プラモデルは製品の魅力を伝えるツールになる…タミヤ「1/12ヤマハ YZF-R1M」発売イベント

モーターサイクル エンタメ・イベント
ヤマハR1Mとともに
ヤマハR1Mとともに 全 18 枚 拡大写真
タミヤはヤマハ『YZF-R1M』の1/12スケールプラスチックモデルを9月中旬に発売。これを記念して、22日に実車の開発責任者と担当デザイナー、そして模型の設計担当者によるトークショーが開催され、開発時のさまざまな秘話が公開された。

会場となったのはタミヤのオフィシャルショップ、タミヤ プラモデルファクトリー新橋店(東京・新橋)。ヤマハ発動機PF車両開発統括部SP開発部SP設計グループの平野啓典氏、GKダイナミックス動態デザイン部の坂田功氏、そしてタミヤ企画開発部の荒木茂樹氏の3人が、満席となった2Fのイベントスペースでトークを展開した。

イベントは2部構成で、まず平野氏と坂田氏が2015年に発売されたR1シリーズ開発時のエピソードを披露。「1998年に発売した初代R1はセンセーションを巻き起こしたが、その後に他社からスーパースポーツモデルが相次いで登場し、1000ccスーパースポーツが群雄割拠。海外勢が高スペックでサーキット寄りのモデルを出し、市場を席巻する時代になった」と平野氏。そこで「いま一度、こうしたライバルに挑戦するという思いで、新型の開発をスタートさせました」と振り返る。

「軸足をワインディングからサーキットに変更し、“No Excuse”(言い訳はしない)というキーワードを掲げて開発にあたっています」とのことで、その一例としてブリヂストンと共同開発した専用ハイグリップタイヤを挙げた。そのトレッドパターンは「プラモデルでも忠実に再現されている。これにはブリヂストンの技術者も感動するのではないでしょうか」とのこと。

またR1Mのアルミ製フューエルタンクは職人の手作業でバフがけされているが、最初は指示が曖昧だったために鏡面のようにピカピカに仕上げられてしまったとか。これではスポーツイメージではないため「もっと粗くしてほしい」と要望を出し、1台ごとに表情の異なるヘアライン仕上げが実現したという。「さまざまな部署のメンバーがそれぞれの挑戦をして、その結晶が商品となっています。プラモデルを組み立てる時には、そうした作り手の思いを感じ取ってもらえると嬉しい」とのことだ。

いっぽう坂田氏は、現行モデルは「R1史上、もっともスケッチを描かなかった車種」だという。最初のデザインミーティングに3枚のスケッチを提出したところ、それで方向性が決まったとか。「ヘッドライトをノーズ下方にレイアウトすれば、マスの中心化を図りつつ、アッパーカウルの造形自由度を高めてレースモデルと同じ顔にできる。これで初代が登場した時のインパクトや独自性を、もう一度表現できる」という狙いがすぐさま受け入れられ、その後はアイデア展開に悩むことなくデザインを進められたというわけだ。

「モーターサイクルは、実車だけでは世の中に魅力を伝えきれない」と坂田氏。まず2輪免許を取得しなければ、実際に楽しさを体感することができないからだ。「こうしたときに、プラモデルなどの存在が大きな武器になる。実車ではできない部分を補い、いっしょになってモーターサイクルの世界を拡げてくれれば」と語った。

続く第2部では、プラモデルの設計を担当した荒木氏が開発時の裏話を披露。R1Mを取材したとき、カウルを外して内部構造を見たときは「どうやって設計したらいいんだろう?」というのが第一印象だったとか。機能パーツに複雑な形状のカウルが部分的に張り付いたようなデザインは、模型としての部品分割を難しいものにしていたようだ。

「プラモデルの樹脂の肉厚は平均で1mm。1/12スケールから実寸大に拡大すると12mmということになる。しかし実車のカウルはもっと薄い。だからいかに薄く感じさせ、本物らしく見せるかが重要でした」と荒木氏。

カウルの内側に隠れる部分は、スケールダウンする際にカウルの肉厚を考慮したサイズにしなければいけない。しかしそれに従うだけでは、カウルに隠れず露出した部分のサイズ感がおかしなものになってしまう。スケールモデルは、ただ実物を縮小するだけではダメなのだ。重要なのは「実車と同じ」ことではなく「実車と同じに見える」ことだと荒木氏。

さらに別の例として、実車では別々の部品となっているメインのフレームとシートフレームを、プラモデルでは一体化させていることを紹介。「別パーツにすると、しっかり接着するための面を確保した形状にしなければいけない。だから造形の再現度を高めるために、あえて一体化しました」と説明する。

模型化する対象を取材する時には「どんな部品分割にしようか」と考えているが、設計時には「実車のそれぞれのパーツがどんな機能を持っているのか。これを組み立てているときにわかるように、という気持ちでやっています」という。「各部品の材質や、製法ごとに異なる質感や表情を大事にして、再現するように心がけています」とも語っている。

R1Mには「高い志が感じられた」と荒木氏。設計する際は、この志をいかに1/12スケールで表現するか、ということに注力したという。「実際の高性能を感じ取れるように、各部品を設計した」と振り返る。「(実車は)こういう構造なんだ、ということを考えながら組み立ててもらえれば、と思っています」と結んだ。

プラモデルの楽しみかたはさまざまだが、スケールモデルには模型を通じて実際の製品の魅力や特長を伝え、広く親しんでもらうという機能もある、ということなのだろう。

《古庄 速人》

この記事の写真

/

ピックアップ