タイムトラベラーがやってきた…アルヴィス日本導入

アルヴィス 4.3リットル ヴァンデンプラスツアラー(1937年)
アルヴィス 4.3リットル ヴァンデンプラスツアラー(1937年)全 16 枚

1919年創業のイギリスの自動車メーカー、“アルヴィス”。1967年に自動車製造を停止していたが、2010年に復活し、この度明治産業の手で日本にも導入されることになった。

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1953年当時と同じインポーターの手で

明治産業は1933年(昭和8年)創業の自動車部品製造販売会社である。その一方、1953年に関連会社である明治モータースの手で、アルヴィスの正規代理店として車両販売を行っていた。そして今回、再びアルヴィスの総代理権契約を結び再導入することになったのだ。

明治産業取締役社長の竹内眞哉氏はそのきっかけについて、「85周年を迎えるにあたり、会社の歴史を振り返った。過去アルヴィスを扱っていたことは知っていたが、調べなおしてみるとコンティニュエーションシリーズとして以前生産していたモデルを再び作り始めるということや、現地で実車を見て昔のクルマは美しいということを身にしみて感じ、これを日本にも広めていきたいと思った」とコメント。

明治産業としては、「コンティニュエーションシリーズの販売、レストアしたアルヴィスの販売、部品の販売を一手に行う。日本におけるアルヴィスの部品供給に関しても、日本にはアルヴィスが15台ほどあるようなので、その部品供給も要望があれば当社から出そうと考えており、内容よっては一部の整備も受けようと考えている」と竹内氏。アルヴィス 4.3リットル ヴァンデンプラスツアラー(1937年)アルヴィス 4.3リットル ヴァンデンプラスツアラー(1937年)

またアルヴィスのトレードマークとなっている赤の三角形の商標は、「日本においては明治産業が独占で使えるようになっており、その内容は自動車やその部品だけではなく、洋服やバッグ、香水まで範疇となっているので、アルヴィスのブランドイメージ向上を踏まえ、将来的にはそういった販売も考えている」とのことだ。

レストア車の販売、パーツ供給、そしてコンティニュエーションシリーズ

レストア車の輸入販売については、レッドトライアングル(アルヴィス社傘下の部品製造供給、修復会社)でメンテナンス、レストアされたクルマの輸入販売とされ、明治産業アルヴィス担当の桶谷渡氏によると、「使用されている部品が全て純正部品であることから、まさにファクトリーレスレーションカーという位置づけで、非常に価値が高く、また高い信頼性を得られるクルマと期待しているからだ」と説明。今後、「レッドトライアングルウェブとリアルタイムにリンクさせて、より詳しい車両情報の供給を行えるように我々もWebを構築していく予定だ」とする。

保守点検サービス並びに部品の販売については、「構想として、我々のSeiken e-Garege(同社の最新設備が投入されたメンテナンスガレージ)が現地のレッドトライアングルのノウハウを習得し、レストアのトレーニングセンターとして確立する予定だ。そしてその技術で地域のガレージへの展開も測りたい。これについては準備が整い次第改めて報告する」とのこと。

そして、コンティニュエーションシリーズの販売については、戦前の4.3リットルの3タイプと、戦後の3リットルの3タイプ、合計6タイプが生産可能とされ、「これらの輸入販売の構想としては、まずベーシックタイプのこの6種類の中からひとつを選んでもらい、内装8種類などのオプションを相談しながらセットアップし、オーナーオリジナルのクルマを完成させていく。また完成までの過程をイギリスのコベントリーのアルヴィスの工場に実際に行ってもらって、その工程を楽しんでもらうツアーも考えている」と述べた。アルヴィス TE21サルーンbyパークウォードアルヴィス TE21サルーンbyパークウォード

現在明治産業では、コンティニュエーションシリーズを2台発注しており、1台目がヴァンデンプラスツアラーで完成予定は2019年6月、2台目は3リットルのグラバースーパークーペは2020年6月完成予定だ。

また、12月に品川の高浜ビル一階にショールームを開設する予定で、2020年には明治産業の霞が関のビルが完成し、ここにもショールームを開設する予定だという。

戦前の4.3リットルは77台が目標

アルヴィスは常に時代の先陣を切っていたメーカーで、1925年には世界初の前輪駆動グランプリカーを開発し、1928年に、ルマン24時間耐久レースで1位と2位を独占。1937年に生産が開始されたアルヴィス4.3リットルは当時最速の自然吸気エンジン搭載車で、いまでいうスーパーカーといっても過言ではない性能を有していた。このクルマは150台の生産を予定していたが、大戦中の1940年、工場への爆撃により73台しか生産されずに打ち切られることになった。

今回のコンティニュエーションシリーズでは、残りの77台を完成させることが大きな目的とされている。自社オリジナルの設計図から生産されるアルヴィス4.3リットルのエンジンは、インライン6気筒で、最新の技術を最大限利用しながら1936年のデザインをその時代の特性や質とともに忠実に再現しているという。

このターゲットは、「新世代のカーコレクター。つまり1930年代のスーパーカーの美しさに魅了されている若い世代。そしてクラシックカーの持つ特異性をものともせずに運転できる若い世代だ」と関係者は語る。「これはレプリカ、複製品ではなくオリジナル仕様で作られたタイムトラベラーなのだ」という。

