【スバル フォレスター 新型試乗】ファッションではない本格走破性をもつSUV…井元康一郎

試乗記 国産車
スバル フォレスター 新型でオフロードを走る。このタイヤの埋まり方でもサマータイヤでクリアできる。
スバル フォレスター 新型でオフロードを走る。このタイヤの埋まり方でもサマータイヤでクリアできる。 全 20 枚 拡大写真

スバルのCセグメントSUV、新型『フォレスター』をクローズドコースにてテストドライブしたので、ファーストインプレッションをリポートする。

この9月に発売が開始された新型フォレスターは1997年にデビューした初代から数えて第5世代にあたる。スバルは一昨年の『インプレッサ』から新世代アーキテクチャ「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」を使ったクルマづくりを展開しており、フォレスターは『XV』に続く3つめのSGPモデルである。

テストドライブしたのは2.5リットルガソリンエンジンモデルと、2リットルに出力10kWの電気モーター1基を組み合わせたパラレルハイブリッド「e-BOXER」モデルの2つ。テストドライブの場所は伊豆・修善寺のサイクルスポーツセンター舗装路およびオフロードコース。

めざしたのは「最高の乗り心地」


まずは舗装路。ここでは2つのパワートレイン、および旧型の第4世代の3つを比較する形でテストドライブできた。最初に乗ったのは2.5リットル現行型であったが、スバルの開発者が「最高の乗り心地を目指した」と言うのも道理というくらいに滑らかなドライブフィールだった。

サイクルスポーツセンターは補修によって路面が綺麗になってしまったため、老朽化路線のようなシチュエーションを体感する機会はなかったが、途中に1か所ある大きな路盤の継ぎ目の乗り越えや小さな破損箇所を踏んでみたかぎりにおいては、決してオーバーではなく高級サルーンのようにスムーズなホイールの上下動ぶりであった。

もうひとつの美点はナチュラルなロール感。フロントサスペンションがきわめてしなやかで、前が沈み、その直後に後輪に横Gがかかるというプロセスが穏やかに発生。このクルマの動きのわかりやすさであれば、高重心のSUVであっても山岳路をストレス極小で駆けることができるのではないかと思われた。

新鋭の2.5リットル直噴エンジンは、普通に走らせるには十分なパワーであるように思われた。ただし、それは必要十分の域であって、2リットルターボのような過剰なパワーは持ち合わせていない。騒音・振動はきわめてマイルドで、精度良く組まれているというフィールであった。
スバル フォレスター 新型

「e-BOXER」の走り


次に乗ったのは日本市場をメインターゲットとし、目下、販売の4割を占めるというハイブリッドのe-BOXERモデル。実はシャシーセッティングは2.5リットルと明らかに異なっており、フロントサスペンションのロール剛性がかなり高めに設定されていた。ステアリングを少し切ったときの鼻先の反応は2.5リットルに比べて鋭い半面、スムーズなロール感という点では2.5リットルに後れを取っており、乗り心地も若干だがスムーズさを欠いた。

どっちが好ましく感じられるかは人それぞれであろうが、個人的には2.5リットルのほうが格段にいいと思った。ロールセンターが高く、乗車位置も高いSUVで前サスペンションのロール剛性を上げると、身体にかかるGが真横方向に近くなるため、コーナリング時の振られ感が大きくなる。せっかく素性のいい動きなのだから、素直にロールさせてサスペンションのジオメトリー変化を生かした走りを楽しむセッティングのほうが、むしろスポーティに感じられると思う。

旧型との比較は


3番目は比較のためにスバルが持ち込んでいた旧型だったが、いざあらためて乗ってみると、これが思ったよりいい。乗り心地や静粛性では新型2.5リットルにやや負けているが、これはこれでとても素直、かつダイレクト感もある動きだ。

もちろんクルマには旬というものがあるので、新型に乗りたいという顧客も多くいることであろうが、得られるプレジャーの方向性は似たようなものなので、旧型に乗っている人は無理に買い換えなくてもいいのではないかと思った。1世代飛び越しなら文句なしに新型がおススメであるが。

オフロードは「クルマまかせ」


続いてオフロード。試乗日は折からの雨で、コースは最高にぬかるんでいた。そこをマッドアンドスノーですらないサマータイヤのまま走ると聞いて大丈夫なのかと思ったが、驚いたことに25度の登り勾配や片輪だけがグリップする下り急勾配も含め、何の問題もなく通過できた。

新型フォレスターは路面コンディションをボタンで選択するだけで、トラクションコントロールや駆動力配分を最適に制御してくれる「X-MODE」なるスイッチが新設されている。タイヤが埋もれるくらいのぬかるみということで、「DEEP SNOW・MUD」を選べばいいのかと思いきや、同乗のスバルエンジニアいわく「この程度ならSNOW・DIRTで十分ですよ」と。

実際に走ってみると、こんな道をよくもサマータイヤでと思うくらいスイスイと走れた。片輪浮きのみならず、対角線の2輪浮きが生ずるような場所もあったが、そこもまるで簡単な道であるかのように通過することができた。
2輪のグリップが同時に失われるような局面でも駆動力は失われなかった。
ただし、ドライバーがクルマの滑りに合わせてステアリングを操作したりすると、かえって動きが乱れる。「普通だったらハンドルを切りたくなるところをあえて中立のまま強引に行くとクルマがちゃんと制御してくれます」とエンジニアがアドバイスをくれ、本当に大丈夫なのかと思いながら言うとおりにしたところ、旋回しながらの登り急勾配もクリアできた。

ちなみに、空き時間に試しにX-MODEを切り、普通のフルタイム4×4の状態で同じコースに挑んでみたところ、それでもちゃんと全線走破できた。驚くべき基本性能である。そのさいは状況に合わせてステアリング操作をする必要があるが、古い時代の4×4ドライビングテクニックが身についた人にとっては、このほうが自然に感じられるかもしれない。

日本では積雪路や4×4トレイルコース以外にこの性能を試す機会はそう多くはないだろうが、ファッションではない本格走破性を持つSUVに関心があるカスタマーにとっては、大いに訴求性のあるモデルに仕上がっているように思われた。
ディセンドブレーキを効かせながら、片輪のみグリップする急勾配を下る。安定感は抜群だった。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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