アウディ クワトロ のDNAをまとった A8[デザイナーインタビュー]

フェンダー周りやキャビンの位置でクワトロのDNAを表現

ラグジュアリーセグメントにおける新たな基準を

ライトで未来感を表現

キャラクターラインで動きを表現

AUDI AGエクステリアデザイナーのアマール・ヴァヤ氏
AUDI AGエクステリアデザイナーのアマール・ヴァヤ氏全 26 枚

アウディのフラッグシップ、『A8』がフルモデルチェンジした。そのデザインはアウディの新しいデザイン哲学がベースとなっているという。そこで、エクステリアデザイナーが来日したのを機に、A8のデザインについて話を聞いた。

フェンダー周りやキャビンの位置でクワトロのDNAを表現

AUDI AGエクステリアデザイナーのアマール・ヴァヤ氏は31歳の若手デザイナーで、今回のA8が初めてフルに関わったプロジェクトであるという。まずは彼からアウディの新しいデザイン哲学について説明してもらおう。

「デザイン部門の責任者であるマーク・リヒテは、アウディ『クワトロ』のDNAを使って次世代のクルマを開発するという課題を我々に課した」という。その理由は、アウディの歴史上、世界的な自動車メーカーとして認知されたのがこのクワトロの発表で、アウディ自身もそう認めている。そこで、「このデザインDNAを新しいデザイン言語に取り入れることで新たなステップを踏み出そうと考えた」と述べる。

クワトロは四輪駆動を意味している。これを表現するために、「伝統的な角ばったホイールアーチを現代流に解釈し、これをデザインの基礎として各ホイール上のブリスターという形で表現した」と説明。

もうひとつの要素として、クルマの中央部でキャビン全体のバランスを取ることが挙げられた。つまりクワトロ(4WD)であることからFRのようにキャビンが後ろ寄りでも、FFのように前寄りでもなく、「中央でバランスさせることで我々のアイデンティティをさらに強調しているのだ」という。
アウディ A8のカタログの表紙はヴィア氏の手になるものアウディ A8のカタログの表紙はヴィア氏の手になるもの
実はこういった要素は2014年のロサンゼルスモーターショーで発表された『プロローグコンセプト』で表現され、このモデルが「新しいアウディデザインの方向性を示し、今後のアウディがどのような造形になるのかを、世に知らしめると同時に今後登場する市販モデルのデザインエレメントを暗示している」と話す。

ラグジュアリーセグメントにおける新たな基準を

今回手掛けたA8のデザインについてヴァヤ氏は、「アウディの歴史的な資質(前述のDNA)を受け継ぎながら、さらに一歩前進させる必要があると考えた。そこで、洗練、エレガンス、先進性、そしてスポーティさを表現することを目指した。つまり我々はA8で威風堂々としたデザインを実現し、ラグジュアリーセグメントにおける新たな基準を設定したいと考えたのだ」と述べる。
グリルデザインの説明グリルデザインの説明
まずアウディとして最も特徴的なデザインとなるシングルフレームグリルは、アウディのアイデンティティであると同時に、「A8ではそのプロポーションを変更することで幅広さを強調し、力強さを表現した。そうすることで100m離れたところから見ても、アウディの新しい顔であることが明確にわかるだろう」とその完成度に自信を見せる。

また、「このクルマのプロポーションはフロントから見ると自信に溢れ、リアから見るとヨットを連想させるような、(幅を絞り気味の)テールデザインによって今にも走り出しそうな印象を与える。さらにリアのヘッドスペースを損なうことなく滑らかなルーフラインを描き、クーペのような印象を与えている」と詳細を説明。
アウディA8デザインスケッチアウディA8デザインスケッチ
そして、「ホイール上のブリスターがパワーと力強さを追加し、彫りの深いショルダーラインが重心を大幅に引き下げることによって路面をしっかりつかむ視覚的印象を生み出している」と話す。そして、「我々はこのデザインによってA8の魅力をさらに引き上げ、クルマが備えている先進的な機能を完璧に表現することができたと確信している」と語った。

グレート!!