コーチビルドカー、まさにテイラーを選ぶがごとく

アルヴィスカーカンパニー英国本社のアラン・ストート会長は、このコンティニュエーションシリーズについて説明を求められると、まずコーチワークについて語り始めた。「いま、スーパーカーのショールームに行ってそのクルマを見ると、ボディはどのクルマも同じで変えることはできないだろう。いまのクルマは完全なプラットフォームとして提供されており、それによって全ての機能を発揮させているからだ」という。

一方、アルヴィスはそうではない。「20世紀の初頭においてクルマを買うということはいま以上のお金が必要だった。まずは、エンジン、ドライブトレイン、シャシーをチョイス。次に好みのボディを選ぶのだ。これは例えばテイラーを選ぶようなもの。コーチビルトカーというのは、お客様の好みに応じてボディを作っていくということだ」と説明。

そして、「もしアルヴィスを買った場合には、そのボディをカタログに記載されている中で自分の好きなボディを選ぶことが可能なのだ。つまり、戦前の4.3リットルか戦後の3リットルのシャシーを選んで、後は複数のボディの中から選ぶということ。その結果、全てのクルマはそのお客様に合った形で作り上げていき、お客様にとっては単にクルマが手に入るということではなく、その製造過程から、最終的に自分のクルマに仕上がるまでを見ることができ、世界で唯一の自分のクルマの完成まで立ち会うことができるのだ」と話す。

「コンティニュエーションシリーズは2010年より開発を開始し、エミッションコントロールなどを含めエンジンの開発に2年かかり、最初のクルマは2013年に完成した。受注に基づいて生産するというシステムを取っており、これまでに6台製造した。今後日本では最低1年に1台を考えている」と話す。

戦後の3リットルのシャシーも通し番号で

さて、戦前の4.3リットルのコンティニュエーションシリーズについては理解できたが、戦後の3リットルモデルの位置づけはどういうものか。アラン氏は、「スイスのコーチビルダー、グラバーの手で製造されたボディと同じものを纏うクーペとカブリオレ、そしてイギリスのパーク・ウォードボディのドロップヘッドクーペをラインナップしている。グラバースーパークーペは現存1台のみで、現在2台目を製造中だ。いずれのモデルも25台限定としている」と述べる。

また、コンティニュエーションシリーズとして4.3リットルを発表したところ、「お客様からはなぜ3リットルの方は続けないのかということもいわれた」とし、「いまはまさに人とは違うものを求めている人達が多いのではないかと考え、そういった人たちが求めるものを作ろうとしている。クルマは商標がないと生産をすることはできないが、我々はアルヴィスという商標を所有しており、機会が与えられればクルマを生産すべきだと考えてもいた」と話す。

因みにシャシーナンバーも4.3リットルと同様、3リットルも生産が終了した時点からの続き番号で製造されるという。左からアルヴィスカーカンパニー英国本社のアラン・ストート会長、駐日英国大使館公使参事官貿易・対英投資ダイレクターのクリス・ヘファー氏、明治産業取締役社長の竹内眞哉氏左からアルヴィスカーカンパニー英国本社のアラン・ストート会長、駐日英国大使館公使参事官貿易・対英投資ダイレクターのクリス・ヘファー氏、明治産業取締役社長の竹内眞哉氏

イギリスの車検適合、年式も当時のもので

アラン氏によると、「イギリスではVOSA(車両運転サービス庁)という組織があり、そこが全て車両の安全について監督している。そこで定められた要件に我々のクルマは合致していることから、車検は取得できる」とし、これは、「起業家精神を発揮して色々なクルマを作ってほしいということから、メーカーとしての総トータル台数が300台未満であればレギュレーションが緩和されるというシステムなのだ」と説明。

さらに、「我々は1960年代までにシャシーをはじめ様々な部品を作っており、それらが倉庫の中にまだたくさん眠っている。例えば、明治産業向けに作っているグラバーのエンジンは1966年製のもので、そうすると、このクルマは1966年式となるのだ」。つまり、当時のパーツを使うと当時の年式になるということなのだ。

アラン氏は、「これはオリジナルのメーカーだからこそできる技であって、商標があってこそできるもの。もちろん厳密なルールがある。トータルで8ポイントを構成しなければならず、シャシーだけで5ポイント、エンジンが3ポイント、トランスミッションが2ポイント、その他のアクセサリーが1ポイントと決まっている。我々は少なくともシャシーとエンジンだけで8ポイントを満たすことになるので、それで年式が決まるのだ」と説明した。

では、パーツはどのくらいストックがあるのだろうか。アラン氏は、「例えば3リットルの場合は、シャシーは40台分。シリンダーやクランクについては100を超えている。アルヴィスは優れたサービス精神を持っており、新しいモデルが作られた時にはアフターマーケット用にたくさんのパーツを作っており、1度も使われていないものが数多く残っている」という。

そうすると、戦前の前輪駆動車のアルヴィスをオーダーすることが可能かと聞くと、「もちろんだ。完全にオリジナルのもので作ることができる。パーツを全世界のアルヴィスオーナーに売っているので、前輪駆動車であっても完全に作ることができる」とコメントした。

因みにアルヴィスはこれまで2万2000台ほどが製造され、4805台が現存しているとのことだ。

コンティニュエーションシリーズの価格はヴァンデンプラスツアラーで41万ポンド、約5950万円からとなっている。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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