【MX-5カップ世界大会】優勝したレース1は「勝とうと思っていなかった」!? アメリカで掴んだ手応えと膨らむ夢…堤選手&吉田選手 インタビュー

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2018 グローバル マツダ MX-5カップ チャレンジ(2018 Global Mazda MX-5 Cup Challenge)
2018 グローバル マツダ MX-5カップ チャレンジ(2018 Global Mazda MX-5 Cup Challenge)全 28 枚

11月10日から11日にかけて、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイでおこなわれた「2018 グローバル マツダ MX-5カップ チャレンジ(2018 Global Mazda MX-5 Cup Challenge)」。このレースはいわば、マツダ『MX-5』(日本名:『ロードスター』)のカップカーを操るドライバーの世界一の座を戦う争いである。

そのレースに、日本のMX-5ドライバーの代表として戦いを挑んだのが同じ車両による日本国内のシリーズ戦「グローバルMX-5カップジャパン(GLOBAL MX-5 CUP JAPAN)」)」の2018シーズンのチャンピオンに輝いた堤優威選手(株式会社東名所属、国内戦はT by Two CABANA Racingより参戦)と2位につけた吉田綜一郎選手(HM RACERS)だ。

堤優威選手(右)と吉田綜一郎選手(左)堤優威選手(右)と吉田綜一郎選手(左)

レースは10日に行われた「レース1」と11日の「レース2」の2回(決勝はそれぞれ45分間)が行われ、その結果で総合チャンピオンが確定する。堤選手はレース1で優勝したものの、レース2では序盤でトップ走行中に姿勢を乱した他車から接触を受けてマシンのダメージによりペースが上がらず上位でゴールする道を絶たれてしまった(15位で完走)。一方で吉田選手は予選中に接触され、その後の車両セッティングがうまく決まらず苦戦。レース1を11位、レース2を8位でチェッカーを受けている。

そんなレースを終えて日本へ帰国した2人にインタビューした。

堤「レーサーの本能で抜いてしまった」

----:堤選手、まずはレース1での優勝、おめでとうございます。

堤選手(以下敬称略):ありがとうございます。でも、自分的にはとても悔しくて残念な結果ですね。勝てそうだったレースを落としてしまったので。

----:たしかにレース2は「まさか」の流れでした。トップを走っていた時でしたし。アメリカのレースを走った印象はいかがでしたか?

堤:僕ら2人とも、初めてのサーキットで初めて乗ったマシンでした。路面状況もアメリカ独特で、コンクリートとアスファルトが混じった路面。セッティングも日本と違うし、手ごわいレースでしたね。

----:1位でフィニッシュしたレース1も、ずっと独走ではなく上位につけていて、ファイナルラップの最終コーナーで前に出てトップでチェッカー、という流れでした。

堤:実は勝とうと思っていなかったんですよ。

----:そうなのですか!?

堤:もちろん勝つつもりがなかった、とまでは言いません。でもレース1で勝ってしまうと、レース2では狙われる側になってしまうなという心配もあったので…レース1では2位でフィニッシュし、レース2ではトップでゴールして総合チャンピオンになるという筋書きを描いていたんです。ですが、気がついたらレース1のゴールの直前に前へ出られるチャンスがあったので出て、そのままトップでゴールしてしまいました。チャンスがあれば抜いてしまうレーサーの本能でしょうか(笑)。

----:一方レース2は、トップで走っていたところを後続の選手に接触されてしまった。

堤:残念でしたね。レースなので接触は仕方がない部分もあります。あそこで仕掛けた自分にも責任がないわけじゃないし(編集註:抜かれた車両が挙動を乱して接触してきた)、仕掛けるのをもう少し待てば結果も違ったかもしれない。残念ですが、振り返ってみると今後のレース人生にはしっかり活かせるような経験だったと思います。

堤優威選手はレース1で優勝堤優威選手はレース1で優勝

----:吉田選手は、予選中に接触されて流れが変わってしまいましたね。

吉田選手(以下敬称略):コンクリートとアスファルトが混ざった路面のコンディションなどに戸惑いましたが、走ってみて予選ではトップ5くらいに入れる手ごたえを感じました。しかし、予選の1ラップ目に接触されて、そこから歯車が狂ったようにセッティングが決まらず…苦労しましたね。アライメントもしっかりとったのですが、思ったように曲がらなくなってしまいました。

----:悔しい展開でしたね。

吉田:アメリカに行く前はどのくらいの順位で走れるのだろう? という不安がありましたが、走ってみるとクルマのトラブルさえなければ上位選手の中に混じれるということがわかりました。自信がついたし、いい経験になりました。レース2ではニッコー・リーガー選手というアメリカシリーズのチャンピオン選手と同じペースで走れたんです。序盤にトップ集団から遅れてしまったところ、ニッコー・リーガー選手が後ろから追い上げてきた。そこでまずは譲って先にいかせ、その後ろについてペースアップしていきました。スリップストリームについて、相手のバンパーを押しながら走っていたら先頭集団に追いつけましたね。まあ彼は予選で僕に突っ込んだ選手なのですが…(笑)。

----:チーム代表からの無線も気合が入っていたと聞きました。

吉田:今回はレース中に日本で所属するHM RACERSのチーム代表(編集註:株式会社広島マツダ 代表取締役会長兼CEO 松田哲也さん)『お前今年下に抜かれたぞ! それでいいのか?』なんて言って。それがとても強気で、厳しくて励みになりましたね。

----:日本に帰ってきて気持ちは変化しましたか?

