、車線変更も自動でやるようになれば、おそらくこのアルゴリズムは改善されると思われる。

●速度制御はアクセルだけとは思わない

クラウンクラスのオーナーの年代となると、クルーズコントロールやレーンキープアシストといった機能に違和感があるかもしれない。そのような人は、クルーズコントロールの車速は、アクセルで制御するものではなく、ブレーキとステアリングコラムのスイッチ(速度+-ボタンやRESボタンなど)で制御するものと頭を切り替えるとよい(もちろん高速道路だけだが)。

高速道路で運転中は、ステアリング操作とブレーキとあとは必要に応じてコラムスイッチで速度設定などを行う。すべてをクルーズコントロールにまかせる(ことができないから違和感につながる)のではなく、両手は進行方向と速度、足はブレーキをいつでも踏めるようにしておく。これだけで、高速クルージングの疲れがだいぶ違うはずだ。


このときブレーキを右足で踏む場合、右足のフットレストがほしくなる。クルーズコントロール有効時のみ、アクセルペダルを少し重くするようなしくみは導入できなだろうかといつも思う。

渋滞や混雑時は、クルーズコントロールの本領発揮場面といってよい。アクセルで細かい速度調整をする必要がない。設定速度を渋滞なりの流れのスピードにあわせれば、車間距離維持や加減速に神経をすり減らすことはない。自分が思っていない動きをしたとき、状況になったときブレーキを踏めばよい。

●ヘッドアップディスプレイはADAS運転に必須

ADAS機能を積極的に使うとき、便利なのはヘッドアップディスプレイ(HUD)だ。トヨタは一時、センターメーターを、運転中の視点移動が少ないコックピットとして推していたが、個人的にはあまり見やすいとは思っていなかった。その点、運転席正面のガラスに浮かび上がる表示は、視点移動はほとんどなく、焦点移動だけでものを見ることができるので便利だ。

視界に入る文字が気になるという意見もあるが、人間の目は見ようと思っているものしか認識しない傾向がある。個人差はあるが慣れの問題でもある。

ヘッドアップディスプレイ:個人的にはもう少し下に表示させたい
ヘッドアップディスプレイは、ルーズコントロールの速度設定や、センサー類がいま何を認識しているのか(先行車を認識している。車線を認識しているなど)など、ADAS機能の状態がすぐに確認できる。アダプティブ/インテリジェント系クルーズコントロールには必須機能としてもいいくらいだ。

余談だが、ADASにしろ、レベル4自動運転にしろ安全にとって極めて重要なのは、ドライバーがクルマの状態を把握できているかどうかだ。レベル4でステアリングやブレーキの操作が必要ない状態でも、無人カーでないかぎりどこかでドライバーに運転を引き継ぐ必要がある。そのためには、ドライバーが意識を運転に集中していないときも、操作に戻るタイミングを考慮したワーニング等で、交代シーケンスに移る必要がある。

●HUD活用はシートポジションが要

ヘッドアップディスプレイ(HUD)も使ってみると、なかなか手放せなくなりそうな装備だが、やはり視認性や表示位置などにもよる。自分の場合、クラウンのシートは座面が高いのと、背もたれの角度がドライビングポジションを取りにくいものだったため、シート調整が大変だった。同様なディスプレイでもメルセデスのHUDは、自分にとって自然なドライビングポジションで視認性に問題なかったのだが、クラウンはコーナーで体を持っていかれると表示が切れたりしていた。


クラウンの電動シートは調整幅が広く、ステアリングもテレスコ調整ができるタイプだったので事なきを得たが、トヨタ車のドライビングポジションの設計は、どうも背もたれをなるべく寝かせて運転させるスタイルらしい(自分は背もたれはなるべく立たせて、ステアリングの一番遠いところでも肘が伸び切らない姿勢が好み)。他のトヨタ車でもいつもドライビングポジションに苦労する。

●近接警告もうるさいだけではなくなってきた

地味な装備だが、やはり便利と思ったのはサイドミラーのブラインドスポットモニターだ。後方の左右車線から接近する車両を検知し、ミラーに警告ランプを表示してくれる。このときウィンカーをその方向にだしていると警告音と合わせて注意を促してくれる。左右両方のミラーについているので、追い越し車線側の死角と、左側からのすり抜けバイクなどに有効だ。

パーキングアシストは十分に試す機会に恵まれなかったが、アラウンドビューモニターと車両幅と進行方向のガイド表示もコンパクトカーにも普及してきた便利機能だ。バンパー等の超音波センサーによる近接警告とあわせれば、ボディサイズを感じさせない車庫入れが可能だった。近接センサーで便利だと思ったのは、コンソールやインパネの表示だけでなく、音声で「右前方です」「後方です」と案内してくれることだ。警告音だと、どこがぶつかりそうなのかわからないことがある。


自分でわかっていて寄せているのに警告されると、正直うるさいと思ってしまうが、場所を言ってくれると「よかった」と思うこともある。センサーはドライバーの死角をカバーするように配置されているので、センサーの警告をあまり過小評価しないことだ。センサー付きのバンパーはこすったり、ちょっとしたズレでもうまく機能しなくなる。本末転倒ではあるが、修理代も高くつくので装備されているならなるべく使いたい。

同様に地味だが便利だったのは、センターコンソールのスマホトレイに内蔵されたワイヤレス充電器。クルマに乗ったらスマホを置くだけで走行中に充電ができる。ケーブルをいちいちつなぐ必要がなくすこぶる便利だ(ただしスマホ側はQi方式のワイヤレス充電に対応している必要がある)。

フロントの超音波センサー他。車両の影になった歩行者なども検知する
筆者個人は、いまだにMT車の運転は楽しいと思うし、制御がダメダメなADAS機能はためらわずOFFにしている。全体としてはまだ市場形成を含めて発展途上であり、中途半端な実装、操作性の悪さから使う気にならない機能も存在する。最大の問題は、うまく使えば安全で快適になるのに、大衆車ではカメラやセンサー数に制限があったり、クラウンや高級輸入車のように「全部入り」とはならない点だ。自動ブレーキのようなプリミティブな機能以外は、やはり組み合わせによってより安全性や快適性が増すからだ。

とはいうものの、ADAS機能も各社のナレッジの蓄積も進み、かなりこなれた技術となってきた。あくまで運転をサポートしてくれるものとして、機能の特性や性能を理解すれば、逆にそれをうまく使いこなす楽しみも生まれてくる。

《中尾真二》

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