FOMMが目指す、新しい乗り物としての価値の確立

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FOMMバンコク・ショールーム
FOMMバンコク・ショールーム 全 5 枚 拡大写真

今年(2018年)のバンコクモーターショーで、初の商品となる『FOMM ONE』(ワン)の受注をスタートさせたFOMM。発売に向けてバンコク市内にショールームを開設したと聞きつけ、さっそく訪れてみた。

◆小売販売店ではない

FOMMは、3月末のバンコクモーターショーでFOMM ONEを正式発表。価格も公表すると同時に受注も開始した。現在は年末のデリバリー開始に向けて準備を進めているところだ。そんな折にショールームは、バンコク市内のトンロー地区に開設された。バンコク中心部のサイアム地区から東へ5kmほどの距離で、日本人駐在員も多く居住するエリアだ。

ショールームを訪れると、質素なたたずまいに少々驚かされた。日本の新車ディーラーのような雰囲気ではなく、どちらかといえばオフィスビルの1階をショールームとして使っている、といった趣。実はここはショールームや商談スペースは備えているものの、販売拠点として整備したものではないという。

現地法人FOMMアジアのゼネラルマネージャー、タナナン(デイビッド)カンジャナクハ氏によれば、ここはタイをはじめとして、アジア諸国でのビジネスを手がけるオフィス機能がメインなのだという。「もちろん購入希望者がここへ来て、商談を進めることもできます。ですが、ここで積極的に客を呼び込むようなことはしません」とデイビッド氏。

中2階に接客スペースがある。

◆新しい商品には新しいアプローチが必要

それでは、実際にはどのような販売戦略を掲げているのだろうか。デイビッド氏は、モーターショーをはじめとしたさまざまなイベントに出展することを考えていると明かす。「車両を実際に見て、触れて、試乗で体感してもらうことを重視しています」とのことだ。

ただし、従来型の販売手法を軽視しているわけではない。この2月にFOMMアジアはPEA(タイ地方配電公社 )の子会社、PEAエンコムと覚書を交わし、PEAエンコムが販売店を展開することになった。

EV用の充電インフラがまだまだ整っていないタイでは、一般ユーザーがEVに手を伸ばすというのは敷居が高い。ましてそれがマイクロカーであればなおさらだ。しかし電力供給インフラの末端にパーソナルモビリティが位置づけられている、という考え方であれば、ライフスタイルのひとつとして受け入れられる可能性は大きくなる。

「FOMM ONEは従来型のクルマではなく、新しい乗り物です。だから売り方やユーザーとの関わりかたも、クルマとは異なるはず。新しい市場に、新しいアプローチをしていきたい」とデイビッド氏は説明する。

◆法人ユーザーも視野に入れた戦略

また「新しい使い方を提案して、市場を拡大したい」とも語る。たとえばPEAグループとは、電線の保守点検に使う研究を進めているという。ルーフにビデオカメラと赤外線サーモグラフィを設置し、走行しながら漏電や断線をチェックするというものだ。

現在は通常のピックアップトラックを使用しているが、市街地で低速走行を続ける必要がある。これを電動マイクロカーに置き換えれば環境負荷を低減させつつ、同時に小回りが効くことで効率向上も期待できるというわけだ。

このほか観光地でのレンタルやシェアリング、官公庁や自治体の公用車といったニーズも探っているところだという。これはタイ国内に限らず、他のアジア諸国でも展開できないかと可能性を探っている段階とのこと。

◆メッセージの伝えかたをデザインする必要性

なお、このバンコクのショールーム兼オフィスでは、プロダクトデザイナーとグラフィックデザイナーを募集している。業務内容はボディのスタイリングやグラフィックだけではない。「新しい乗り物ですから、まずは知ってもらうために、積極的に情報を発信していかなければなりません。そのメッセージの伝えかたをデザインする必要があるのです」という。

そして「販売促進に使うポスターやパンフレット、ディスプレイなどもしっかりデザインして、ブランドイメージを高めたい」とデイビッド氏。ちなみにデザイナーはタイ語が話せなくてもOK、英語でコミュニケーションできればよいとのこと。

展示中のONE

◆「日本の匂い」をブランドの個性にする

メッセージのアイデアのひとつとして、デイビッド氏は興味深い提案をしている。それは「日本風のスタイルやグラフィックを使って、日本の匂いを出したい」というもの。日系メーカーだから実現できる高品質を、雰囲気やイメージでさらに強化して伝えようというわけだ。

トレンドの先端を追いかける日本のデザイナーはしばしば「いまさらベタな日本っぽさを見せるなんて、ダサいよね」という主旨の発言をするが、市場によってはその「ベタ」な感覚が強力な武器となるということを忘れてはいけないだろう。

そしてその「日本っぽさ」の一例として「ゆるキャラ」のようなマスコットキャラクターを作る、というアイデアを挙げたこともまた興味深い。「ゆるキャラは日本で、幅広い層に受け入れられています。誰にでも簡単に認識してもらえて、忘れられづらい。FOMMはそうしたキャラクターを通じて、あらゆる人に親しまれる存在になりたいのです」とデイビッド氏。

しかし海外展開やキャラクター展開よりも先に取り組むことがある、という。「なによりまず生産体制を整え、予約して待ってくれている人へデリバリーすることが最優先です。その目処が立ったら、次の展開に取り掛かりたいですね」とのことだ。

《古庄 速人》

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