吉田:悔しさがよりこみあげてきて、また来年も行きたいという想いが強くなりましたね。

堤:僕は逆に、時間がたって冷静になれましたね。ヒットされた瞬間や直後のほうが怒っていました。でも、怒っても結果は変わらないし、これもレースだ。それよりも来年以降のことを考えよう、と気持ちの切り替えができました。

----:来年も行きたいですね。

堤:来年はアメリカシリーズを戦ってチャンピオンになり、アメリカ代表として日本勢を迎え入れたいです(笑)。

吉田:僕もアメリカでシリーズを戦ってみたいと思っています。

2018 グローバル マツダ MX-5カップ チャレンジ(2018 Global Mazda MX-5 Cup Challenge)2018 グローバル マツダ MX-5カップ チャレンジ(2018 Global Mazda MX-5 Cup Challenge)

日本とは違う、そのレーススタイルとは?

----:アメリカのレースの雰囲気はどう感じましたか?

堤:チームのファミリー感が強いというか、一体感がすごい。チームみんなで頑張ろうという決意がものすごく伝わってきます。そしてレースではチーム内での助け合いに驚きましたね。たとえば予選。チームメイト同士がスリップストリームを使いあって、タイムを出すんですよ。そういう作戦は見事でした。スリップストリームの使い方で、ラップタイムが1秒以上違うので。

吉田:台数が多いので、みんなバトルに慣れていますね。スリップストリームの使い方とか、ギリギリのバトルとか。ずっとサイドバイサイドで走ったりと、日本とはかなりレースのスタイルが違いました。

堤:僕は一昨年、ラグナセカのレースに出たんです。そこでアメリカのレースを経験したので、状況は大体わかっていました。レースの仕方も組み立て方も、日本とは違いますがそれを理解しないと勝てないと思います。たとえばバトルは、日本だったら1台に抜かれても速度を合わせて次のコーナーで抜き返す…という動きをしますが、アメリカでは台数が多くて接近しているので、1台に抜かれたら後続車にもどんどん抜かれてしまうんです。だからみんな粘って粘って、サイドバイサイドになりますね。

----:今回のレースを通してドライバーとして成長できた部分もあると思います。

堤:普段戦わない選手と一緒に走って経験値が上がりましたし、アメリカでレースをしたい、負けたくない、という気持ちが強くなりましたね。アメリカでレースをしている日本人は少ないので、日本人だって速いんだぞという部分を見せたいと思うようになりました。やはりアメリカのシリーズを戦いたいですね。僕が所属しているチームの代表も『アメリカで戦ってこい』と言ってくれているので、もしかしたら実現するかもしれません。もう少し年をとると安定を求めてしまうので、海外へのチャレンジは若いうちしかできないと思っています。だから挑戦するなら今。ただ、英語力がないので勉強しないといけませんが(笑)。

2018 グローバル マツダ MX-5カップ チャレンジ(2018 Global Mazda MX-5 Cup Challenge)2018 グローバル マツダ MX-5カップ チャレンジ(2018 Global Mazda MX-5 Cup Challenge)

バトル楽しみつつ経験値を上げられるレース

----:日本国内のGLOBAL MX-5 CUPの話も教えてください。今シーズンを振り返ってみていかがでした?

堤:参戦初年度だったんですが、チームも前年のチャンピオンチームであるT by Two CABANA Racingで、車両のセッティングもきっちりできていたので、正直なところあまり苦労はしなかったシーズンでしたね。開幕から3連勝できてシリーズチャンピオンも決まったので、精神的にも楽でした。

吉田:僕は参戦2年目で、チームもクルマも変わってまた新たなチャレンジでした。広島マツダのディーラーチームなので普通のレーシングチームとはまた違ったやりかたで、セッティングなども苦労しましたね。ただ、それがとても勉強になりました。

----: GLOBAL MX-5 CUPとはどんなレースだと感じていますか?

吉田:バトルが凄いですね。いま、日本のレースでもっともバトルが激しくて順位が入れ替わるレースかもしれません。1周する間に、こんなに1位が入れ替わるレースはないというくらい。

----:その分、走っている方は楽しいし見ている方は興奮できますね。

堤:とても楽しいレースです。順位変動も多いですし。僕が出ているほかのレースでは、そんなに前のクルマを抜けないんですよ。でもMX-5はどんどんバトルできる。自分がレースを作っている感が楽しいし、見ているほうも盛り上がるのではないでしょうか。あとはますます台数が増えてくれればうれしいです。

----:レギュレーションがしっかりしていて、イコールコンディションが保たれているのも特徴ですよね。

堤:ここまで徹底されたイコールコンディションで、スリップがとても効くからバトルが激しい。順位も頻繁に切り替わり、走っているほうも見ているほうも楽しいですよね。MX-5は運転の基本をしっかりさせないと、速く走らせることができません。自分の腕の習熟度が上がる、勉強できるクルマですね。

吉田:クルマはレーシングカーとして作り込まれているし、タイヤがスリックですからかなりレーシングカーの動きです。それが、とても勉強になる。

----:スリップストリームの楽しさは?

堤:すごく効くんですよ。びっくりするくらい。だからずっと先頭を走っていれば勝てるのではなく、展開をしっかりと組み立てなければ勝てないんです。スリップストリームが勝敗を左右する。

吉田:だからバトルも白熱する。単独だと少しタイムが落ちる人も、レース中は前を走るクルマに引っ張ってもらえるんです。

堤:バトルを楽しめるし、経験値もあがるので若手ドライバーにどんどん参戦して欲しいレースです。

11月24日から25日にかけて岡山国際サーキットでおこなわれるマツダ車の国内最大規模ファンイベント「マツダファンフェスタ2018inOKAYAMA」では、アメリカのレースを戦ってさらに成長した堤選手と吉田選手も会場を訪れる予定。トークショーとサイン会のほか、デモランも行う予定だというから楽しみだ。

マツダファンフェスタ2018 公式サイトはこちら

《工藤貴宏》

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