【MaaS】マイクロソフトがなぜMaaSに取り組むのか…運輸・サービス営業統括本部 清水宏之氏[インタビュー]

マイクロソフトのMaaSは働き方改革から
マイクロソフトのMaaSは働き方改革から全 3 枚

MaaS市場にかかわる事業者、プレーヤーはかなり広範囲にわたる。10月にはソフトバンクがトヨタとジョイントベンチャー(MONETテクノロジーズ)を立ち上げたことが話題になった。マイクロソフトもMaaS市場についてコミットしている企業のひとつだ。

しかし、マイクロソフトのMaaSに対する戦略は、ソフトバンクのスキームとは異なっている。マイクロソフトから見たMaaSとはどんな市場なのだろうか。

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―まず、基本的な質問となりますが、マイクロソフトにはMaaS関連の事業部があるのでしょうか。

清水氏(以下同):はい。マイクロソフトには、大手法人営業部門に運輸・サービス営業統括本部という部署があります。ここでは、運輸、物流、私鉄など鉄道事業者、宅配事業者、さらに建築や不動産事業者などのお客様を担当しており、弊社の製品・サービス・各種ソリューションを提案・提供しています。今年7月に、インダストリーソリューションを専任する部署としてMaaS兼Smart Buildingソリューション本部を立ち上げました。私はこの部署の率いる立場として、MaaSやSmart Buildingに関するソリューション提案を行っています。経歴としては、旅客鉄道会社の情報システム子会社に長年勤めていましたが、2年半ほど前にマイクロソフトに入社しました。

―MaaSとスマートビルディングが一緒になっているんですね。

もともと運輸業と建設・不動産業界を担当しており、社会インフラ全般をカバーしていました。このなかでMaaSとスマートビルディングのどちらにも注力しようということです。昨今はこの業界でも「移動」を軸にしたビジネスやソリューションに注目が集まっています。鉄道会社のMaaSも盛んですし、不動産や建設業界でも、MaaSを利用した交通をセットにしたマンションやオフィスビルを考えているところもあります。

―なぜマイクロソフトがMaaSなのでしょうか。

ワークスタイルの効率化とライフスタイルの充実を両立させるための取り組みの中で、仕事における移動時間の短縮や効率化が避けられない問題と考えています。生産性の高いワークスタイルを実現する上で、仕事に伴う移動の予約や手配、交通費精算などビジネスでの問題の解決手段としてMaaSに注目しました。

実は、マイクロソフトには「在宅勤務」という制度はありません。自宅、オフィス、出先など場所を問わない「いつでも、どこでも、だれとでも繋がって働ける」フレキシブルワークスタイルが基本になっているので、「在宅」に制限する必要がないのです。勤務時間もコアタイムがありません。

きっかけは2011年3月の東日本大震災です。マイクロソフトでは以前から、在宅勤務やフリーアドレスのデスクなど、さまざまなワークスタイルに取り組んでいました。あまり上手くいきませんでした。制度だけそろえても、社員のマインドが変わらないと上手くいかないのです。そして、2011年2月に新宿や初台から現在の品川オフィスに集約した直後に東日本大震災が起きました。スカイプやメール、クラウドなどテレワークに必要な環境はあったので、地震後1週間、出社できない状況のなかで、テレワークを用いて業務継続しましたが、これが全く問題なくできたことで、社員のマインドが変化するきっかけとなりました。

現在、オフィスには従業員の60%しか固定デスクがありません。あとは共用のソファやミーティングスペースです。朝10時にアポイントがあっても、一度、オフィスに出社する必要はなく自宅で作業してからアポイント先に直行できます。出先の用事が3時くらいに終わったとしても、そのまま外で作業したり、帰宅して家で作業することもできます。

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―ワークスタイル、ライフスタイルの改善の中で移動をどう最適化するか。そのソリューションがMaaSにつながっているということですね。その場合、マイクロソフトが見ているMaaSビジネス、MaaS市場はどういう位置づけになるのでしょうか。

MaaSにもいろいろあると思います。過疎地域の課題解決としてのMaaS。観光地の移動サービス。住宅地のMaaS。などです。マイクロソフトでは、まず取り組む領域として、都市通勤と業務での移動に着目したMaaSを考えています。

現在、交通機関、シェアリングカー、配車システム、予約・決済システムなどMaaSのプレーヤーは様々です。しかし、各サービスが閉じていたり、プレーヤーが分断されていて、連携がまだ不十分です。交通の利便性以外の付加価値が生まれにくい状態ですが、これがないとなかなかビジネスとしての展開が難しい現実もあります。

マイクロソフトとしては、これらプレーヤーをつなげるプラットフォームを提供できないかと考えています。

―マイクロソフトがいうMaaSでは、どんなサービスが考えられるのでしょうか。

たとえば、Office 365のスケジュールを入れると、自動的に移動経路を提案し、交通費を計算してくれる機能。必要ならば切符やレンタカー、シェアカーの予約もしてくれる。経費精算も自動で行う機能。こんなアプリやサービスが考えられます。

―それはとても便利そうですね。移動もそうですが切符手配や旅費精算も、本来の業務とは関係ない作業ですね。マイクロソフトならすぐに製品化できそうですが、MaaSプラットフォームやサービス事業にも参入する予定なのでしょうか。

いえ。マイクロソフトは、サービスプラットフォームのインフラであるクラウド環境や基本的なコンポーネントは提供しますが、そこでどんなサービスやシステムを作るかは、パートナー企業や利用者の自由です。配車や運行管理、サービス連携をするMaaSオペレーターになることはありません。

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《中尾真二》

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