さてここからは、直接ヴァヤ氏により細かく話を聞いてみよう。

----:アウディA8を初めてメインの担当としてデザインしたそうですが、任命された時にはどういう気持ちでしたか。

ヴァヤ氏(以下敬称略):グレート!! フラッグシップですし、非常に重要なクルマですから本当に嬉しかった。実は競争して勝ち取った役職でもあるのです。従って初めてのプロジェクトですが、本当に素晴らしいプロジェクトに関われたと思っています。
アウディA8デザインスケッチアウディA8デザインスケッチ
----:その競争とはどういうものだったのですか。

ヴァヤ:オープンな競争(いわゆるコンペ)ですので、希望すれば誰もが参加することは可能でした。その中から6案が残り、その全員がクレイモデルを作り、そこで残れば最後プロジェクトとしてクルマを仕上げることになります。そこで最後まで残ったのは私たちの案でした。

----:その中でヴァヤさんの役割はどういうものだったのですか。

ヴァヤ:私は年齢が若かったのでどちらかというとサポート役でした。我々のチームのリーダーが色々なデザインを開発しているのを見ながらなるべくそこから学んで、吸収しようとサポート的な役割として働いていました。

上司、我々はガイドと呼んでいますが、その先輩と私で一緒にチームとして働きました。マーク・リヒテにはA8をこうしたいという明確なビジョンがありましたので、それを学びながらやり直していったのです。
アウディA8デザインスケッチアウディA8デザインスケッチ
そうそう、実はプロローグコンセプトが最初にあったのではありません。A8、『A6』、『A7スポーツバック』などのデザイン作業の途中でできたものなのです。プロローグコンセプトは何の制限もなく、自由に描くことができたならばアウディとしてはこのように作るというクルマなのです。そうはいっても比較的現実的に作られたもので、何でもいいからとクレイジーに絶対にできないものをやったわけではありません。

----:コンペに提出したデザインスケッチで一番大事なものは何だったのでしょう。

ヴァヤ:フィーリングが非常に重要だと思っています。もちろん色々なラインがあるわけですが、それらの意味合いよりも、感覚的なフィーリングがとても重要なのです。A8では、洗練されており、将来に向かって前進していくようなモデルであること。また非常に品質も良くラグジュアリーなイメージも必要で、それらが盛り込まれていました。

ライトで未来感を表現

----:未来感や先進性ということですが、そこを強く打ち出した部分はどこでしょう。

ヴァヤ:未来感を出す上ではライトが非常に重要です。ライトはとても先進的ですごくパワフルですので、このライトから将来に向かう先進性を表しています。
アウディA8デザインスケッチアウディA8デザインスケッチ
またボディ表面においてかなり詳細が表現できるようになりました。例えばシャープなラインなどもかなり表現できるようになっていますので、表面の仕上げでもかなり未来感を表していると思います。

私の仕事としてひとつのクルマを仕上げるために、ライトをはじめ、ボディ、ホイールやカラーなども含めて全部一体感があるかどうか。そういったことを責任を持ってまとめ上げるのが私の役割でもありました。

キャラクターラインで動きを表現

----:そのボディラインで具体的に重要なポイントを教えてください。

ヴァヤ:ウィンドウ下のベルトラインがメインラインのひとつで、これがすごく重要です。もうひとつはショルダーラインも重要です。それらのラインでイメージが変わってしまいますからね。例えば角度をつけると前のめりになりますし、逆にするとリラックス感も出ます。アウディとしては中立な形としてバランスよくまとめ上げました。
アウディA8デザインスケッチアウディA8デザインスケッチ
A8ではフロントとリアのシルエットは、フロントはどちらかというと真っ直ぐにして、後ろは少し斜めにしています。そうすることで動きが表現されるからです。両方とも真っ直ぐにしてしまいますと、箱形で全く動きが表現されず止まってしまっていると感じられてしまいます。

----:では、ハイエンドモデルとしての高級感、プレミアム感はどこで演出しているのでしょう。

ヴァヤ:まずアウディですから、スポーティさや信頼性といったものは全部出そうと思いました。そして、プレミアム性については様々なとらえ方がありますが、アウディに乗っているお客様であればスポーティや信頼性といったものを全部持っていることが、その人にとってのプレミアム性になると思います。従って洗練さや先進的、スポーティ、ラグジュアリーなどを全部まとめてひとつのデザインで表現したのがA8なのです。

----:最初に作られたA8のモデルと現在のモデルと比較するとどのくらい最初のイメージが生かされているのでしょう。

ヴァヤ:色々生かされていますよ。例えばグリルですが、元々のシングルフレームグリルに基づいてデザインし、もっと幅広にプロポーションを仕上げていこうと左右の上側に角度をつけました。これがあると非常にグリルが大きく感じられ、同時にランプ部分を大きくできました。この斜めの部分があることによってスペース的にもすごく上手くはまったのです。これは最初のコンセプトの時からすでに考えていたことです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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