ヤマハの農業ドローン、275万円から…なぜドローン?その優位性、資格の必要は

ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会
ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会全 24 枚

「市街地や住宅地などにある、小規模な田畑・農場や個人使用をターゲットに、二重反転ローター採用ドローンを広めていきたい」

無人ヘリコプターや無人ボートなどを手がけてきたヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、二重反転ローターを採用した農業用ドローン(マルチローター)『YMR-08』を2019年3月に発売。また、この農業用ドローンの本格展開にあわせ、農薬散布ドローンスクール「ヤマハマルチローターアカデミー」も開設する。

「30年以上にわたり、産業用無人ヘリを提供してきたヤマハが、この農業用ドローンで狙うターゲットは、小規模圃場と個人使用というシーン」と話すのは、ヤマハ発動機ソリューション事業部の遠藤征寿氏。10月26日に開いた記者発表会で、農薬無人散布の実態や、今回の農業用ドローンの開発背景、世界展開、新しい農業スタイルといった話題に触れた。

信頼性、安定性、操縦性、散布性

ヤマハ発動機 農業用マルチローター YMR-08ヤマハ発動機 農業用マルチローター YMR-08
来年春に登場するこの農薬散布用ドローンYMR-08は、メーカー希望小売価格が275万4000円。1回のフライトで1ヘクタール(約15分)の連続散布と、同社産業用無人ヘリ(以下無人ヘリ)に匹敵する高い散布品質を兼ね備える新機材だ。

遠藤氏は、「これまでの無人ヘリは、請負業者や大規模圃場のシーンで活躍してきた。今回は、小さな農場や個人使用をターゲットとした農業用ドローンで、防除事業の領域を広げていきたい」と語り、YMR-08のスペックや特長についてこう語った。

「日本企業と共同で開発したバッテリーとモーターの信頼性、1つのモーターが止まっても飛行を継続できる安定性、自動クルーズ機能を兼ね備えた操縦性、そして他社にはない二重反転ローターによる散布性能や、確実なパーツ供給体制と特約店ネットワークによるサポート体制」

モーターを保護しながら、ムラなく無駄なく根もとまで

ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会
YMR-08に搭載される大容量高出力バッテリーは、TDKと共同開発。電池の状態を監視するハイパワーバッテリー用マネジメントシステムを装備し、ワンタッチ脱着ですぐに作業に入れるのが売り。また日本電産と共同開発した小型軽量モーターは、モーター温度が上昇すると焼損防止保護モードに入る機能がつく。

また、速度維持機能(自動クルーズコントロールモード)や、自動ターン機能(自動ターンアシストモード)を適宜選択すれば、より均一でムラのない散布精度を実現し、操作による疲れも軽減できる。自動ターン機能は、散布スイッチのオンオフ切り替えだけで、一定間隔を保ったままターンと往復を繰り返してくれる。

そして、ヤマハ独自の技術が、二重反転ローター。上下のローターが互いに逆に回転し、力強い下降気流を発揮。このダウンウォッシュで、作物の根もとまで薬剤が届き、薬剤の飛散も防げるという。

有人ヘリから無人ヘリへ、ヘリからドローンへ

ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会
そもそもなぜ、農業の現場ではこうした無人作業デバイスが求められているか。ヤマハによれば、1990年に50代だった日本の農業就業者の平均年齢は、現在66歳を超え、農業就業人口は同期間で480万人から200万人前後まで減少。日本の農業は、農薬散布作業の省力化・効率化が求められているという。

また、水稲の現場では、有人ヘリによる空中散布面積と、無人ヘリのそれが2003年に逆転。国内水稲作付面積のうち、ヤマハの無人ヘリによる空中散布カバー率は、全体の半分に迫る勢いで増加しているという実績も後押し。大きな農場では無人ヘリが実績をつくり、今後はドローンが小さな農場や個人使用シーンに入り込んでいく……と。

技能認定証取得もヤマハがサポート

ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会
「かんたん、正確、安定」などが売りの農薬散布用ドローンYMR-08だが、誰もがすぐに操縦できるというわけではない。YMR-08を購入するには、農林水産航空協会が交付する産業用マルチローター技能認定証が必要だ。ヤマハは、この技能認定証を取得できるドローンスクールも展開させる。

同社のヤマハマルチローターアカデミーは、学科と実技による実践的学習に加え、eラーニングやヤマハ独自開発による専用シミュレーターでの疑似体験などが含まれる。農薬散布パターン練習もついて、5日間コースの教習料は26万円(別途認定証交付料1万5000円)。全国25か所のヤマハマルチローターアカデミーで受講できる。

いよいよ、個人で使う農業用ドローンが登場する。最後は、ヤマハ農薬散布用ドローン YMR-08 の利用イメージを記しておこう。

「1ヘクタール1枚の圃場を散布するために必要な農薬8リットルを搭載。離陸して散布スタート位置までの移動に30秒。散布幅4メートルを維持し、時速15キロで飛行。自動オートクルーズモードと自動ターンアシストモードを使ったとき、1ヘクタールの圃場で散布時間は10分。圃場の終端でターンに必要な時間は3分。散布終了後、着陸までに30秒。ここまででおよそ14分。フライトに必要な時間は余力をもたせ15分。この仕事をスムーズかつ安全に行うこと。それがYMR-08の使命だ」
ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会ヤマハの農業用ドローン『YMR-08』発表会

《レスポンス編集部》

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